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君と僕との逆転話-2-

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「元あった場所に返してきなさい」
開口一番、彦四郎はびしりと指を裏山へ向けてそう告げた。
作法委員会力作の警戒網、体育委員が携帯する絡繰りコンビが作り出した白煙筒。生物委員が所有する生物たちに、何より六年は組の三治郎と喜三太が口をそろえて、変だ、と言い張った。
庄左エ門と彦四郎はすぐさま全学年の緊急帰還命をだし、同時に六年は組全員が調査に向かった。
何故六年は組だったのか、というと異常を訴えたのが六はの二人だったのと、同じく六はの金吾が委員長を務める体育委員が外に出たままだったからだ。
六はの結束は強い。すぐさま飛び出したは組の面々を見送り、残りの生徒の無事を確認した後、彦四郎は五年に各方面の警戒を言い渡し、四年に下級生の面倒を任せて一室で報告を待った。




間もなくしんべヱと体育委員の一、三、四年が戻り、彦四郎は胸をなでおろす。
しかし、彼らから受けた報告に眉を寄せ、さらにその一刻後、先ぶれとして戻った乱太郎と四郎兵衛と共に門の前に立った彦四郎は、ただいま、と何事もなく挨拶した庄左エ門に対して冒頭の言葉を言い放った。
「やだなぁ。犬猫じゃあるまいし」
「犬猫のほうが何倍もマシだ」
彦四郎の後ろではい組が同じように眉間に皺を刻んでいるし、ろ組は苦笑している。
戻ってきた五年はもっと言ってやってください、と頭を抱えていた。
「何で勝手に連れてきやがった」
「もうすぐ夜になるじゃないか。彼らもなんだか驚いていたようだったし」
「本気でそう思っているなら、俺はお前の阿呆さ加減に言葉が出なくなるぞ」
やはり六はを外に出したのが問題だったのか、と五年と同じく頭を抱えたい気分になった彦四郎は、しかし、気丈にも庄左エ門と渡り合えるのは自分だけだ、と言い聞かせ己を保った。
「お前たちだけならまだしも、学園を騒動に巻き込むんじゃない」
「心外だな、今回の騒動を見つけたのは体育で僕たちじゃないよ」
「騒動を連れ帰ったのはお前だろう」
「じゃあ、君は小さい子が獣の餌になっても良いって言うの? 自分によく似た子が獣の腹の中に納まっても良いって言うの?」
「そういうことを言ってるんじゃない。敵か味方か分からん奴を、学園に招き入れるのか、と聞いているんだ」
「招き入れるというより、保護、かな。とりあえず学園長先生にご報告しなければならないが」
「それを俺が認めるとでも?」
「ええ、認めてくれないの? 僕は自分そっくりの子が獣の餌になるところなんて見たくないし」
「認めると思っているお前の根拠が聞きたいな」
「認めてもらわないと困るなぁ。君が認めてくれないと、僕といえども彼らを学園に入れることは出来ないからね」
にこにこにこにこと笑顔で話す庄左エ門に、いらいらいらいらと額に青筋を浮かべている彦四郎。
二人の舌戦に口を挟む人間など誰もいない。
「別にいいんじゃない~」
否、いた。
のほほんと呑気な声が聞こえ、その場にいる全員の視線が外に向いた。
門の外、わちゃわちゃと集まる浅黄の少年たちの中、一人の深緑が混ざっている。
顔色の悪い一人の青年が、自分によく似た少年の頬を引っ張っていた。
「確かに、小さい子が山で夜を明かすなんて、無謀だよね。今日は獣たちも調子が変だって、孫も言ってたし」
顔色の悪さはそのままに、門の内と外で狐と狸が言い合いをしている二人に笑った。
「っていうかさ、自分が二人いるなんて、すっごいスリル~」
「……伏、それが本音か」
「まぁ、君らしいね」
「平太たちも特に異論はないでしょう」
伏木蔵の問いかけに、門の陰から外の様子を伺っていたろ組が顔を見合わせた。
「えっ、まぁ」
「スリルかどうかは置いておいて」
「小さい子を外に置いておくのはねぇ」
「ってことで、ろ組は今回は組に賛成」
わーい、と自分によく似た子を抱きしめた伏木蔵の言葉に彦四郎は苦い顔をする。
「ってことは、は組とろ組が彼らを保護するのに賛成ってことで」
「……い組も認めよう。ただし、何かあったらすぐさま追い出す」
はぁ、とため息とともに吐き出された言葉に、庄左エ門は言葉を得たり、と大きく伸びをした。
「何がスリルだ。毎回毎回お前はは組に味方して」
「酷いなぁ。僕だってい組に対立するし、は組とも対立するよ。面白いことが好きなのは事実だけどねぇ」
よいしょ、と立ち上がった伏木蔵は、抱きしめた少年をそのまま抱き上げ、不安そうにしている少年の同級生たちに笑って見せた。
「おなかがすいたでしょう。先に戻った人がおばちゃんにご飯を頼んでくれているからね。怪我をしているなら、治療してあげよう。とりあえず、道場でいいかなぁ」
と問いかけた伏木蔵に庄左エ門と彦四郎が顔を見合わせる。
「ダメだ」
妥当か、と瞬時に考えた二人が頷く前に、否定の声がかかった。
言葉を放ったのはは組の団体の一人。金吾だった。
「道場は神聖な場所だ。認めん」
毎朝、毎夜かかさず稽古している道場の第二の主は、不機嫌そうに、しかしはっきりと拒否を示す。
ずっと不機嫌そうな雰囲気を醸し出していたが、金吾自身は彼らを学園内に入れるのは嫌なのだろう。
自分の委員たちが危ない目にあったからか、と彦四郎はそう判断し、庄左エ門に目を向けた。
幼い子たちともかく、青年たちに勝手に歩き回られては困る。
監視の意味も、そして幼い子たちと離して不安がらせるよりも一つの部屋に纏めている方がこちらとしても都合がいい。
「金、今から学園長先生のところに言っていろいろと取り決めてくるから、君は先生の所に行って、事のあらましを説明しておいで。それで先生もダメだって仰ったら、諦める。いいね」
庄左エ門の言葉にさらに不機嫌になった金吾だが、しばし沈黙した後小さくわかった、と了承の旨を伝えた。
喜三太と共に戸部先生の部屋へと向かう。
「用具の二人は先生の所へ行って、予備の布団を借りてきて。あと、足りない下級生の分は六年の布団を貸してあげて」
「五年は引き続き辺りの警戒に戻って、武闘派で彼らを道場へ、にの、食堂に全員集めてるから四年に事情説明、下級生を歩き回らせないように指示してきてくれ」
次々と指示を飛ばす庄左エ門と彦四郎に六年と五年は頷いて行動を開始する。
あらかた指示が終わったのか、ふいに二人が客人に向き直った。
「改めて、忍術学園六年は組が長、黒木庄左エ門」
「同じく忍術学園六年い組が長、今福彦四郎だ」
にこにこと笑っていた庄左エ門、未だに文句を言いたそうな彦四郎。
しかし、二人の感情が伴っていない瞳は同じことを語る。
学園に手を出すものは容赦しない、と。
作品名:君と僕との逆転話-2- 作家名:まどか