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君と僕との逆転話-2-

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「君たちの代表は誰かな」
その言葉に、やはり、というか動いたのは髪も顔も綺麗な青年。
「六年い組、立花仙蔵」
事の成り行きを見ていた立花が、口だけの笑顔で告げると、庄左エ門の視線が立花の横に移動した。
「……同じく、潮江文次郎だ」
ちぃ、と舌打ちしそうな表情で隈が濃い青年が低い声で告げた。
立花を表に立たせた方が、裏でいろいろ動けると考えていたのだろう。
「では、君たちは僕たちについてきてもらうよ」
先に立って歩き出した庄左エ門に、立花と潮江は足を踏み出す。
後は頼む、という趣旨の矢羽音が聞こえ、矢羽音の使い方も似ているのか、と彦四郎は鈍く痛み始めたこめかみを抑えて、後ろから追った。
『矢羽音も似ているなんて、やっかいだねぇ』
『引き込んだのはお前だ』
い組もは組も知らない学級委員会に伝わる複雑な矢羽音で言葉を交わす。間に歩く二人は気づかないところを見ると、この矢羽音は解読されていないようだ。
二人は会話を続けた。
『しょうがないでしょう。彼らが本当に僕たちだったとしたら、あそこに置いては置けないし』
『今が大変な時だって分かってるのか』
『分かってるよ。僕たちなんて実習が入ってるんだから、君よりよく分かってる』
『実習、どうするんだ。呑気に時間をかけるつもりか?』
『……僕が出るしかないかなぁ、とは思ってる』
その言葉に彦四郎が小さく動揺した。
『何動揺してるの彦四郎』
『いや、お前がそういうのってよっぽどだなって思って』
『やっかいなのは分かってるけどね。こうするのが一番よかったんだ。乱太郎も伏木蔵も喜三太も三治郎も薬や幻覚の類はないって言ってるし、変装の可能性もないっていうのは、彦四郎が一番わかってるだろう』
『一人いたがな』
『それが彼で、そこまで化ける徹底ぶりの理由は? 仮想するにも無理があるね』
「仮装? 誰かしているんですか? お祭りですか?」
「……勘」
先ほどのやりとりとは色が変わった会話を続ける二人に割って入った子どもの声。
袖をひっぱる勘右衛門に、庄左エ門は目を瞬かせ、彦四郎は頬を引き攣らせた。
「狐と一緒に居ろ、と言ったはずだが」
「一緒にいますよ、ほら」
低い声の彦四郎に構うことなく、勘右衛門は指を長屋の方に指し示す。
指さしたほうを見てみると、木の陰からじーっと見ている一人の少年。
二人に見つかったからか、間に挟まれた潮江と立花を不審な目で見つつ、とてとてと近寄り偉そうに胸をはった。
「学級委員長たるもの、学園の異変には敏感でないと、と二人で出てきました」
「学級委員長たるもの、他の生徒の見本として、言われたことを守るのが責務だとは思わないのか」
「学級委員長たるもの、常識にとらわれていては生徒たちをまとめることはできません」
「しょう、お前の影響かあああああ!!!!!!」
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う、と怒りが頂点に達した彦四郎は、二年生二人の襟首をひっつかみ、二人のこめかみを突き合わせて外側から拳をぐりぐりと押し当てた。
「いたっ、いたい痛い」
「痛いです、彦先輩いたいですううううう!」
ぎゃあぎゃあと叫ぶ三郎と勘右衛門を彦四郎に任せ、庄左エ門は行きましょう、と呆然と見ている潮江と立花に声をかけた。
「……止めなくていいのか?」
おそるおそる潮江が聞くと、庄左エ門はなんで、と首を傾げた。
「上級生になれば、臨機応変に、と言いますが下級生のうちは上の言うことを聞くものでしょう。特に今の状況で勝手をするのは許されない。まぁ僕たちが言うと説得力がないとよく言われますが、好奇心旺盛なのもいい加減にしないと、ね」
「そういうものか」
「そういうものです。ああ、彦四郎は本当に怒ったのもありますが、あの子たち、出てきた以外での約束もいくつか破ってますから、説教に入るんでいいんですよ。いい薬です。彦四郎は自分の理詰めの説教もあの子たちに影響与えてるって気づいていないですけどね」
「お前は」
立花の言葉にようやく庄左エ門の歩みが止まる。
「最初にここへ来るように勧めた割に、最初に名前を明かした割に、一番私たちのことを信用していないのだな」
「……僕はは組の長です。学園の双璧です。うっかり敵に回すより、取り込んだ方がいい、そう思っただけですよ」
それに、と庄左エ門はにっこりと。
「年下を教育するのは年長者の役目でしょう? ああ、あとは」

このあたりで僕たちを知らない人間はいないんです、と笑っていない目で嗤った。

作品名:君と僕との逆転話-2- 作家名:まどか