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学パロ時京・お花見

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週明けの月曜日、時雨は剣道部の朝稽古で早めに登校していた。
稽古が終わって身支度を整え、自分の教室に入る。
いつも通り、何のかわりもないはずの朝の風景。なのに、何かが違う。妙に自分に視線が集まってくる、ような気がする。

「…?」

くすくす、くすくす。
ねえ、時雨君、さあ…ああ、うん、あれでしょ…
気のせいかと思ったが、やはり自分の名が囁き交わされている気がする。それも、どうも笑いとともに。
たまりかねて昼休みに同級生を半ば脅すように問い詰め、見せられたスマフォの画面に一瞬動きが固まった。

露店が並ぶ中を笑いながら歩く、自分と京一郎。
おそらくはかなり近い距離から撮られたのであろうその写真は、鮮明に二人の姿を捉えていた。
その日着ていたTシャツの柄まで、はっきりと。

「昨日花見に行った女子がさ、偶然見つけて撮ったっつって。ラインで回ってきたから…」
「……」
「えーと、その。そういう服が趣味だったんだって、意外だなって、みんなが」
「うるせえ!!」

知り合いがそんな近くに居て、あまつさえ写真を撮られていたことに全く気が付かなかった自分に腹が立つ。それほど俺は浮かれていたのか?
昨日一日でどこまであの写真が拡散されたことかと思うと、時雨は絶望に頭を抱えた。

「…あれ、時雨。どうかした?」
「…京一郎…」

廊下にへたり込みそうになっていた時雨に向かって、昼食の包みを抱えた京一郎が歩いてくる。
にこにこと微笑むその顔には、なんの陰りもない。

「ちょうどよかった。天気がいいから、今日も屋上で食べよう?おむすび作ってきたよ」
「ああ、そっか、昼な…」
「あ、これ見て?ほら」

時雨の生気のなさにも気が付かず、いそいそと京一郎が差し出したスマフォの画面に再び動きが固まった。
そこにあったのは、まぎれもなく先ほどの写真。

「は!?お、おま、これ」
「うん。誰かが撮ってたみたいで、写真回ってきたんだ。全然気が付かなかったからびっくりした」
「…ああ、そうだな…びっくりだな…」
「ね。嬉しくて、思わず待ち受けに設定しちゃった」
「は!?」

だって二人で写ってる写真なんて、持ってなかったからさ。時雨にも送っておくね?
そう言って、京一郎は嬉しそうに笑った。



二人で並んで屋上へと向かいながら、時雨は心の中でそっと祈る。
ああ、高天原に坐します八百万の神々よ。
俺は待つ、待ちますが。こいつの笑顔のためなら何であろうと耐えられますが。
願わくばこの試練の褒美が得られる日に、一日も早く至らんことを――




作品名:学パロ時京・お花見 作家名:aya