夜もすがら涙しても朝明けには喜びを
黎明
空が白む頃、調査から戻り既に無人のはずの所内に人の気配がしたので奥を覗くと、娘の京香が眠っていた。
「帰ってろって言ったのに」
いくら閉め切った室内でも夜になればそれなりの寒さだ。そんな中で待っていた京香にふわりと着ていたコートを掛ける。
「寝顔、変わんねーな」
京香にコート掛けてやり、誠司はいつもの定位置のソファへ腰を下ろした。
タバコに火を点けてぼんやりとブラインドに閉ざされた窓を見つめる。
その隙間からは僅かな光が差していて朝になったことが窺い知れた。
「明けない夜はない……か」
全てが白日の元に晒されるまであともう少し。
作品名:夜もすがら涙しても朝明けには喜びを 作家名:tesla_quet