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今吉探偵と伊月助手の華麗なる冒険。前篇。

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紙面にまとめ終わったそれを読み込んで、膝に転がってきた伊月の頭を撫ぜてやって、使いすぎたのだろう、目元に濡らした手拭いを乗せてやる。何せ村中を隈なく全身の集中力で持って観てきたのだ。疲弊もするだろう。
「でも、あの人話せませんよ。あと、この村の人の一部年代は文盲です。」
「どこで仕入れた情報?」
「掲示板とかが無かったんです。表札が無い家とか、あっても随分傷んでました。お墓も新しいものは盛り土と石だけでした。残ってた卒塔婆で確認しましたが、復員世代ですね。子供たちは三日に一度、村の中央南寄りにーあ、地図確認して下さい。そこに住んでる先生の所に通うそうです。明日がお教室だって子供たちは言ってました。」
「ほんっまやりよるな!」
「じゃあ。」
ごほうび、なんてその唇で妖しく囁くものだから、これは参った、と今吉は笑ってしまった。二度口づけて、三度目で唇を舐める。薄く開かれる唇に誘い込まれて絡めて吸う。べろりと下唇を顎を、喉を、膚を舐め啜り、肌蹴た浴衣の袷をぐいと乱す。鎖骨のラインの落ち窪んだ場所をぢりと吸えば、真っ赤に残る。手当でもするように舐めてやれば、くふりと蠱惑的に笑う。
「ここまで?もっとする?」
「いや、今晩は・・・。」
止しときましょうよ、疲れました、と苦笑する伊月の言葉尻にどすんと床を叩く音と怒声のような悲鳴が混じる。
「な・・・に?」
「俊、構ん!」
「だって翔一さん!」
咄嗟に起き上がろうとした伊月を今吉は一喝し、部屋を出ようと襖に手を掛ける。
「この家、今は息子さんは帝都にいらして、村長さんと女中さんと俺と翔一さんしかいません!」
「・・・なんやて・・・?」
その事実に、今吉は瞠目し、また声を聴く。
「俺、黙ってました。」
「何を、俊。」
「女中さんには、明らかな虐待の痕がありました。」
初日に診察した時、やけに血圧と脈拍がおかしかった。喉の奥を診るのに顎を上げさせたら、首に痣が残っていた。翌朝の襷をかけた袖から赤黒い痣が覗いていた。
「せや言うて、これ終わるん待ていうんか・・・!」
少し落ち着いたらしいが下卑た声音が襖を伝ってくるのに今吉はぎちりと拳を握り固めた。他の家の奉公人への口出しは基本的に認められない。下手をすれば女中を助けた側が訴えられるなんてこともあり得るのだ。
「いえ、待つ必要は無いですね。行きましょう。」
す、っと隣を横切った伊月に今吉はうっかり脱力する。行くんかい!とツッコミたい。
声が徐々に小さくなる。
「俊、袷。」
今吉が言葉少なに囁いて、伊月は襟を正し、声がする部屋の襖を開け放した。
「こんばんは、好色村長さん。」
にっこりと毒しかない花は微笑み、その声に男は振り返る。女中は襟も裾も乱されて、男に押し倒される格好で泣いていた。
「ああ、誤解せんとって、したいならすればええ。けど、問題なんはそれが合意かどうかって事でな。」
「主人が奴隷をどう使うかなんて知りません。ですが残念ながら、今のこの国に身分制度はありません。お給金や賄、それは家それぞれです。彼女は『そういうこと』も込みで雇われているのですか?」
「ちゃうんやったら、この現場抑えたワシらは、婦女暴行未遂っちゅー罪状でお巡りにあんさん突き出さなあかんねんけど。」
「幸い知人がいますからね。」
「せやな、青峰やったら蒸気機関車で半日法則くらい吹っ飛ばせるし。無茶苦茶やからアイツ。」
どうします、と有無を言わせぬうつくしい笑顔で言い放った伊月の前に、村長だった男は項垂れた。



後編へ続く。臣