こらぼでほすと 秘密1
定期連絡の折に、保護者から、そろそろ検査を受けて欲しいと頼まれた。毎年、こればかりはレイも大人しく受けている。現状をきっちりと把握するには、これが最低限必要なことだからだ。
「来月、ゴールデンウィークなら一週間、時間が取れます。その時でよろしいですか? 」
「それで、構わない。おそらくクスリを増やすことにはなると思うが・・・・そのまま、そちらに所属するつもりなのかな? 」
「そうですね。できれば、こちらで、と、考えています。本来なら、そちらに戻って、あなたの手伝いをすべきだとは思っていたのですが・・・」
「いいや、好きに時間は使いなさい。きみが、少しでも幸せだと感じられることが大切だと私も思うんだ。」
時間は、あまりない。だから、保護者も何も言わない。できるかぎりの引き延ばしはしてくれるが、それでも時間は少ないからだ。レイも、それについては有り難いと思っている。
連絡を終えて、ということは、オーヴの遠征には付き合えないな、と、残念に思った。ひとつひとつ思い出を増やしている。温かくて幸せな思い出を大切にしたいので、レイは、それが残念だと苦笑した。
アレハレルヤがキュリオスリペアで地上降下する予定が、組織から送られて来た。直接、特区には降下できないので、太平洋の赤道直下に降下して、そこから特区に向かうとのことだ。ティエリアのほうは、少し遅れて、特区に軌道エレベーター経由で降りて来る。ラボで待ち合わせして、機体についての打ち合わせをしてから、寺に入る予定だ。
「打ち合わせは、一日もあればできるから、翌日、到着予定ってことで、ママには連絡しておけばいいね? アスラン。」
「そんなとこだな。虎さん、ジェシカさんにも同席してもらいますか? 」
「そうだな。機体特性については、ジェシカにも説明しておくほうが無難だが、あちらさんは来られるか? 」
「通信繋いでやれば、同席してるのと変わらないから、ダメなら、その方法で。」
「なるほど、それならそれで連絡しておこう。」
ラボのほうも準備は万端だ。すでに、キュリオスリペアとデュナメスリペアの格納場所も用意が完了している。整備の問題点は、オーヴの技術屋と、こちらのマードックが確認すれば、どうにかなる。
「あいつらは、そのまま旅行に出かけるんだろ? それ、ニールには報せてあるのか? 」
「ええ、刹那が、それは説明してくれています。」
「ちょうどいいかもしれない。ゴールデンウィークにママたち、オーヴへ遠征するから、一緒に行って、あっちから、そのまま旅行に出ればいい。・・・・こちらもオーヴに出かける予定だから、帰りは僕がママに存分に甘えることにしよう。」
キラたちもゴールデンウィークという特区の休みには、オーヴへ遠征する。実家へ顔を出すのと、オーヴでの仕事がある。帰りを合わせておけば、アレルヤたちがいなくなっても、キラが騒ぐ。これなら、寂しいと思うのも少しは紛れるはずだ。
レイはバイトの前に、寺に顔を出していた。ゴールデンウィークの予定に同行できないから、ママに謝るためだ。
「すいません、ママ。どうしても、プラントに戻らないといけなくて・・・」
「それ、シンは? 」
「いえ、シンは呼ばれてません。今回は、俺だけです。ギルの予定が、そこしか空いてなくて、かち合ってしまったんです。」
「そういうことなら、しょうがないさ。あちらさんは忙しい人なんだからさ。」
プラントに用事で帰るということなら、ニールも引き止めない。レイの本来の職場は、あちらにあるし、保護者も、あちらにいる。あちらからの呼び出しなら、こちらの予定なんて反故にしてもらってもしょうがない。そろそろ、暖かくなったので、レイの前にはミントティーが用意されている。それから、オレンジゼリーだ。
「残念です。」
「そう言うなよ、レイ。また行けばいいじゃないか。どうせ、トダカさんのことだから、一回では終わらないだろうぜ? 」
レイのママは、そう言って慰めてくれる。確かに、これからは、何度でもトダカは連れ行ってくれるだろう。でも、その一つずつが、レイには大切な思い出になる。
「でも、ママとのお出かけなんて・・・・俺、家族旅行も初めてだったので・・・」
「そういえば、そうだな。いつもは親衛隊さんがくっついてるんだもんな。・・・ん? 今回もついてくるんじゃないか? 」
「いえ、今回は家族オンリーの予定のはずです。アマギさんが、そう言われてました。」
「そうなんだ。それでもさ、二ヶ月もすれば、プラントへ旅行に行くんだろ? その時は目一杯、楽しめばいい。」
「ええ、楽しみにしててください。俺が案内しますから。」
「うん、楽しみにしてるよ。・・・・俺、プラントは行ったことがないんだ。あそこは、チェックが厳しくてさ。」
それに、そこでの仕事の依頼というものがなかったから、行く必要もなかった。ニールにしても観光なんて目的での旅行は、ほとんど経験がない。
「そりゃそうですよ、ママ。ナチュラルと友好的になったのは最近です。それまではナチュラルな人間の入国は常に監視されている状態でした。」
「そうなんだ。だから、行けなかったんだ。俺、テロリストだったからさ。」
「今は一般人だし、俺のママだから歓迎されます。」
「あははは・・・・歓迎はしてもらわなくていいけど、レイが生まれた世界は見てみたいよ。なんせ、最先端技術の世界だもんな。こっちとは、随分と違うんだろ? 」
「一般エリアは変わりませんよ? ママ。寺はありませんが。」
「ああ、そうか。宗教ってもんはないんだな。」
「いえ、教会はあります。ただ、特区の宗教観というのは存在しないので。極東のものは独特で。」
レイもニールも極東の宗教観には詳しくないから、よくわからない。寺と神社も種類は違うものらしいのだが、それすら、理解できかねている。
「俺、寺で女房を拝命してるけど、全然わからないよ。・・・まあ、それはいいさ。」
「そうですね。」
話がひと段落したところへ、悟空が帰って来た。夕方からバイトだから、おやつを食べたら出かける。ニールは、台所へ準備に立ち上がり、悟空のほうは卓袱台の前に座り込む。
「悟空、おまえ、オーヴの遠征に付き合わないか? 俺が行けなくなったんだ。」
「あー、それがさ。俺も本山に行くことになったんだ。」
元々、坊主が本山の用件で出かける予定だったが、ゴールデンウィークなら悟空も戻れると知った上司様たちが、その日程で戻るように坊主に打診してきた。ということで、悟空も一緒に行くことになったとのことだ。
「え? 悟空も出張なのか? 」
おやつを運んで来たニールは知らなかった。本日のおやつは、カツ丼だ。てんこもりに盛り上がった丼が、悟空の前に置かれる。
「さっき、三蔵からメールが来たんだよ。」
「ということは、寺は空っぽになっちまうな。」
「ここは、悟浄と八戒が留守番してくれるはずだ。だから、ママもオーヴに行っても大丈夫だぜ。」
元々、五月に本山へ坊主が出張するというのは、ニールも聞いていた。坊主から留守番は頼まれていたのだが、それは五月中旬という話だったから、トダカとのオーヴ行きは決めたのだ。
「来月、ゴールデンウィークなら一週間、時間が取れます。その時でよろしいですか? 」
「それで、構わない。おそらくクスリを増やすことにはなると思うが・・・・そのまま、そちらに所属するつもりなのかな? 」
「そうですね。できれば、こちらで、と、考えています。本来なら、そちらに戻って、あなたの手伝いをすべきだとは思っていたのですが・・・」
「いいや、好きに時間は使いなさい。きみが、少しでも幸せだと感じられることが大切だと私も思うんだ。」
時間は、あまりない。だから、保護者も何も言わない。できるかぎりの引き延ばしはしてくれるが、それでも時間は少ないからだ。レイも、それについては有り難いと思っている。
連絡を終えて、ということは、オーヴの遠征には付き合えないな、と、残念に思った。ひとつひとつ思い出を増やしている。温かくて幸せな思い出を大切にしたいので、レイは、それが残念だと苦笑した。
アレハレルヤがキュリオスリペアで地上降下する予定が、組織から送られて来た。直接、特区には降下できないので、太平洋の赤道直下に降下して、そこから特区に向かうとのことだ。ティエリアのほうは、少し遅れて、特区に軌道エレベーター経由で降りて来る。ラボで待ち合わせして、機体についての打ち合わせをしてから、寺に入る予定だ。
「打ち合わせは、一日もあればできるから、翌日、到着予定ってことで、ママには連絡しておけばいいね? アスラン。」
「そんなとこだな。虎さん、ジェシカさんにも同席してもらいますか? 」
「そうだな。機体特性については、ジェシカにも説明しておくほうが無難だが、あちらさんは来られるか? 」
「通信繋いでやれば、同席してるのと変わらないから、ダメなら、その方法で。」
「なるほど、それならそれで連絡しておこう。」
ラボのほうも準備は万端だ。すでに、キュリオスリペアとデュナメスリペアの格納場所も用意が完了している。整備の問題点は、オーヴの技術屋と、こちらのマードックが確認すれば、どうにかなる。
「あいつらは、そのまま旅行に出かけるんだろ? それ、ニールには報せてあるのか? 」
「ええ、刹那が、それは説明してくれています。」
「ちょうどいいかもしれない。ゴールデンウィークにママたち、オーヴへ遠征するから、一緒に行って、あっちから、そのまま旅行に出ればいい。・・・・こちらもオーヴに出かける予定だから、帰りは僕がママに存分に甘えることにしよう。」
キラたちもゴールデンウィークという特区の休みには、オーヴへ遠征する。実家へ顔を出すのと、オーヴでの仕事がある。帰りを合わせておけば、アレルヤたちがいなくなっても、キラが騒ぐ。これなら、寂しいと思うのも少しは紛れるはずだ。
レイはバイトの前に、寺に顔を出していた。ゴールデンウィークの予定に同行できないから、ママに謝るためだ。
「すいません、ママ。どうしても、プラントに戻らないといけなくて・・・」
「それ、シンは? 」
「いえ、シンは呼ばれてません。今回は、俺だけです。ギルの予定が、そこしか空いてなくて、かち合ってしまったんです。」
「そういうことなら、しょうがないさ。あちらさんは忙しい人なんだからさ。」
プラントに用事で帰るということなら、ニールも引き止めない。レイの本来の職場は、あちらにあるし、保護者も、あちらにいる。あちらからの呼び出しなら、こちらの予定なんて反故にしてもらってもしょうがない。そろそろ、暖かくなったので、レイの前にはミントティーが用意されている。それから、オレンジゼリーだ。
「残念です。」
「そう言うなよ、レイ。また行けばいいじゃないか。どうせ、トダカさんのことだから、一回では終わらないだろうぜ? 」
レイのママは、そう言って慰めてくれる。確かに、これからは、何度でもトダカは連れ行ってくれるだろう。でも、その一つずつが、レイには大切な思い出になる。
「でも、ママとのお出かけなんて・・・・俺、家族旅行も初めてだったので・・・」
「そういえば、そうだな。いつもは親衛隊さんがくっついてるんだもんな。・・・ん? 今回もついてくるんじゃないか? 」
「いえ、今回は家族オンリーの予定のはずです。アマギさんが、そう言われてました。」
「そうなんだ。それでもさ、二ヶ月もすれば、プラントへ旅行に行くんだろ? その時は目一杯、楽しめばいい。」
「ええ、楽しみにしててください。俺が案内しますから。」
「うん、楽しみにしてるよ。・・・・俺、プラントは行ったことがないんだ。あそこは、チェックが厳しくてさ。」
それに、そこでの仕事の依頼というものがなかったから、行く必要もなかった。ニールにしても観光なんて目的での旅行は、ほとんど経験がない。
「そりゃそうですよ、ママ。ナチュラルと友好的になったのは最近です。それまではナチュラルな人間の入国は常に監視されている状態でした。」
「そうなんだ。だから、行けなかったんだ。俺、テロリストだったからさ。」
「今は一般人だし、俺のママだから歓迎されます。」
「あははは・・・・歓迎はしてもらわなくていいけど、レイが生まれた世界は見てみたいよ。なんせ、最先端技術の世界だもんな。こっちとは、随分と違うんだろ? 」
「一般エリアは変わりませんよ? ママ。寺はありませんが。」
「ああ、そうか。宗教ってもんはないんだな。」
「いえ、教会はあります。ただ、特区の宗教観というのは存在しないので。極東のものは独特で。」
レイもニールも極東の宗教観には詳しくないから、よくわからない。寺と神社も種類は違うものらしいのだが、それすら、理解できかねている。
「俺、寺で女房を拝命してるけど、全然わからないよ。・・・まあ、それはいいさ。」
「そうですね。」
話がひと段落したところへ、悟空が帰って来た。夕方からバイトだから、おやつを食べたら出かける。ニールは、台所へ準備に立ち上がり、悟空のほうは卓袱台の前に座り込む。
「悟空、おまえ、オーヴの遠征に付き合わないか? 俺が行けなくなったんだ。」
「あー、それがさ。俺も本山に行くことになったんだ。」
元々、坊主が本山の用件で出かける予定だったが、ゴールデンウィークなら悟空も戻れると知った上司様たちが、その日程で戻るように坊主に打診してきた。ということで、悟空も一緒に行くことになったとのことだ。
「え? 悟空も出張なのか? 」
おやつを運んで来たニールは知らなかった。本日のおやつは、カツ丼だ。てんこもりに盛り上がった丼が、悟空の前に置かれる。
「さっき、三蔵からメールが来たんだよ。」
「ということは、寺は空っぽになっちまうな。」
「ここは、悟浄と八戒が留守番してくれるはずだ。だから、ママもオーヴに行っても大丈夫だぜ。」
元々、五月に本山へ坊主が出張するというのは、ニールも聞いていた。坊主から留守番は頼まれていたのだが、それは五月中旬という話だったから、トダカとのオーヴ行きは決めたのだ。
作品名:こらぼでほすと 秘密1 作家名:篠義