こらぼでほすと 秘密4
さて、こちら本山では、坊主の上司様ご一行が、顔を出していた。それほど緊迫した要件はない。ただ、悟空の顔見たさに呼び戻しただけだから、坊主の仕事は毎日、適当に印鑑をついてサインするだけだ。それも面倒だから、やってきた金蝉と一緒にやっていたりする。
「ママのお加減は、いかがですか? 悟空。 」
「雨とかは、ちょっとしんどそーだけど、元気にはしてるぜ、天蓬。」
「それは何よりです。ほんと、よく救出したもんですよ。ニールが死んでたら、大変なことになってましたから。」
「くくくく・・・・女房を担いで走ったらしいな? 三蔵。愛を感じるぜ。」
天蓬と捲簾の言葉に、坊主はギロリと金蝉を睨む。誰だ、そんなことを覗いていたバカは、という質問だ。神仙界には、遠方を覗ける法具がある。それを使えば、神仙界から、人界を覗くことも可能だが、それは使える者が限られている。この場で該当するのは金蝉ぐらいだ。
「俺じゃねぇ。八戒から報告メールが来た。」
「それで、詳しく詳細を電話で確認させていただきました。・・・・いやあ、僕も驚きました。あなた、本当にニールが必要だと思っているんですね。」
「あれは、ママの身体が心配だったんだよ、天蓬。ママ、ものすごく危険な状態だったからさ。早く連れ戻さないといけなかったんだ。」
「もちろん、そこいらもお聞きしましたよ、悟空。まさか、あんな大事になるとは思いませんでした。さすが、ラクス・クラインというところなんでしょうかねぇ。」
「歌姫さんを拉致して、こき使うために、ママを人質にしようって魂胆だったらしい。ほんと、とんでもねぇーやつらだ。」
半年前の騒ぎは、そういうものだった。別に、歌姫が拉致されただけなら、悟空が奪還に向かうことはない。一緒に拉致されたのが、弱りきっているママだったから、暴れたのだ。
「まあ、無事に奪還できてよかったですよ。後から報告を聞いて、僕らも激怒いたしました。三蔵の大切な奥様を拉致するなんてね。」
じわりじわりと真綿で首を絞めるように、どっかの元帥様が坊主をからかう。 こんな楽しい話題は、徹底的にやらなければならない。
「これで懲りてニールには手を出さないだろう。ニールのお父上も、さんざんにやらかしたらしいからなあ。」
「あの舅は洒落にならん。俺らより性質が悪いぞ、捲簾。」
「そりゃ、大切な娘に手を出されたら、誰だってキレるだろう。それも治療目前の娘に危害を加えられたんだ。あれでも大人しいほうだぞ。」
さすがに八戒もトダカの行状は全て把握していたわけではないが、一時、特区からユニオンのエージェントを完全に排除したというのは知っていた。ということで、それらは、もれなく上司様に報告されている。
「しばらくは大人しいはずだ。」
「まあ、そうでしょうね。あれだけ派手に暗部を暴露されたら、動きたくても動けません。」
「おまえ、そろそろニールに求婚したら、どうだ? 三蔵。チビ猫たちは無事だったんだし、もう憂いはないんだろ? 」
「うるせぇーまだ、いいんだよ、金蝉。だいたい、なんで、正式に嫁にしなきゃならねぇーんだ。」
坊主は、求婚するつもりはない。確かに、一緒に暮らすには、いい相手だが、どちらも相手より大切なものがある。だから、このまま続けられるだけでいいと考えている。わざわざ、正式に籍を入れて、どうこうなんて坊主も、坊主の女房も考えるはずがない。
「正式に、という意味が違いますよ? 三蔵。あなたの戸籍だって、特区のは偽造してあるんですからね。そうじゃなくて、ちゃんと言葉で伝えて許可を求めろって言うんです。どうせ、あなたのことだから、そういうことは言ってないんでしょ? 」
「おまえは俺の女房だ、とは言ってるぜ? 天蓬。」
普段の寺夫夫のいちゃこら会話に常時、曝されている悟空は、そう言う。さらに、ママの返事は、「はいはい。」だから、求婚以上の会話ではないか、と、思う。
「それ、ニールは適当に流してるだけですからね。悟空。ちゃんと、ニールが、「あなたの女房になります。」 とは返事しているわけじゃありません。」
「ああ、そうなんだ。」
「まあ、そうせっついてやるな、天蓬。こいつにはこいつの間ってもんがあるんだろう。まだ時間はある。好きにすればいい。だが、ニールも体調の問題がないなら、うちにも遊びには来られるだろ? 一度くらい、こっちも案内してやったら、どうだ? 悟空。」
「そうだな、金蝉。なんもなくて、びっくりするだろーなあ。こっちの虎にも逢わせてやりたいな。」
「それも、慌てる用件じゃねぇーから、そのうち連れて来い、悟空。なんにもないが、ニールの体調にはいいだろう。」
「うーん、でも、ここだと添い寝するやつがいねぇーから、金蝉がやってくれる? ママ、ひとりだと寝られないんだ。」
ニールは、大概が誰かと一緒に寝ている。今のところ、リジェネが担当しているが、リジェネが来なければ、誰も出来ない。悟空では怪我をさせるし、坊主は独り寝の人だからだ。
「あははは・・・そういうのは、僕も参加させていただきたいですね、悟空。じっくりと夫夫の閨について教授してさしあげますよ。」
「おまえはやるな、天蓬。俺が寝てやる。」
「おいおい、金蝉。勢い余って、そのままモノにしちまうなよ? 三蔵の女房なんだからな。」
「くくくく・・・・早い者勝ちだ。」
上司様にしてみると、それはそれで楽しそうなので参加の方向だ。それには、坊主がピキッとこめかみをひくつかせた。
「おまえら、うちの女房はノンケだと言ったはずだ。」
「添い寝だけですよ? 三蔵。別に、それ以上のことはやりません。それ以上になったら、うちの亭主が嘆きます。」
「嘆くっていうか、おまえ・・・抱けるのか? 無精モンのくせに。」
天蓬は無精者だ。とても抱く手順を踏むとは、捲簾は予想できない。いきなりやったら流血の大惨事だし、それこそ、ノンケのニールにはおかしなトラウマになるだろう、と、捲簾は心配する。それなのに、女房は、さらっととんでもない意見を吐いた。
「下準備は任せます。」
「それ、三人で絡むってことか? おいおい、俺はやりたくねぇーぞ、天蓬。」
「ちょっと待て。みんな、ママは三蔵のなんだから手を出すのはダメッッ。添い寝だけでいいんだよっっ。」
「わかってますよー悟空。ちょっとおどけてるだけです。そうなったら、金蝉がやってくれますよ。ねぇ? 金蝉。」
「ああ、寝てやるぞ、悟空。」
童子様も穏やかに笑いつつ、頷いている。坊主をからかっているだけで、悟空の心配するようなことはないので、ちゃんと話は終わらせた。坊主は、からかわれていると承知しているからスルーの方向だ。悟空のおかんを助けるには、あれだけ派手に動いても、神仙界からのクレームはないらしい。それを教えるためだから、坊主も適当にツッコミしつつ付き合っている。
オーヴのほうの翌朝、ニールは、のんびりと目が覚めた。朝から家事がないので、慌てる必要がない。なんだか、温かいな、と、横に目をやったらティエリアを抱きこんでいた。確か、寝る前はリジェネだったはずだ。
ついでに背後にはアレルヤがぴとっとくっついている。どうやら、途中で交代したらしい。
「あれ? 」
「ママのお加減は、いかがですか? 悟空。 」
「雨とかは、ちょっとしんどそーだけど、元気にはしてるぜ、天蓬。」
「それは何よりです。ほんと、よく救出したもんですよ。ニールが死んでたら、大変なことになってましたから。」
「くくくく・・・・女房を担いで走ったらしいな? 三蔵。愛を感じるぜ。」
天蓬と捲簾の言葉に、坊主はギロリと金蝉を睨む。誰だ、そんなことを覗いていたバカは、という質問だ。神仙界には、遠方を覗ける法具がある。それを使えば、神仙界から、人界を覗くことも可能だが、それは使える者が限られている。この場で該当するのは金蝉ぐらいだ。
「俺じゃねぇ。八戒から報告メールが来た。」
「それで、詳しく詳細を電話で確認させていただきました。・・・・いやあ、僕も驚きました。あなた、本当にニールが必要だと思っているんですね。」
「あれは、ママの身体が心配だったんだよ、天蓬。ママ、ものすごく危険な状態だったからさ。早く連れ戻さないといけなかったんだ。」
「もちろん、そこいらもお聞きしましたよ、悟空。まさか、あんな大事になるとは思いませんでした。さすが、ラクス・クラインというところなんでしょうかねぇ。」
「歌姫さんを拉致して、こき使うために、ママを人質にしようって魂胆だったらしい。ほんと、とんでもねぇーやつらだ。」
半年前の騒ぎは、そういうものだった。別に、歌姫が拉致されただけなら、悟空が奪還に向かうことはない。一緒に拉致されたのが、弱りきっているママだったから、暴れたのだ。
「まあ、無事に奪還できてよかったですよ。後から報告を聞いて、僕らも激怒いたしました。三蔵の大切な奥様を拉致するなんてね。」
じわりじわりと真綿で首を絞めるように、どっかの元帥様が坊主をからかう。 こんな楽しい話題は、徹底的にやらなければならない。
「これで懲りてニールには手を出さないだろう。ニールのお父上も、さんざんにやらかしたらしいからなあ。」
「あの舅は洒落にならん。俺らより性質が悪いぞ、捲簾。」
「そりゃ、大切な娘に手を出されたら、誰だってキレるだろう。それも治療目前の娘に危害を加えられたんだ。あれでも大人しいほうだぞ。」
さすがに八戒もトダカの行状は全て把握していたわけではないが、一時、特区からユニオンのエージェントを完全に排除したというのは知っていた。ということで、それらは、もれなく上司様に報告されている。
「しばらくは大人しいはずだ。」
「まあ、そうでしょうね。あれだけ派手に暗部を暴露されたら、動きたくても動けません。」
「おまえ、そろそろニールに求婚したら、どうだ? 三蔵。チビ猫たちは無事だったんだし、もう憂いはないんだろ? 」
「うるせぇーまだ、いいんだよ、金蝉。だいたい、なんで、正式に嫁にしなきゃならねぇーんだ。」
坊主は、求婚するつもりはない。確かに、一緒に暮らすには、いい相手だが、どちらも相手より大切なものがある。だから、このまま続けられるだけでいいと考えている。わざわざ、正式に籍を入れて、どうこうなんて坊主も、坊主の女房も考えるはずがない。
「正式に、という意味が違いますよ? 三蔵。あなたの戸籍だって、特区のは偽造してあるんですからね。そうじゃなくて、ちゃんと言葉で伝えて許可を求めろって言うんです。どうせ、あなたのことだから、そういうことは言ってないんでしょ? 」
「おまえは俺の女房だ、とは言ってるぜ? 天蓬。」
普段の寺夫夫のいちゃこら会話に常時、曝されている悟空は、そう言う。さらに、ママの返事は、「はいはい。」だから、求婚以上の会話ではないか、と、思う。
「それ、ニールは適当に流してるだけですからね。悟空。ちゃんと、ニールが、「あなたの女房になります。」 とは返事しているわけじゃありません。」
「ああ、そうなんだ。」
「まあ、そうせっついてやるな、天蓬。こいつにはこいつの間ってもんがあるんだろう。まだ時間はある。好きにすればいい。だが、ニールも体調の問題がないなら、うちにも遊びには来られるだろ? 一度くらい、こっちも案内してやったら、どうだ? 悟空。」
「そうだな、金蝉。なんもなくて、びっくりするだろーなあ。こっちの虎にも逢わせてやりたいな。」
「それも、慌てる用件じゃねぇーから、そのうち連れて来い、悟空。なんにもないが、ニールの体調にはいいだろう。」
「うーん、でも、ここだと添い寝するやつがいねぇーから、金蝉がやってくれる? ママ、ひとりだと寝られないんだ。」
ニールは、大概が誰かと一緒に寝ている。今のところ、リジェネが担当しているが、リジェネが来なければ、誰も出来ない。悟空では怪我をさせるし、坊主は独り寝の人だからだ。
「あははは・・・そういうのは、僕も参加させていただきたいですね、悟空。じっくりと夫夫の閨について教授してさしあげますよ。」
「おまえはやるな、天蓬。俺が寝てやる。」
「おいおい、金蝉。勢い余って、そのままモノにしちまうなよ? 三蔵の女房なんだからな。」
「くくくく・・・・早い者勝ちだ。」
上司様にしてみると、それはそれで楽しそうなので参加の方向だ。それには、坊主がピキッとこめかみをひくつかせた。
「おまえら、うちの女房はノンケだと言ったはずだ。」
「添い寝だけですよ? 三蔵。別に、それ以上のことはやりません。それ以上になったら、うちの亭主が嘆きます。」
「嘆くっていうか、おまえ・・・抱けるのか? 無精モンのくせに。」
天蓬は無精者だ。とても抱く手順を踏むとは、捲簾は予想できない。いきなりやったら流血の大惨事だし、それこそ、ノンケのニールにはおかしなトラウマになるだろう、と、捲簾は心配する。それなのに、女房は、さらっととんでもない意見を吐いた。
「下準備は任せます。」
「それ、三人で絡むってことか? おいおい、俺はやりたくねぇーぞ、天蓬。」
「ちょっと待て。みんな、ママは三蔵のなんだから手を出すのはダメッッ。添い寝だけでいいんだよっっ。」
「わかってますよー悟空。ちょっとおどけてるだけです。そうなったら、金蝉がやってくれますよ。ねぇ? 金蝉。」
「ああ、寝てやるぞ、悟空。」
童子様も穏やかに笑いつつ、頷いている。坊主をからかっているだけで、悟空の心配するようなことはないので、ちゃんと話は終わらせた。坊主は、からかわれていると承知しているからスルーの方向だ。悟空のおかんを助けるには、あれだけ派手に動いても、神仙界からのクレームはないらしい。それを教えるためだから、坊主も適当にツッコミしつつ付き合っている。
オーヴのほうの翌朝、ニールは、のんびりと目が覚めた。朝から家事がないので、慌てる必要がない。なんだか、温かいな、と、横に目をやったらティエリアを抱きこんでいた。確か、寝る前はリジェネだったはずだ。
ついでに背後にはアレルヤがぴとっとくっついている。どうやら、途中で交代したらしい。
「あれ? 」
作品名:こらぼでほすと 秘密4 作家名:篠義