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こらぼでほすと 秘密5

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その日は、適当に観光したりショッピングしたりと楽しんで、旅館に戻った。ニールの体調の問題があるから早めに戻って、風呂に入り、食事時間まで各人、だらだらと過ごす。シンは、せっかくだから、と、大浴場に遠征した。ニールのほうは、早速とばかりに、料理本を開いていた。さすがに、特区の文字までは理解していないから、スタンダードで書かれているものだ。ここ数年で、ニールも、ある程度の言葉は覚えたが、文章までは無理だ。ついでに、どの料理もスパイスが適量とあって、どの程度なのか、さっぱりわからない。うーん、とと、首を捻ったら、リジェネが、隣りで笑っている。
「僕が読んで解説してあげるのに。」
「まあ、そうだけどさ。・・・・そのうち、教えてくれよ。」
「それ、特区の言語ってこと? ママ、喋ってるよね? 」
「会話程度は、なんとかわかるんだけどさ。文章とか漢字は、からっきしだ。」
「うん、独特だもんね。ヴェーダは、大概の言語は記憶しているから、そのうち教えるよ。まず、僕が理解しなきゃだ。」
 二人して寝転んで、その本を眺めつつ会話していたら、ニールのほうは沈没した。まあ、そりゃそうだろう、と、リジェネは起きてタオルケットを掛けると、どこかへ出かけてしまった。
 それを横目にしつつ、トダカとティエリア、アレハレは、風呂上りのビールを楽しんでいる。
「次の予定は? 」
「とりあえずのところは、お見舞いに欧州のほうへ。それからは、また適当に廻ろうと思っているんです。結構、ひとつひとつが時間がかかるので、たくさんは廻れないんですよ。」
 前回で解ったが、建造物のような世界遺産というのは内部の装飾なんかも見て廻るので時間がかかる。だから、マリーのところへ顔を出して、その周辺を廻ってみようとアレルヤは予定している。都市部ならヴェーダとのリンクが切れる心配は少ないのだが、都市部にあるのは建造物だ。それほど世界遺産に拘らなくてもいいな、とも思っている。違う景色を、二人で堪能するだけで十分楽しいと気付いたからだ。
「トダカさん、三蔵の出張している寺院も、ああいうものなんですか? あちらのものだとおっしゃいましたが? 」
 ティエリアは、本日の観光地について質問だ。坊主の本山がある地域がメインの宗派の寺だとトダカは、ざっくりと説明したからだ。
「いや、三蔵さんは仏教という宗教で、あれは道教という宗教の寺院だから、違うと思うよ、ティエリアくん。道教は、民間信仰が基本になっているもので、本場は、あちらなんだが、世界中のチャイナタウンに建立されているんだ。だから、奉っている神様も違うし考え方も違うはずだ。私は、それほど詳しくないから、後はガイドブックでも参照してくれ。」
「なるほど、宗教が違うんですか。では、陰膳も仏教のものですか? 」
「いや、陰膳はアジア圏では共通のものじゃないかな。ああ、そういえばやってたね? アレルヤくん、きみ、監禁されてた時、ケーキの匂いとか味噌汁の匂いなんて感じなかったかい? 」
「え? ケーキ? うーん、どうなんだろう。たまに、みんなのことは思い出してたけどなあ。お寺で、ごはん食べた時のことなんか、よく思い出してたなあ。みんなで食べるのは楽しかったから。」
 トダカとティエリアは顔を見合わせて苦笑した。なんとなくは届いているらしい。
「届くものなんですね? トダカさん。」
「そりゃ、あれだけ真面目に念じてれば、何かは届いているだろうさ。・・・・あのね、アレルヤくん、ハレルヤくん、きみたちが不在の時に、うちの子が、きみたちのために陰膳を供えていたんだよ。」
 アレハレが行方不明になった後で、ニールは三蔵に教えられて、何度も陰膳を供えていた。ティエリアも、それを体験していたので微笑んで頷いた。トダカも、アレハレ二人に呼びかけた。これは、二人に知っていてもらいたいことだからだ。
「カゲゼン? 」
「こちらの風習で、行方のわからない人のために、ごはんの念だけでも届くように、食事やお菓子を用意して祈ることだ。三蔵さんが教えたらしいけど、ニールが、きみらがお腹が空かないように、それから無事に生きているように、と、寺の祭壇に供えて三蔵さんに念だけ送ってもらってた。それを陰膳というんだ。・・・・だから、きみらが、お寺で、みんなで、ごはんを食べたことを思い出してたって言うから、なんらかは届いてたんだなって思うんだよ。」
「非科学的なことなんだが、俺も祈ったことがある。・・・おまえたちが不在でも、おまえたちは生きているのだと、ニールは俺たちに、さんざんに噂もさせていた。おまえたちを身近に感じることで、不安を解消させてくれてたんだと思う。」
 かなり酷い噂やら悪口やらをしていたが、それでも、それを話していれば、アレハレを身近に感じられたのだ。今は逢えないが、そのうち戻って来る、というのが、ティエリアやフェルトの心に根付いたのも、ニールのお陰だ。まあ、当人は、それを言うと眠れなくて酒の世話になったりしていたが、と、トダカは内心で苦笑する。
「・・・え?・・・」
「ニール自身も、そう信じることで、きみらの不在の不安を乗り越えてたんだ。綺麗なケーキを誕生日に用意してたよ? 」
「二度とやるな。ニールが壊れて大変なことになる。」
 その壊れた状態を看病したティエリアは憤慨したように申し渡した。うん、と、頷いてアレルヤは、ニールのほうへ振り返る。座布団を枕にして、すやすやと眠っている姿は、とても幸せそうなものだ。


・・・・僕ら、大切にされてるんだね?・・・・

・・・・てか、こいつ・・・ほんと、バカだな? んなもん、届くわきゃねぇーのに・・・・

・・・・でも、お寺のことを思い出した時って・・・そういえば、ごはんを食べてるとこばっかりだったよ? ハレルヤ・・・・

・・・・そういえば、そうだな・・・・・・


 裡で二人で会話して、ニールを眺める。壊れたとは聞いていたが、生きていると信じて待っていてくれたのは嬉しいと思う。ようやく細胞異常も完治して、危険な状態からも脱したが、これから先も、実働部隊は武力介入をする。その度に、不安を掻き立てられて、それでもニールは信じて待っていてくれるのだろう。
「うちのじじいは、ドリームが過ぎるぜ。・・・・まあ、せいぜい、拉致られないように戦うことにするさ。」
「もう一度、行方不明になったら探し出して殲滅してやる。今度は、即座に探せるからな。」
 ティエリアはヴェーダ本体だ。次に、アレハレたちが行方不明になったら、その時は即座に奪還できる。でも、そうは言わないのが、ティエリアのツンデレなところだ。
「殲滅か。いいじゃねぇーか。やれるもんならやってみろや、ティエリア。俺たちが二人だと、手間がかかるぜ? 」
「ふんっ、俺の手にかかれば、おまえたちなど瞬殺だ。・・・・その時が楽しみだな。」
作品名:こらぼでほすと 秘密5 作家名:篠義