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こらぼでほすと 秘密5

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 なんていうか、ものすごい台詞の応酬なのだが、これはこれで通常会話なので、トダカはスルーだ。あそこまで追い込まれることは、あまりないだろう。今の連邦は、かなり恒久的平和を模索している。戦わない方向での調整をしているので、組織が武力介入するような用件は激減だし、武力介入するとしても、テロ組織や悪質な企業体なんかがメインになるから、以前のような物量作戦はないと予想されているからだ。
「きみらも、ここの庭なり周辺を散策でもしてきたら、どうたい? どうせ、ニールは小一時間は目が覚めないし、きみらも自由行動なんだからさ。」
 きゃんきゃんと言い合いをしているので、トダカが口を挟んだ。別に、旅館に閉じこもっている必要はない。夕食までは各人、フリータイムだから、二人で散歩でもすればいい。
「そうだな。おい、ティエリア、コンビニまで遠征しようぜ? ポテチが食いたい。」
「わかった。何か欲しいものはありませんか? トダカさん。」
「うーん、乾き物のおつまみを頼んでもいいかい? 」
「了解です。では、いってきます。」
 ティエリアとアレハレは、いそいそと席を立って外出した。まあ、こんな家族旅行だと、二人でいちゃこらはできないので、それはそれで楽しいらしい。



 リジェネは、ベッドのある寝室で、ごろりと寝転んでいた。ヴェーダとリンクして、必要な情報をプラントから取り出していた。それでわかったことは、レイの時間が、とても短いという事実だった。細胞の劣化が始まるのが、三年後。そこからは、どんなにテロメアの長さを引き延ばすクスリを服用したとしても、顕著に肉体に老化が現れる。そうなってくると誤魔化せないから、レイの保護者は戻るように指示したのだ。

・・・・レイは戻らないつもりだよね。でも、それって、ママにもバレちゃうよなあ・・・・・・


 一番、老化が現れるのは顔だ。こればかりは、どうにもならない。整形しても、あっという間に老化するので誤魔化せるものではない。レイは事実を告げるつもりだろうが、ママには受け止められるのか、リジェネには不安だ。せめて、キラたちがプラントに戻るまで時間を稼げば、そこからなら逢う頻度は下がるし、通信なら誤魔化しも可能だ。キラたちが、プラントに戻るまでは、数年はかかる。今の連邦が安定して、オーヴも安定しなければ、プラントの改革に乗り出せないからだ。そこまで、レイの肉体も保たない。

 さて、どうするかなあ、と、考えて起き出した。今のところ、すぐの話ではない。とりあえず、ヴェーダに、テロメアを引き延ばす研究が、どこまで進んでいるか検索をかけさせておくことにする。情報を集めて、それからヴェーダに演算させればいい。レイを、そのままの姿で長く生かす方法を。青年の姿を維持しておくのは、今の状態では無理だ。身体なんてものは、イノベイドの素体を使えば、なんなく解決できる。ただ記憶だけは移せない。レイの姿は模倣できても、レイの心までは模倣できない。記憶だけは、各人が所有するものだ。それだけは、似せても同じものにならない。リジェネとティエリアは、同じ遺伝子情報から作られているが、性格はまったく異なる。それは、マイスターとしてティエリアが活動したことで生まれた感情や記憶があるからだ。ママが、ティエリアを人間として扱い、アレルヤが人間として愛したから、今のティエリアはある。それは、身体を入れ替えてもリジェネにはないから判らないし、記憶を共有しても同じようには感じない。羨ましいとは思わない。リジェネにもママができて、こちらに暮らしていることで育まれた感情や記憶がある。僕らは違うのだ、と、言い切れる。

・・・・それだけに厄介だよ。レイが戻ったら、少し話をしなきゃね。レイがママのところに最後まで居たいのなら、身体はイノベイドの素体にしたほうが安全だ・・・・・


 レイが、どう考えていて、どうしたいのか、それを聞いてから、次の手は考える。リジェネには、レイの考えなんて理解できない。それまでに、こちらから提案できることをヴェーダで、いくつか案を作らせておくぐらいのことだ。

・・・・とりあえず、これはおしまい。そろそろ、ママを起こしてビリヤードにでも誘おうかな・・・・


 食事前に目を覚まさせたら、あまり食が進まない。少し身体を動かしておけば、空腹も感じてくれるだろう。ベッドから降りて、部屋に戻ったら、カガリが、すでに戻っていた。ニールも起きて、一緒にお茶をしている。
「昼寝でもしてたのか? リジェネ。」
「うん、ベッドで寝てた。早いね? カガリ。まだ、夕方なのに。仕事は終わったの? 」
「終わらせてきた。・・・なあ、ママ。卓球やらないか? 」
「タッキュウ? 」
「温泉で卓球は特区の基本だ。遊戯室に、用意させたから遊ぼう。」
「えーっと、ビリヤードみたいなもんか? 」
「いや、テニスの小さいのって感じかな。トダカはできるだろ? 」
「一応は、できますが・・・・下手ですよ? カガリ様。」
「もちろん、おまえらのレベルに合わせるさ。一勝負して腹を完全に空かしてメシにしよう。」
 リジェネが外している間に、またスポーツ大会が開催されるようだ。ママの背中に抱きついて懐いていると、勝手に、どんどん話が進んで行く。まあ、それはいいだろう。適当に運動すれば身体にはいい。
タッキュウとはなんぞや? と、キィーンと目を金目にしてヴェーダから情報は取り出す。なんだか激しいスポーツだ。
「結構、激しくない? ママにできるの? 」
「おまえが調べたのは、本気の競技としての卓球だろ? リジェネ。
そうじゃなくて、打ち返して遊ぶくらいなら激しくはない。」
「それならいいんだけど。」
「リジェネ、ティエリアに遊戯室に居るって伝えてくれ。あいつらは散歩してるんだろ? 」
「うん。・・・シンは? 」
「そういや大浴場にいるにしても長いな。」
「どうせ、散歩にでも出たんじゃないか? シンも、こんなところじゃ退屈だろうから。」
 この旅館は広大な敷地があるが、それほど辺境というわけではない。十分も歩けば、コンビニもあるので、湯冷ましがてらに出かけたのかもしれない、と、トダカが言うと、ニールが備え付けの便箋に、「遊戯室でタッキュウ。」 と、メモは書いた。戻って誰も居ないと慌てるだろうからだ。
「今日も泊れるのか? カガリ。」
「ああ、明日、おかんを港まで見送って私は仕事に出る。・・・・ほんとは、ヘヴンズビーチに行きたかったんだが、さすがに、予定が入ってて抜け出せないんだ。」
「そりゃ仕事なんだから諦めろ。」
「次は、是非、一緒にヘヴンズビーチまで行こう、おかん。あそこは綺麗だ。フェルトも誘って、みんなで遊ぼう。」
「ああ、そうだな。・・・・気候が良くて活気のある国だな? ここは。」
 市街地を散策して思ったのは、そういうものだ。市場の活気があるのは、その国が元気な証拠だ。それにナチュラルとコーディネーターが共存もしている。オーヴは面積としては広くはないが、経済的には繁栄しているのだと、ニールでもわかる。
「ありがとーおかん。これを維持して、さらに発展させるのが私の役目だ。まあ、今のところは維持するので精一杯だが、そのうちにな。」
作品名:こらぼでほすと 秘密5 作家名:篠義