こらぼでほすと 秘密8
翌日は、とうとう帰る日だ。ティエリアとアレハレたちは、ここから欧州のほうへ移動するので、旅館の前から別行動になる。
「気をつけてな? 」
「あなたも大人しく専業主夫でいてください。今月の終わりには、ロックオンが降下します。」
「そうなのか。楽しみにしてる。」
「ニール、ちゃんとリジェネの言うことは聞いてね? クスリは忘れたふりしちゃダメだよ。それから、休息もきちんと取る事。」
「じじい、次におかしなことをやったら、刹那がダブルオーで大気圏降下だからな。わかってるな? 」
「うるせぇーな。わかったよ。おまえらも無茶すんなよ。」
呼んで貰ったタクシーに乗るまで、さんざんに小言を連発して、ティエリアたちは出発した。どんだけ説教したら気が済むんだ? と、リジェネを腕に懐かせたままのニールは呆れつつ引き返す。特区組は、まだ時間があるから出発は少し後だ。離れに引き返したら、すでに出発しそうな勢いになっていた。
「あれ? 飛行機の時間って、まだですよね? 」
「スパイスとか諸々を物色するんだろ? 娘さん。」
トダカに指摘されて、そういやリクエストしてたっけ、と、思い出した。こちらの料理がおいしかったので、スーパーに立ち寄ってスパイスだけでも買いたいと初日に頼んでいた。
「空港までの道中に大きな市場があります。そこへ立ち寄って行きましょう。」
アスランが、そう言ってシンに運転を頼む。じゃあ、クルマを旅館の前まで持ってくる、と、シンは飛び出していった。
市場は、かなり広かった。駐車場にクルマを置いてエントランスへ近付いたら、複合施設であるらしく、特区のショッピングモールのような雰囲気の場所だ。この中で、スパイスとか探すのは大変だなあ、と、思っていたら、キラがエントランスの噴水のほうに手を振っている。てってけと走ってキラは相手に抱きついている。
「家庭料理の最高のアドバイザーを呼んでおきました。」
「え? カリダさんなのか? 」
「カガリから連絡を貰ってカリダさんに頼んだら、二つ返事だったんですよ、ママニール。カリダさんも会いたがってたので。」
ぞろぞろと近寄ったら、キラが離れた。僕のかーさん、と、紹介してくれる。
「初めまして、ママニール。うちの子がお世話になってます。」
「初めまして、カリダさん。たくさん差し入れを、ありがとうございました。一度,逢ってお礼を言いたいと思ってたんです。」
「いいえ、あれぐらいなら朝飯前よ? うちのキラは、奔放すぎて大変でしょ? きっちりしつけてやってね? 」
「あーすいません。つい、手が出ちまって。」
「それぐらいでいいのよ。・・・初めまして、トダカさん。それから、こちらは? シンちゃんは久しぶりね? 」
「この子はリジェネ。僕らの新しい仲間っていうか、ママんとこに押しかけ息子に来た子だよ、かーさん。」
「あらまあ、ママニールは子沢山ねぇ。」
「いつもシンによくしていただいてありがとうございます。」
「とんでもない。シンちゃんは、お手伝いもしてくれる、とても良い子ですわ、トダカさん。うちのバカ息子より可愛いです。」
「うわぁーひどい、かーさん。僕は手伝ったらダメって言うじゃん。」
「そりゃ言うわよ。あなた、何度、台所のものを破壊したと思ってるの? アスランに、なんでもやってもらうから、そんなことになるの。ちょっとは花嫁修業でもしなさい。」
「いえ、カリダさん。それは・・・もう、キラには家事は望みませんから。」
「あーカリダさん、俺もキラには・・・はははは。」
「この間、餃子は包んだよ。」
「そういや、この間の餃子は食べられた。」
「シン、当たり前でしょ。」
「シン、あれは俺が配分は考えた。」
寺で闇鍋餃子大会が催されたが、キラが作るものはアスランがセレクトしていたらしい。そうでないと毒ができるからだ。なるほど、と、シンは大きく頷く。
「さて、ママニール、どんなものが作りたいのかしら? 」
「簡単な家庭料理に使えるスパイスを教えてください。あと、配合されたペーストなんかも欲しいんですが・・・それとアップルマンゴーかな。」
「それぐらいなら、お安い御用よ。行きましょう。」
「じゃあ、私は、酒のほうを物色してくるよ。」
「それならシンを荷物持ちに連れて行ってください、トダカさん。」
「僕、お菓子買いたいんだけど。」
「じゃあ、一時間後に、ここに集合ってことでいいですか? 」
さすがに主婦の買い物には付き合いたくないらしく、各人が適当に散らばることになった。ニール以外は、何度か来ているので迷うことはないらしい。
目的地まで、カリダと並んで歩いた。もちろん、リジェネはニールの腕に懐いている。
「悟空ちゃんは、元気にしてますか? 」
「ええ、今回は三蔵さんの出張についていったので来てませんが、すこぶる元気にしています。悟空のことも、ご存知なんですか。」
「一度遊びに来たことがあるの。とっても楽しかったわ。・・・悟空くんが友達になってくれて、本当に感謝してるの。あの子が現れてから、キラは表情が戻ったから。」
「え? 」
あのぽややんとしたキラの表情がなかったって、どういうこと? と、リジェネでも考える言葉だ。うっかり、その言葉で足が止まってニールの足も止まった。キラは、先の大戦の有名人だ。あの時、何かあったのだろうな、と、ニールはリジェネの背中を軽く叩いて歩かせた。『吉祥富貴』は、おかしな生き物の集合体だ。その大元が何もないわけがない。ただし、根掘り葉掘り聞く必要はない。本人が言いたくなったら口を開くだろう。それまでは聞かないのが、『吉祥富貴』のルールだ。
「そうですか。俺は、今のキラしか知らないから想像できませんね。」
「ほほほほ・・・・そうでしょうねぇ。半年くらいは、無表情でね。私もラクスちゃんも心配したんだけど・・・特区に移り住んで、悟空くんと知り合ってから、普通に笑えるようになった。あの子、素直に表情に出るし、太陽みたいに明るいから、それに影響されたんでしょうね。それから半年は、毎日、遊びまわってたみたいよ? 」
「そうか、それで動物園の虎とも、そこで仲良くなったんだな。」
「え? 虎? 」
こんなことがありまして、と、ニールが動物園の虎の話をすると、あらまあ、と、カリダも大笑いだ。それを聞いて、リジェネは感心する。ニールは初対面のはずのカリダと親しく話している。カリダも、そうだ。共通点はキラだ。それが、こんなにも簡単に人間同士を繋ぐものであるらしい。
「リジェネちゃんは無口なのかしら? 」
「ああ、違うんです。人見知りなんですよ。慣れたら、うるさいですよ? 覚悟して? カリダさん。」
な? と、言われて、うーとママを睨む。別に五月蝿いわけではないのに、こんなことを言われるのはムカつく。
「ああ、そこの店がいいわ。混ぜれば、こちらの料理に早代わりするペーストもあるし。スパイスも豊富なの。」
「気をつけてな? 」
「あなたも大人しく専業主夫でいてください。今月の終わりには、ロックオンが降下します。」
「そうなのか。楽しみにしてる。」
「ニール、ちゃんとリジェネの言うことは聞いてね? クスリは忘れたふりしちゃダメだよ。それから、休息もきちんと取る事。」
「じじい、次におかしなことをやったら、刹那がダブルオーで大気圏降下だからな。わかってるな? 」
「うるせぇーな。わかったよ。おまえらも無茶すんなよ。」
呼んで貰ったタクシーに乗るまで、さんざんに小言を連発して、ティエリアたちは出発した。どんだけ説教したら気が済むんだ? と、リジェネを腕に懐かせたままのニールは呆れつつ引き返す。特区組は、まだ時間があるから出発は少し後だ。離れに引き返したら、すでに出発しそうな勢いになっていた。
「あれ? 飛行機の時間って、まだですよね? 」
「スパイスとか諸々を物色するんだろ? 娘さん。」
トダカに指摘されて、そういやリクエストしてたっけ、と、思い出した。こちらの料理がおいしかったので、スーパーに立ち寄ってスパイスだけでも買いたいと初日に頼んでいた。
「空港までの道中に大きな市場があります。そこへ立ち寄って行きましょう。」
アスランが、そう言ってシンに運転を頼む。じゃあ、クルマを旅館の前まで持ってくる、と、シンは飛び出していった。
市場は、かなり広かった。駐車場にクルマを置いてエントランスへ近付いたら、複合施設であるらしく、特区のショッピングモールのような雰囲気の場所だ。この中で、スパイスとか探すのは大変だなあ、と、思っていたら、キラがエントランスの噴水のほうに手を振っている。てってけと走ってキラは相手に抱きついている。
「家庭料理の最高のアドバイザーを呼んでおきました。」
「え? カリダさんなのか? 」
「カガリから連絡を貰ってカリダさんに頼んだら、二つ返事だったんですよ、ママニール。カリダさんも会いたがってたので。」
ぞろぞろと近寄ったら、キラが離れた。僕のかーさん、と、紹介してくれる。
「初めまして、ママニール。うちの子がお世話になってます。」
「初めまして、カリダさん。たくさん差し入れを、ありがとうございました。一度,逢ってお礼を言いたいと思ってたんです。」
「いいえ、あれぐらいなら朝飯前よ? うちのキラは、奔放すぎて大変でしょ? きっちりしつけてやってね? 」
「あーすいません。つい、手が出ちまって。」
「それぐらいでいいのよ。・・・初めまして、トダカさん。それから、こちらは? シンちゃんは久しぶりね? 」
「この子はリジェネ。僕らの新しい仲間っていうか、ママんとこに押しかけ息子に来た子だよ、かーさん。」
「あらまあ、ママニールは子沢山ねぇ。」
「いつもシンによくしていただいてありがとうございます。」
「とんでもない。シンちゃんは、お手伝いもしてくれる、とても良い子ですわ、トダカさん。うちのバカ息子より可愛いです。」
「うわぁーひどい、かーさん。僕は手伝ったらダメって言うじゃん。」
「そりゃ言うわよ。あなた、何度、台所のものを破壊したと思ってるの? アスランに、なんでもやってもらうから、そんなことになるの。ちょっとは花嫁修業でもしなさい。」
「いえ、カリダさん。それは・・・もう、キラには家事は望みませんから。」
「あーカリダさん、俺もキラには・・・はははは。」
「この間、餃子は包んだよ。」
「そういや、この間の餃子は食べられた。」
「シン、当たり前でしょ。」
「シン、あれは俺が配分は考えた。」
寺で闇鍋餃子大会が催されたが、キラが作るものはアスランがセレクトしていたらしい。そうでないと毒ができるからだ。なるほど、と、シンは大きく頷く。
「さて、ママニール、どんなものが作りたいのかしら? 」
「簡単な家庭料理に使えるスパイスを教えてください。あと、配合されたペーストなんかも欲しいんですが・・・それとアップルマンゴーかな。」
「それぐらいなら、お安い御用よ。行きましょう。」
「じゃあ、私は、酒のほうを物色してくるよ。」
「それならシンを荷物持ちに連れて行ってください、トダカさん。」
「僕、お菓子買いたいんだけど。」
「じゃあ、一時間後に、ここに集合ってことでいいですか? 」
さすがに主婦の買い物には付き合いたくないらしく、各人が適当に散らばることになった。ニール以外は、何度か来ているので迷うことはないらしい。
目的地まで、カリダと並んで歩いた。もちろん、リジェネはニールの腕に懐いている。
「悟空ちゃんは、元気にしてますか? 」
「ええ、今回は三蔵さんの出張についていったので来てませんが、すこぶる元気にしています。悟空のことも、ご存知なんですか。」
「一度遊びに来たことがあるの。とっても楽しかったわ。・・・悟空くんが友達になってくれて、本当に感謝してるの。あの子が現れてから、キラは表情が戻ったから。」
「え? 」
あのぽややんとしたキラの表情がなかったって、どういうこと? と、リジェネでも考える言葉だ。うっかり、その言葉で足が止まってニールの足も止まった。キラは、先の大戦の有名人だ。あの時、何かあったのだろうな、と、ニールはリジェネの背中を軽く叩いて歩かせた。『吉祥富貴』は、おかしな生き物の集合体だ。その大元が何もないわけがない。ただし、根掘り葉掘り聞く必要はない。本人が言いたくなったら口を開くだろう。それまでは聞かないのが、『吉祥富貴』のルールだ。
「そうですか。俺は、今のキラしか知らないから想像できませんね。」
「ほほほほ・・・・そうでしょうねぇ。半年くらいは、無表情でね。私もラクスちゃんも心配したんだけど・・・特区に移り住んで、悟空くんと知り合ってから、普通に笑えるようになった。あの子、素直に表情に出るし、太陽みたいに明るいから、それに影響されたんでしょうね。それから半年は、毎日、遊びまわってたみたいよ? 」
「そうか、それで動物園の虎とも、そこで仲良くなったんだな。」
「え? 虎? 」
こんなことがありまして、と、ニールが動物園の虎の話をすると、あらまあ、と、カリダも大笑いだ。それを聞いて、リジェネは感心する。ニールは初対面のはずのカリダと親しく話している。カリダも、そうだ。共通点はキラだ。それが、こんなにも簡単に人間同士を繋ぐものであるらしい。
「リジェネちゃんは無口なのかしら? 」
「ああ、違うんです。人見知りなんですよ。慣れたら、うるさいですよ? 覚悟して? カリダさん。」
な? と、言われて、うーとママを睨む。別に五月蝿いわけではないのに、こんなことを言われるのはムカつく。
「ああ、そこの店がいいわ。混ぜれば、こちらの料理に早代わりするペーストもあるし。スパイスも豊富なの。」
作品名:こらぼでほすと 秘密8 作家名:篠義