こらぼでほすと 秘密8
一軒の店に案内されて、そこで、説明をしてもらいながら、いろいろな材料を買い入れた。気に入ったら、連絡すれば送ってもらえるようにパンフレットも貰った。炒め物やら煮物も、スパイスを変えれば味も変わる。これで、料理のレパートリーが増えるので、ニールも満足だ。他にも、あれやこれやと選んでいたら、とんでもない量になった。しまった、と、気付いたのは持てないくらいに荷物が膨れた瞬間だ。リジェネに持たせて、なんとか持てるなんて具合だ。そこで、カリダがすちゃりと携帯端末で連絡してキラとアスランを呼んでくれた。なんせ、食欲魔神の悟空だから、一度に作る量が生半可ではないからだ。
「これは、すごいことに・・・」
「送ってもらったほうがいいよな? アスラン。」
「大丈夫ですよ、ママニール。民間ではなくてカガリのを借りましたから荷物は、いくらでも積めます。それから出発時間はずらしました。カリダさんと食事してからに。」
とりあえず運びましょうか、と、キラにも持たせてクルマまで運ぶ。ちょうど、そこで時間近くになったので、リジェネを走らせてトダカたちの荷物が多いなら積んでしまおうと思ったら、大した量ではなかった。
「あれ? トダカさん、少ないですね? 」
「きみの亭主の土産だけだ。うちは、まだあるし。じじいどもが送るって言ってたから。」
ウヅミーズラブ一桁組から、いいのがあるから送ると言われているので、トダカは買わなかった。適当に保存食的なツマミを買ったぐらいだったから少ない。それはシンが持っていたので、それもクルマに積む。
「あと、店へのお土産ですか。」
「それは空港で、お菓子でも買えばいいさ。」
「アップルマンゴーは、どうします? ママニール。」
「うーん、欲しいんだけど・・・・できたらダース単位で。」
「そうよねぇ。悟空ちゃんだと、三つや四つは一度に食べちゃうでしょうね。」
「そうなんですよ、カリダさん。それに、留守番してくれてる悟浄さんたちにも渡したいし・・・そうなるとダース単位でしょ? 」
「でも、悟空が帰って来るのは三日後だよね? それなら送ってもらえば? てか、カガリに頼んでおけば完熟のおいしいのを送ってくれるよ? ママ。」
「あいつに送らせると、とんでもない量になるから怖い。それに、土産だから、俺が払いたいんだ。」
「じゃあ、フルーツショップから送りましょう。とりあえず、沙・猪夫夫の分だけ持ち帰ればいいんでしょ? 」
「かーさん、どこの店がいい? 案内して? 」
「了解。」
引き返して、それらを買ったら、ちょうど、お昼の時間だ。アスランが予約していた店で食事をする。騒々しくなるから個室にしてもらった。オーヴのローカルフードの店だったから、カリダに作り方を解説してもらいつつ、みんなで楽しい食事になった。
「シンが辛いもの好きなのは、元々が、こういう料理が多いからなんだな。」
「そうなのかなあ。プラントにはなくて、ものすごく餓えたから、辛いスパイスをふりかけて食べてたのが原因じゃないかな。あっちは、基本、洋食と中華なんだ。和食も、あんまなくてさ。」
「それなら、そう言えば送ってやったのに。」
「いや、あの頃は、まだ、とーさんのこともあんま知らなかったじゃんか。だから、言えなくてさ。今なら、一杯頼むんだけど。」
「ママ、辛いのばっかで、僕の食べるものがないっっ。」
「ああ、じゃあ、これは? 魚の揚げ物とか豚の角煮なんかは大丈夫だ。魚、骨があるぞ? 」
「とって。」
「はいはい。サラダもドレッシングを変えれば大丈夫だ。それは、自分で取りな。」
「うん。」
「うふふふ・・・ほんと、ママニールは甲斐甲斐しいわねぇ。そんなじゃ、ちっとも自分が食べられないでしょ? 」
「大丈夫だよ、かーさん。僕らが、あーんしてるんだ。」
「カリダさんの前でやるな。俺は、適当に食ってる。」
「うそつけっっ。キラさん、ねーさんの口に突っ込んで。」
やはり騒々しい。わーわーと騒がしいから個室でよかった、と、アスランは内心で思う。ニールが食べないから、口に運ぶのはいつものことだが、席を立ち上がるし、騒ぐし、とても人前ではできない所業だ。キラがフォークで指した角煮をニールの口に運んでいたりするし、シンもサラダを盛り合わせてニールの前に置いたりしている。食事のマナーからすると、かなり違反だ。だが、いつもが、こんななので誰も気にしていない。カリダにしても楽しい食事風景ではある。キラがはしゃいで笑っているのを見ると、ほっとするからだ。
「アスラン、ママニールは、いつも、こんなこと? 」
「ええ、自分が食べないで、人の世話ばかりするんで、キラやラクスが口に投げ入れてますよ。」
「そういえば、レイちゃんは? 」
「この休みはプラントへ里帰りしています。・・・そういえば、レイも口に投げ入れてます。レイにとって、ママニールは大事なママになったので。」
「そう、それは何よりだわ。また、レイちゃんにも逢いたいわ。アスラン、今度、オーヴに戻る時は連れてきてちょうだいな。」
「ええ、レイも残念がってましたから、また戻ります。」
アスランは、レイが里帰りした理由を知っている。だから、引き止めなかった。たぶん、レイも残念だと思っているだろうから、次回は何が何でも参加するだろう。飛行機の出発時間は融通がつくので、のんびりと最後まで食事できたのは幸いだ。
さて、寺で留守番の沙・猪家夫夫のほうは、とんでもない荷物に呆れていた。カガリから悟空宛に差し入れと称するものが送られていたのだが、これが大きな発泡スチロールの箱に五箱とくる。荷物名は食品。チルドなものもある。
「どうしましょう? 悟空が戻るのは、明後日です。これだけの量は冷蔵庫にも冷凍庫にも保管できませんよ。」
「とりあえず保冷は効いてるんだろ? 夕方にはママニャンが戻るから、それから要相談ってとこか。」
「うーん、冷凍モノが怖いですね。この陽気だと、夕方まで保つかなあ。」
いつもなら店で消費できるのだが、生憎とゴールデンウィークで休業だ。悟空がいなければ、量を減らすために食べるとしても、それほど量は捌けない。
「じゃあ、一端、店の冷蔵庫と冷凍庫に保存して、帰り道に立ち寄ってもらって、そこで仕分けするか? あそこなら、入るだろ。」
「そうしましょうか。疲れてるところ、申し訳ないですが。」
さすがに五箱は多い。しょうがないから、店に運ぶことにする。メールで、トダカとアスランに連絡を入れて、店に立ち寄ってもらうように算段はした。予定では、夕方だったが、アスランから、すぐに折り返しのメールが届いた。予定は、七時を廻るとのことだ。
「とりあえず、開けて中身を確認しますか。」
「そうだな。寺に置いてけるのは置いてけばいいな。」
他人の荷物だが、開けないと中身がわからないから、とりあえず箱を開けてみる。以前の差し入れと似たような内容だ。一箱が果物。ふたつは海産物。一つは干物なんかの塩干ものやら保存食ちっくなもの。最後の一つは部位別になった豚肉と牛肉だ。
「足が速いのは海産物だな。」
「てか、悟浄。これ・・・生きてます。」
作品名:こらぼでほすと 秘密8 作家名:篠義