こらぼでほすと 秘密10
さすがヴェーダの試算した提案だと感心した。確かに、どこにも瑕疵はない。あるとすれば、レイの気持ちなのだろう。肉体を棄てるという行為が、死への恐怖に直結している。だが、それさえ乗り越えれば、もう少し長く、このままの自分でママと暮らせるのだと思うと、なんとかなりそうな気はする。
・・・というか・・・これをやらなければ二年ちょっとで終わりだからな・・・・
送られたデータを、いろいろと自分なりに検証して出た結果は、やらなきゃ終わりだ、と、いうものだ。リジェネが怖がっているのは、ママの精神状態だ。以前のアレハレロストの時のように、完全に壊れてしまうと戻すには時間がかかるし、下手をすると壊れたままということになるかもしれない。あの時は、ティエリアが降下して、なんとか戻したのだか、それでも完全ではなかったのだろう、と、今は思う。確かに、ママは、どこかの回線が切れている。何が、という明確なものではないが、なんとなくレイにも気付けるようになってきた。これ以上に回線が切れたら、かなりおかしい人になってしまうだろう。リジェネにしたら、そこが問題だ。
だから、レイのため、というよりはママのために、レイの時間を延長する方法を考えてくれたのだろう。それには感謝する。
朝のうちに、レイが寺に顔を出したら、ハイネが戻っていた。ちょうど、ラボからの帰宅したところだったらしく朝だというのに風呂に入り晩酌していた。
「おう、レイ。おはよう。」
「ハイネは、これからホリデーか? 」
「ああ、ようやく留守番も交代だ。てか、俺が居ない時に限って、ダウンするバカのために、こっちに直帰だ。なあ? ママニャン。」
「文句は低気圧に言え。・・・おはよう、レイ。」
ハイネのための食事を運んで来たママは、すっかり元気そうだ。顔色も悪くないから、レイもほっとする。
「メシは? 」
「まだ、です。」
「了解。そこ、座ってろ。パンでいいな。」
レイの分も用意するため台所に引き返した。リジェネがいないので尋ねると、脇部屋でテレビ鑑賞中だという。それなら、と、脇部屋に、そのまま足を進める。昨日の提案は、緊急ではないとリジェネは言っていたが、レイは決めてきた。何もしなければ二年でママと逢えなくなる。足掻けるのなら足掻く。レイは最後まで、その時間に抵抗することに決めたからだ。
脇部屋の障子を開けたら、ごろ寝したリジェネがテレビを見ていた。内容は、朝のアニメだ。
「リジェネ、昨日の提案は受け入れる。」
「了解。じゃあ、素体の準備はしておくよ。調整とかあるから、二週間くらい時間を空けられる? 」
「今すぐの話か? 」
「ううん、素体を作るのに三ヶ月くらいは必要だから、八月以降。確か、アカデミーは夏休みってあるんだよね? 素体は保存しておけるから、別に来年でもいい。」
今が五月の最初だから、ざっくり計算すると八月ぐらいということになる。それなら、リジェネの言う通り、アカデミーは夏休みだ。七月後半から九月の最初ぐらいまでは休みだから、時間は空けられる。
「八月後半が最短だな。」
「それならオッケー。じゃあ、レイ。近いうちに皮膚と血液と髪の毛をちょうだい。イノベイドだけど、精巧に似せるなら素体の基礎は、それがいいんだ。」
「いつでもいい。今から、ラボでやってくるが? 」
「ああ、ダメダメ。今日は、悟空が帰って来て、ごちそうだから。明日以降にして。僕も、ごちそう食べたい。」
「じゃあ、明日。」
「僕、そのままヴェーダに上がって準備してくるよ。・・・・一日でよかったの? もっと結論には時間がかかるかと予想してた。」
「それしかないならやるしかない。ありがとう、リジェネ。感謝する。」
「きみのためじゃない。僕のママのためだ。」
「それもわかっている。」
ニールはヴェーダを掌握し、自由に使える。当人は知らないが、実際、ニールが望むことだから、ヴェーダの基幹となっているリジェネは手を差し伸べてくれる。ニールが壊れてしまったら、リジェネも途方に暮れるしかない。人間である限り、時間は有限だが、限界まで引き延ばすつもりなのだろう。そう考えると、日常担当のレイのママが、一番強いかもしれない。
「俺のママは最強だ。」
「当たり前でしょ? 僕らだけじゃないよ? 刹那もアレルヤたちも、ラクスも、みんな、ママの味方だもん。・・・・だから、この件はママには秘密なんだからね。絶対に。」
「わかっている。・・・・トダカさんとキラさんには告げておくことになるが、それでいいか? 」
「しょうがないね。きみの身体が、三年してもピンピンしてたら驚くもの。」
レイのことを知っている人間は何人かいる。そちらには、話をすることになるが、誰も漏らすことはないだろう。その知っている人間は、レイのこともだが、ニールのことも大切に思っている人ばかりだからだ。そして、レイはシンに告げなくてよくなったことに安堵する。シンだけは、レイの身体のことは何一つ知らない。どうしても、シンには言えなかった。対等に何も変わらない人間として、シンはレイと友人で居てくれた。これからも、その関係は変えなくていい。
坊主たちが寺に帰るのは、夜も更けた時間になる。そこまで夕食時間は延ばせないから、寺に居る人間は、いつもの時間に食事をする。冷蔵庫に大量にある食材を消費する必要があるので、ニールとレイで、せっせと料理を作る。カリダ推薦のペーストも使い、オーブの料理も作ってみた。それらを並べて、食事は始まった。
午前中に、ハイネにアッシーをさせて店までエビは取りに行った。その場でトダカに分解してもらって、持ち帰ったので、それらも卓袱台には並んでいる。こちらの食材と、そのエビをトダカにもお裾分けした。あちらはあちらでトダカーズラブのオーヴ組と本日は宴会であるらしい。いつもなら親衛隊と慰安旅行しているから、その代わりだそうだ。
ハイネは、今日から、しばらくは休みだ。ゴールデンウィークはラボの留守居をしていたからだ。ニールがオーヴ旅行に出て帰るところがなかったから、ラボの担当に志願した。
「ママニャン、今夜、俺と寝る? 」
「どっちでもいいぜ。リジェネも一緒だけど? 」
「はははは・・・華麗に二人の相手を俺がするとか? 」
「ママ、あれ、絞めましょうか? 」
「あ、ハイネ。ごめん、レイも一緒だから、おまえ、一人で寝ろ。レイは泊るだろ?」
昨夜、トダカとシンが寺に泊ったので、今夜はレイとハイネが泊ることになっている。リジェネの提案が事実になったら、トダカには、その時告げるつもりだ。
「はい、泊まります。明日も休みなので。」
「え? そうなのか。」
「アカデミーは明後日までゴールデンウィーク期間で全休講です。」
「宿題とかは? 」
「アカデミーに宿題はありません。まあ、予習はあるので明日は午後早くには帰ります。夏前に後期の試験ですから。」
「ママニャン、お代わり。子供ばっか相手すんなよ。久しぶりなのは、俺もだろ? 」
ハイネが、グラスをふってアピールだ。はいはい、と、そのグラスを手にして台所で手早く、お代わりを作ると戻って来る。
「お疲れさん、ハイネ。休みは、プラントにでも帰省するのか? 」
・・・というか・・・これをやらなければ二年ちょっとで終わりだからな・・・・
送られたデータを、いろいろと自分なりに検証して出た結果は、やらなきゃ終わりだ、と、いうものだ。リジェネが怖がっているのは、ママの精神状態だ。以前のアレハレロストの時のように、完全に壊れてしまうと戻すには時間がかかるし、下手をすると壊れたままということになるかもしれない。あの時は、ティエリアが降下して、なんとか戻したのだか、それでも完全ではなかったのだろう、と、今は思う。確かに、ママは、どこかの回線が切れている。何が、という明確なものではないが、なんとなくレイにも気付けるようになってきた。これ以上に回線が切れたら、かなりおかしい人になってしまうだろう。リジェネにしたら、そこが問題だ。
だから、レイのため、というよりはママのために、レイの時間を延長する方法を考えてくれたのだろう。それには感謝する。
朝のうちに、レイが寺に顔を出したら、ハイネが戻っていた。ちょうど、ラボからの帰宅したところだったらしく朝だというのに風呂に入り晩酌していた。
「おう、レイ。おはよう。」
「ハイネは、これからホリデーか? 」
「ああ、ようやく留守番も交代だ。てか、俺が居ない時に限って、ダウンするバカのために、こっちに直帰だ。なあ? ママニャン。」
「文句は低気圧に言え。・・・おはよう、レイ。」
ハイネのための食事を運んで来たママは、すっかり元気そうだ。顔色も悪くないから、レイもほっとする。
「メシは? 」
「まだ、です。」
「了解。そこ、座ってろ。パンでいいな。」
レイの分も用意するため台所に引き返した。リジェネがいないので尋ねると、脇部屋でテレビ鑑賞中だという。それなら、と、脇部屋に、そのまま足を進める。昨日の提案は、緊急ではないとリジェネは言っていたが、レイは決めてきた。何もしなければ二年でママと逢えなくなる。足掻けるのなら足掻く。レイは最後まで、その時間に抵抗することに決めたからだ。
脇部屋の障子を開けたら、ごろ寝したリジェネがテレビを見ていた。内容は、朝のアニメだ。
「リジェネ、昨日の提案は受け入れる。」
「了解。じゃあ、素体の準備はしておくよ。調整とかあるから、二週間くらい時間を空けられる? 」
「今すぐの話か? 」
「ううん、素体を作るのに三ヶ月くらいは必要だから、八月以降。確か、アカデミーは夏休みってあるんだよね? 素体は保存しておけるから、別に来年でもいい。」
今が五月の最初だから、ざっくり計算すると八月ぐらいということになる。それなら、リジェネの言う通り、アカデミーは夏休みだ。七月後半から九月の最初ぐらいまでは休みだから、時間は空けられる。
「八月後半が最短だな。」
「それならオッケー。じゃあ、レイ。近いうちに皮膚と血液と髪の毛をちょうだい。イノベイドだけど、精巧に似せるなら素体の基礎は、それがいいんだ。」
「いつでもいい。今から、ラボでやってくるが? 」
「ああ、ダメダメ。今日は、悟空が帰って来て、ごちそうだから。明日以降にして。僕も、ごちそう食べたい。」
「じゃあ、明日。」
「僕、そのままヴェーダに上がって準備してくるよ。・・・・一日でよかったの? もっと結論には時間がかかるかと予想してた。」
「それしかないならやるしかない。ありがとう、リジェネ。感謝する。」
「きみのためじゃない。僕のママのためだ。」
「それもわかっている。」
ニールはヴェーダを掌握し、自由に使える。当人は知らないが、実際、ニールが望むことだから、ヴェーダの基幹となっているリジェネは手を差し伸べてくれる。ニールが壊れてしまったら、リジェネも途方に暮れるしかない。人間である限り、時間は有限だが、限界まで引き延ばすつもりなのだろう。そう考えると、日常担当のレイのママが、一番強いかもしれない。
「俺のママは最強だ。」
「当たり前でしょ? 僕らだけじゃないよ? 刹那もアレルヤたちも、ラクスも、みんな、ママの味方だもん。・・・・だから、この件はママには秘密なんだからね。絶対に。」
「わかっている。・・・・トダカさんとキラさんには告げておくことになるが、それでいいか? 」
「しょうがないね。きみの身体が、三年してもピンピンしてたら驚くもの。」
レイのことを知っている人間は何人かいる。そちらには、話をすることになるが、誰も漏らすことはないだろう。その知っている人間は、レイのこともだが、ニールのことも大切に思っている人ばかりだからだ。そして、レイはシンに告げなくてよくなったことに安堵する。シンだけは、レイの身体のことは何一つ知らない。どうしても、シンには言えなかった。対等に何も変わらない人間として、シンはレイと友人で居てくれた。これからも、その関係は変えなくていい。
坊主たちが寺に帰るのは、夜も更けた時間になる。そこまで夕食時間は延ばせないから、寺に居る人間は、いつもの時間に食事をする。冷蔵庫に大量にある食材を消費する必要があるので、ニールとレイで、せっせと料理を作る。カリダ推薦のペーストも使い、オーブの料理も作ってみた。それらを並べて、食事は始まった。
午前中に、ハイネにアッシーをさせて店までエビは取りに行った。その場でトダカに分解してもらって、持ち帰ったので、それらも卓袱台には並んでいる。こちらの食材と、そのエビをトダカにもお裾分けした。あちらはあちらでトダカーズラブのオーヴ組と本日は宴会であるらしい。いつもなら親衛隊と慰安旅行しているから、その代わりだそうだ。
ハイネは、今日から、しばらくは休みだ。ゴールデンウィークはラボの留守居をしていたからだ。ニールがオーヴ旅行に出て帰るところがなかったから、ラボの担当に志願した。
「ママニャン、今夜、俺と寝る? 」
「どっちでもいいぜ。リジェネも一緒だけど? 」
「はははは・・・華麗に二人の相手を俺がするとか? 」
「ママ、あれ、絞めましょうか? 」
「あ、ハイネ。ごめん、レイも一緒だから、おまえ、一人で寝ろ。レイは泊るだろ?」
昨夜、トダカとシンが寺に泊ったので、今夜はレイとハイネが泊ることになっている。リジェネの提案が事実になったら、トダカには、その時告げるつもりだ。
「はい、泊まります。明日も休みなので。」
「え? そうなのか。」
「アカデミーは明後日までゴールデンウィーク期間で全休講です。」
「宿題とかは? 」
「アカデミーに宿題はありません。まあ、予習はあるので明日は午後早くには帰ります。夏前に後期の試験ですから。」
「ママニャン、お代わり。子供ばっか相手すんなよ。久しぶりなのは、俺もだろ? 」
ハイネが、グラスをふってアピールだ。はいはい、と、そのグラスを手にして台所で手早く、お代わりを作ると戻って来る。
「お疲れさん、ハイネ。休みは、プラントにでも帰省するのか? 」
作品名:こらぼでほすと 秘密10 作家名:篠義