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流れ星

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<旅立ち>
  「いってらっしゃい…。」

進に命令が下されたのはいつだったか…その命令書を作成しメールを送ったのはユキ。

  <古代 進、1年間、護衛艦艦長として第3区船団を任せる。>

ユキはその一文一句を何度も入力し直し送信したのを忘れられない。藤堂の配慮か偶然かユキが休暇の日、進が出航する日だった。

  「…行ってくる。」

ユキは笑顔だった。泣きたい気持ちだったが進に気持ち良く出かけて行ってほしいから。

  「私は大丈夫だから…島くんと一緒なんでしょ?」

ユキは進の前に島へ同じように命令書を送っている。島は輸送船団のパイロット兼艦長だ。人手不足の為兼任となっている。

  「あぁ。」

別の男の名前が出てきたので少し不機嫌な返事をしてしまった進。ユキは少し小首をかしげる(どうかした?)という顔だ。

  「…あ、なんでもないよ。タイタンに無事に着いたらちゃんと連絡するよ。二日間は
   何もできないからな。」

別の惑星に向かう時、重力など体を慣らすために2日間は休暇が与えられている。

  「ふふふ、そうね。おいしいモノでも食べてきたら?」

地球が復活した今も避難した人が留まっているので軍以外の施設も整っている。

  「あいつと二人でか?」

不機嫌そうな顔が更に不機嫌になる。ユキがクスクス笑っていると…

  「あいつ、って俺の事か?」

聞きなれた声が二人の耳に入った。

  「島」
  「島くん」

島もふてくされたように右手を挙げたがユキの顔を見てさわやかな笑顔になる。

  「俺だって古代よりユキと一緒の方がいいよ。」

島の言葉にユキはにっこり笑う。

  「古代、こうやってはっきり言ってやれよな。」

島はそう言うともう一度右手を挙げてゲートに向かった。

  「…あいつ、気を遣ったつもりかな?」

進は少し遠い眼でゲートの先を見つめる。




あそこを通ればしばらく会えない…





任期は1年。もちろん行ったままではない…が…





進は視線をユキに変える。ユキもゲートを見つめていた。



  (古代くんが地球に戻って来るのは2か月後…)

輸送船団はタイタンで資材を積み込み地球へ運ぶのが仕事。進の仕事はその輸送船団の護衛…まだ地球が復活して間もないから輸送船団を襲う連中はいないだろうがそのうち出てくる可能性がある。地球はガミラスの攻撃で地下資源が枯渇してしまった。その代替えとして太陽系の惑星から物資を運び入れる事にしたのだ。

ユキは藤堂と何度も会議に参加し今までの段取りを聞いている。進の仕事がどれだけ大事か、危険かよくわかっている。地球へ還ってきて一緒にいる時間が長くなった今、何も心配なく暮らしていたのにふたりでいる事が当たり前になってしまったからこそ、進がいなくなってしまう事に不安を覚えていた。

  (しっかりしないと…前に戻るだけじゃない)

ユキは心の中で自分を叱咤して進の顔を見た。











  「じゃ…行ってくるよ。」

進がゲートに認証カードを通し何度も振り返りながらその先へ消えた。



























作品名:流れ星 作家名:kei