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ベルベットブルー

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藍を責め立てる理不尽な感情を押し殺して、泣きはらした目で冷静を装って薫はすぐ目の前まで来る。
藍は、薫の言葉に表情一つ変えずに答えた。
「そうだね、でもどうしても今……やっておきたかったんだ」
まだ手に取ったままの、一輪の青いカーネーション。最後の一輪を棺に添えるタイミングを彼は逃していた。
「そう……ですか……」
棺に手向けられた何輪もの、花。
拙いような、けれどどこか美しいその光景に、薫はかける言葉を見失ってしまう。
この人形は、兄を大切に思っていたのだと痛感してしまったから。
瞬きを一度して、瞼が痛むのを感じながら薫は藍の隣に立つ。
藍は、何も言わず。
薫も棺を見つめたまま、特に言葉を発することはなかった。まるで時間を切り取られてしまったかのような沈黙がその場を包む。

二人に、共通点は棺に眠る彼しかなかった。
互いに互いの存在を知識として知ってはいても、わざわざ接点を持つような関係ではなかった。
つなぎ止めていた糸は、もう切れている。

切れている、けれど、切れた糸は近くに寄り添っている。

ふと、沈黙を破ったのは薫だった。
「ねえ、美風さん」
薫は、藍を見上げる。
翔よりも少しだけ背はあるが藍にとっては小さな青年を、藍は見つめ返す。その手にはまだ、花がある。
「翔ちゃんにもう一度会いたくありませんか?」
金髪の、翔と瓜二つの彼は揺らがぬ眼差しで、藍に確認を投げかけた。
「ショウはもう、死んだ、でしょう?…………どうやって、会うっていうの」
死んだ人間にはもう二度と会うことは出来ない。そう定義したのは他ならぬ人間だというのに。
薫は、藍の当然とも言える問いかけに、ふわりと微笑みを浮かべた。
微笑みかけられた人形は、まるで人のように背中に悪寒が走るような感覚を抱く。
「貴方が今生きているように、翔ちゃんの見た目と、人格をもったロボットを作るんです」
藍は絶句。
薫は続ける。まるで無邪気な子供のように。
「博士も第二段が欲しくなった所だって言ってましたし。社長もそろそろ別の切り口が欲しいってぼやいているって聞きました。なら、完全な美風さんの続編としてロボットなのに人よりも人らしい翔ちゃんを、作ってみませんか?」
完全な、という部分に悪意を感じつつも、それ以外の提案に……ロボットである彼ですらも、どこか恐ろしいと演算できる提案に、無表情のまま思わず口にしてしまった。
「カオル……それは幻だよ」
ショウではない。それはショウというモノではない。会う、会わないの話では、次元ではない。
死んだモノを生き返らせたい、よくある人間の感情ではない。それは、その考え方は。
「……幻でも、です」
幻を現実だと認識させる、想い、覚悟は。
「貴方が、協力してくれれば、早くに会えると思うんです。貴方のデータは、ロボットとして生きて、人の感情を持ち始めているらしい貴方がいれば……」
微笑みというよりも、虚ろに薄く笑っているような眼差しは、藍を値踏みするように見通す。
「カオル……キミは――」

――キミは、もう。

「貴方は、今翔ちゃんがいなくなったことを悲しんでくれている、なら翔ちゃんがもう一度笑いかけてくれることを望んでいますよね?」
青い、幸福の花を手向けながら涙を流すのならば。
「キミが思うそれは、ショウじゃない……」
首を横に振る、そんな反応すらも忘れ藍は否定する。確かに会いたいが、けれどそれは現象的に無理な話だ。自分が導いた答えが、幻だという答えが正しいはずなのに。
「分かっています。幻でも、僕は翔ちゃんがいない世界では生きていけない……翔ちゃんはこの世界にいなきゃいけない存在なんです」
「……」
「……協力、してくれますよね?」
いつか見た、博士と同じ。自分というフィルターを通してようやく現実に足をつけている人間の感情。目の前で広がる光景に、藍は狂気と呼ばれる感情、その原点を見いだす。機械が、人の奥深くを探す。

しばしの沈黙の中、演算と検索を繰り返すロボットは、手にしていた青い幸福のカーネーションを思い出した。
腕を上げて、花びらの部分を自分の口元に当てる。
当てながら、薫への答えを探す。
すがるように、泣きはらしたであろう目を向けながら願う人間。
翔の、弟。
その姿に、藍は一つの答えを出し、花びら越しに言葉を紡いだ。
作品名:ベルベットブルー 作家名:キッカ