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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 18

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第64章 一月に迫る破滅


 アテカ大陸、ギアナ村の隣に位置するアネモス神殿。
 神殿奥には玉座が置かれ、そこへ破壊神デュラハンが座し、傍らには彼の女である、スターマジシャン、シレーネが立っていた。
 煉瓦でできた壁に寄り添うように立つのは、デモンズセンチネルの称号を持つ剣士。そして、シレーネを師として、ウォーロックとなった、アレクスが玉座のデュラハンに跪いている。
「お初にお目にかかります。私はアレクスと申します。我が師より、デュラハン様のお噂はかねがね……」
「面を上げよ、アレクスとやら」
「ははっ……」
 アレクスは自らの髪から覗いていた、デュラハンへと顔を向けた。
 マーズ灯台での暴れぶりは、この神殿で見ていたが、実際に目にするデュラハンは、一回りも二回りも大きく見えた。
 傍らに控えているため、どうしてもシレーネが比較対照になってしまう。座っているというのに、高さはシレーネを超え、横幅も彼女が二人いてようやく、同じになるのではないかという程だった。
 センチネルと比べても、デュラハンはかなりの巨躯を誇っている。
「貴様の事はシレーネより聞いておる。ただの人間が、自ら進んで我のような悪魔の手先となるとは、酔狂な奴よ……」
 ははは……、とデュラハンは野太い笑い声を上げる。首がないため、本当に笑っているのかは、確かめられないが。
「私はこの世界から迫害されながら、生きてまいりました。大いなる力によって、私を迫害した世界へと復讐する、これが私の望み全てにございます」
「その力というのが、錬金術であった。そうであろう? だが、錬金術などなくとも、我の力を使えば、世界などすぐにでも粉微塵にできよう……」
 デュラハン、及びシレーネ達の目的は、ウェイアードを滅ぼした後に、無と化した世界へデュラハンが統べる真の暗黒世界を創造することであった。
 神、人間、エナジスト。こうした存在全てを廃し、魔物や悪魔の類が住む世界、それがデュラハンの目指す暗黒世界であった。
「アレクス、貴様が望むなら、貴様を魔の者に変えることも、我には容易い。どうだ、我より、魔の洗礼を受けるつもりはないか?」
 デュラハンは訊ねてきてはいるが断る事は、彼の者に消される事を意味していた。妙な事を言えば、アレクスの命はない。
 しかし、アレクスには既に、悪魔をも誑かす策があった。
「お言葉を返すようで大変恐縮ですが……」
 アレクスが口を開くと、デュラハンは少し身を乗り出した。首があったならば、恐らく彼は、怪訝そうに眉根を寄せていることだろう。
「デュラハン様、神になる心積もりはこざいませんか?」
 アレクスはニヤリと笑みを携える。
「我が、神に……?」
「アレクス、あんた一体何をいってるの!?」
「控えよ、シレーネ」
 デュラハンに咎められると、申し訳ございません、とシレーネは下がった。
「アレクスよ、なかなか肝の据わった事を言う。我にあの様な低俗な存在になれ、と申すとはな……。貴様の意図を聞きたい」
 デュラハンは食いついてきた。これを以てアレクスの策の第一段階は突破した。しかし、重要なのはこれからである。少しでもデュラハンの気に障る事を言えば、即刻死をもたらされるだろう。
 アレクスは、心を落ち着けて語り出した。
「かしこまりました。では私の意図する事をお話しいたします。私は何もデュラハン様に、かつてあなた様が根絶やしにした神々や、連れ帰って来たイリスのようになっていただきたい、と言っている訳ではありません。そもそも、あのような者達を神と呼ぶのはおこがましい、真の神とは唯一無二の存在、私はそう思うのです」
 まさにアレクスがなる事を夢見る事実であった。唯一神となり、地上を新たに創造する。これが彼を迫害した世界への復讐へと繋がっていく。
「唯一無二の神は、全ての生ける者の王でもあります。そしてデュラハン様は、それにふさわしいお力をお持ちです。私は、デュラハン様に神であり、また全ての存在の王になっていただきたいのですよ」
 復讐の為に、錬金術を復活させ、自らが神となる。アレクスはそのような野望をひとまず、デュラハンへと託し、デュラハンを討つ機を待つことにしたのだった。
 神、という言葉には興味が薄かったデュラハンであったが、王、と言う言葉は気に入ったようだった。
「我があらゆるものを統べる王となるのか。ふははは……! それは良い、破壊神などと呼ばれるよりは、大魔王とでも呼ばれる方が遙かに良いな!」
「大魔王デュラハン様……、ああ、なんと素晴らしい響きなのでしょう……!」
 シレーネは、全ての王になるデュラハンと、魔王の妃となる自らを思い、陶酔した。
 大魔王などとはよく言ったものだ、アレクスは思いながら、デュラハンの浅はかさを侮蔑していた。
「……つきましてはデュラハン様」
 良い気分になっている二人に、水を差さぬよう、気を付けながらアレクスは進言する。
「大魔王となられます、デュラハン様の存在を、ウェイアード中の人間に知らしめ、その後に人間どもを根絶やしにするというのは如何でしょう……?」
「何故そのような事をする必要がある?」
 デュラハンには、この進言の意味が分からない様子である。破壊神などと呼ばれている通り、全てを根絶やしにする事しか頭にないようだ。
 内心ため息を付きながら、アレクスは芝居を続けた。
「人間どもをただ抹殺する事は、デュラハン様の手に掛かれば容易いことでしょう。しかし、そのまま殺したところで、面白いことはございません。人間どもが阿鼻叫喚する中で殺していくのが、より一層支配者たるデュラハン様の地位が向上する、と私は考えるのです」
 デュラハンは笑った。
「ふはは……、なるほどな。人間を恐怖のどん底へ落とし込み、死を与えるのだな? それはかなり面白い殺戮となりそうだ。アレクスよ、貴様は悪魔より悪魔らしいな」
 この説明でようやく、デュラハンは理解に及んだらしかった。この悪魔には、世界のあらゆるものを統べる力など有りはしないだろう。精々、破壊の限りを尽くして全てを闇に葬る。
 デュラハンに新世界創造などできるはずがない、アレクスは考えるのだった。
 悪魔より悪魔らしい、という言葉には、少し引っかかるものがあった。自らを迫害した人間達に恐怖を与え、絶望の中死に絶えてもらいたい。アレクスにはそのような考えがあったので、そう言われるのも、仕方のないことであったのかもしれないが。
「ご理解いただけましたね? デュラハン様が大魔王となるには、まず、人間達に恐怖と絶望を与えるのです。彼らを十分恐怖に陥れたところでなぶり殺してゆくのです。するとどうでしょう、これは最高の快楽となり得ます」
 ウェイアード中の人間を恐怖に陥れる事で、アレクスはデュラハンがすぐに手を下さぬよう、時を引き延ばそうとした。
 彼の者を打ち倒す者は、ロビン達か、それともデュラハンに復讐を誓うセンチネルか。何れにしても彼らに時を与えることは最重要である。