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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 18

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 まさにイワンの脳と、相手の脳を文字通り繋いでいる。『ブレイン・コネクト』とは、最早最強のエナジーの一つと言っても遜色ないものだった。
「どうした、来ぬのか? どうやら策を練っているようだが、全て我には分かる……」
 イワンは挑発するように言うと、シンは攻めかかってきた。
 一直線にイワンへと向かっている。その様子はまるで、無策で特攻している様にしか見えない。
 イワンの脳へ直接届いてきた、シンの思考は、何の手も加えられていない。まっすぐにイワンへと攻めることだけしか考えていなかった。
「最早万策つきたということか……、では死ぬがいい……!」
 イワンは電撃を矢のように、撃ち出そうとした。
 シンとの間合いが近づいた、その時だった。
「っ!? 何だ、この思考の量は!?」
 シンから流れてきた考えは、予想を遙かに上回っていた。
 正面、右、左、回り込んで背後に、回り込んで左右どちらか、そして飛び上がって頭上から。
 瞬時に何択もの選択肢が頭に流れ込み、イワンは一瞬、全く身動きが取れなくなってしまった。
 結局、シンが選んだのは、それらのどこからでもなく、イワンの目の前でもう一方の剣を抜き、引き下がるという答えであった。
「なるほど、これは、使い手を相当選ぶエナジーみたいだな」
 シンは得意そうな顔をしてみせる。どうやら、イワンのエナジーを打ち破る方法を見いだしたらしい。
「貴様、一体何をした……?」
「何もしちゃいないさ。ただお前に考える時間を長めにくれてやってるだけさ」
「考える時間、だと……?」
「そう、一瞬じゃ分からないからな。さあて、次で決めるか。次はとんでもない数の選択肢が出るぜ、お前に正解が選び出せるかな……!」
 シンは先ほど同様、イワンの正面から、それも今度は速さも増して攻めかかった。
 そして同時に、多方向からの攻撃の選択肢を、脳裏に浮かべる。
 イワンは脳に流れ込んでくる、シンの思考に圧倒された。まるで四方八方、天と地、全方向から攻め来るような思考を、シンはしていた。
「どこだ!? 一体どこから来る!?」
 イワンは混乱しきっていた。
 無限とも思えるシンの選択肢の正解が分かったのは、シンがイワンの首筋に、冷たい刃を付けたときだった。
「何だと……」
 イワンは思いも寄らない方向から刃を付けられ、ビクッ、となった。
「残念、正解は、突進した後に跳躍し、上から来ると見せかけてただ着地して、そこから振り向いて刃を向ける。でした!」
 シンは、なぞなぞ遊びでもしているかのように、面白そうに笑った。
「がっ……」
 イワンは延髄を打たれ、気絶した。イワンの意識がなくなったことで、エナジーは全て解除され、部屋の出入り口に張られた電流の結界も、消え去った。
「扉の電撃が消えたぞ!」
 ガルシアはいち早く気づき、叫んだ。
「シン、聞かせてくれ。どうやって人の頭を開いて見てるようなイワンを騙せたんだ?」
 ロビンが訊ねると、シンは部屋の中心付近に歩み寄り、皆に聞こえるよう、種明かしを始めた。
「イワンのあのエナジー、イワンの脳とオレ達の脳を直接結びつけて、考えを読めるってのは、みんな分かるはずだ。現に、みんな心を読まれたんだからな」
 シンは例のエナジーを最強の一つとした。
 しかし同時に、イワンの最強を誇るエナジーの最強たる所以が、そのエナジーの最大の弱点となり得るとも言うのだった。
「エナジーをかけた相手の思考の根元を読み取れるとも言っていたな。こいつは、相手がまだ完全に意識していない、思考の欠片、とでも言っておこうか、そいつも読み取ることができるんだ」
「思考の欠片……、つまりはこちらが何か考え始める前に、イワンはそれを読むことができるというのか?」
「その通りだ、ガルシア。一見すると、それはとんでもない力だが、逆に、同じくらいの弱点があるんだ」 そうした弱点を突くことで、逆に裏をかいた反撃ができるとの事であった。
「あんなにすごいのに、どこに弱点があるんだ?」
 ロビンは言われても、今一つピンと来なかった。
「オレが言ったことを思い出せ。イワンは相手と自分の脳を直接つないでいるんだ。そうだな……、じゃあ、こっちが考えることを水だと思ってくれ」
 脳と脳を直接結びつけているせいで、相手の考えは全てイワンの脳にも流れ込んでくる。そう、シンの言う通り、まるで筒を通して流れる水のように、だ。
「流れてくる水が、処理できる範囲なら、対応できるだろうが、滝のように流れてきたらどうだ? 何もかも全部流されてしまうと思わないか?」
 ロビン達はついに、シンの意図している事が理解できた。
 一定量の水を流す筒に、氾濫した川の水のような勢いと量の思考が一気に流れ来れば、筒をも巻き込み、イワンという堤防が崩壊する。
 シンは自らの思考を、そのような激流の水ようにぶつけ、イワンの作る堤防を破壊したのである。
「なるほど、イワンはシンの持つ、大量の考えに混乱したのか!」
「ああ、何択もの選択肢を与えてやったさ。でも……」
 今回はうまく行った。しかし、イワンがもしも、シンの速さに着いていけるほどの力があれば、シンの動きを読むことができた。
 シンが、『ブレイン・コネクト』が人を選ぶエナジーとしたのは、使い手によっては大量の思考を捌ききれず、混乱に陥ってしまうからであった。
「もし、イワンが憎しみに包まれていなかったら……」
 シンは気絶し、横たわるイワンを抱き抱えながら呟いた。
 イワンが冷静な状態でいられたのなら、読まれていたのかもしれない。恨みに視界が狭められていなければあるいは。
 ふと、ドカッ、と音を立てて部屋の扉か開いた。
 出入り口の結界に四苦八苦していたハイドロの衛兵が、封印が解けたことに気付いて救助に来たようだった。
「ハイドロ様! お怪我はございませんか!?」
 衛兵は必死な様子のまま、唾を飛ばしながら叫んだ。
「私は問題ない、それよりもこの者達を。私のせいで心労している、休ませてやってくれ……」
「ハイドロ様が? 一体何が?」
「何も言うな、早く連れて行くのだ」
「ははっ!」
 ハイドロの様子がおかしいことに疑問を抱きながらも、衛兵は言う通りにした。
 衛兵は気を失ったイワンを預かり、別室へと運んでいった。シンとイワンの戦いの間中、ずっと震えていたジャスミンも衛兵により、別室へ行くことを促した。
「構わない、俺がジャスミンを連れて行こう」
 まだ震えの止まらないジャスミンの肩を支えながら、ガルシアは妹と共に部屋を後にした。
 衛兵の腕から僅かに覗く、イワンの顔を見ながら、ハイドロは言う。
「イワンの力、なんと恐ろしい。だが、あれならば……」
「ハイドロ様?」
 ロビンはハイドロの呟きを全ては聞き取れなかった。少し追求するも、ハイドロは何も言わない。
「……いや、何でもない。私もエナジーの使いすぎで疲れた。君達には客間を貸す。そこで自由に休んでくれ……」
 ハイドロは、先の得体の知れない恐怖体験からようやく解放され、疲れを見せていた。
「あ、ありがとうございます、ハイドロ様」
 仲間を代表し、ロビンが礼を言う。仲間達も後に続いた。