彼女は超新星
彼を押さえつける厚みのあるスーツらが雨でふやけて溶かされていく。
滲むように景色を変えた煙い灰色の世界で、彼は立ち上がり、自ら動き出す。
行く手を阻む白い靄を引きはがして、彼は目を凝らす。
何処だ、何処に、何処へ。
靄を殴って、蹴って、腕を揮って、叫んで、掴んで、投げて、叩いて、弾いて、突き飛ばしたその先で、彼は犬の変わった鳴き声に導かれて、一つの一際濃い靄にたどり着く。
彼はまっすぐ腕を伸ばして、靄の中に腕を突っ込んで何かを抉り出す。
そこから彩が充ちて、若葉が芽吹き、空は青く、雲は白く、血は赤く、灰色だった世界が色を取り戻す。
そうして彼は気づかされる。自分の世界が色を失っていたことに。
そうして彼はまた、気付く。自分の世界は元々昔は色づいていたことに。
遠く薄暗かった光も徐々に近づき、輝きを増す。いや、その輝きは失われていなかった。自分たちがその位置を気付けていなかっただけなのだ。
彼は地に立つ。光に充ち、色で溢れた彼の世界。彼の中の綺麗なものも気づきたくなかったものも平等に公平に光と色を与えられた世界。
新しい力を身に纏い、彼は誓う。
そして彼は改めた覚悟を背負って、生きた盾となる。
彼の主君を庇い、彼の主君の下へ馳せ参じ、彼の主君の下にある生徒を守る盾となった。
そして彼は思い出した。
いつものように親友のために飛び出して危険な相手に噛みついた少女を庇って、彼は刺され、倒れたのだと。