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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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蒼雪は、足下に転がる氷塊を、異形の群めがけて蹴り飛ばす。黒い影は一瞬散り散りになるものの、直ぐに密集して、じりじりとにじり寄ってきた。
どれだけの時間が経ったのか、何体倒したのか。考える間もなく、波のように異形は襲いかかってくる。
ふらつく足に活を入れ、再び氷塊を投げつけた。霧散した異形の群は、しかし密集することなく、バラバラに襲いかかってくる。

「しまっ・・・・・・!」

その瞬間、背後から悲鳴が響いた。振り向けば、サイレンスがいたはずのところに、黒い影がうごめいている。無数の異形にたかられ、髪の一筋すら見えなかった。

「サイレンス!」

駆け寄ろうと踏み出したところを掬われ、蒼雪は背中から倒れる。だが、倒れ込んだのは地面ではなく、

「紅葉! サイレンスを!」

ジェネラルの声に、紅葉が応える。うごめく影は、瞬時に鮮やかな緋色の葉へと姿を変えた。立ち上がろうとする蒼雪を、逞しい腕が絡めとる。

「動かないで。これ以上は危険だ」

耳元で囁く声は、直ぐに別の指示を飛ばした。

「シザーズ! 追わなくていい! 重傷者二名! うち一人は神の子だ! 直ちに救護活動に移れ! これ以上の戦闘行為は禁止する!!」

紅葉の他に、シザーズとパンジーがサイレンスに駆け寄る。紅葉の腕に抱き止められたサイレンスの腕が、だらりと落ちた。

「大丈夫。まだ息はある。二人ともね」

ジェネラルの言葉が意味することに気づき、蒼雪はのろのろと顔を上げる。場に似つかわしくない穏やかな笑みが、視界に映った。

「心配ない。二人とも助かるよ」

他の人形達も駆けつけて、周囲が慌ただしさを増す。蒼雪は、サイレンスと少女が板の上に寝かされるのを見届け、意識を失った。