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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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 俺が十九歳になった時だった。



 クリスマスイブの日。
 俺はその夜に家を出た。家族には人と用事があると言って出てきた。……変な勘繰りをされてしまったがまあいい。俺に恋人なんていない。
 ともかく、俺は自宅から遠く離れた広場へと足を運んだ。そこで、今日この日しか出来ない術式を展開するために。両親を、取り戻すために。
 広場に着いた俺は隠し持っていた本を片手に、慣れない動作で山羊の血液の混ざった蝋―血蝋で魔法陣を書いていった。さらにその魔法陣に俺の指を少し切って出した血を一滴ずつ、計五点に注いでいく。
 そして手を合わせて俺の中にある思いの力をありったけ注いでいった。そのまま注ぎつづけること数分。
 午前零時ちょうど。日付が替わり、クリスマス当日となった。
 セント・ニコラス、いや、サンタクロースが活動を始めると同時刻。魔法陣が光りだし、禁呪が発動した。
 光を遮るためのバリアと人払いの魔法は予めかけてある。
 あとは、この禁呪によって力を手に入れるだけ。何を失っても構わない。俺の体も、心も、申し訳ないが家族だって差し出せる。
 俺はそんな思いで臨んでいた。
 その時だ。俺の体の中に何かが入り込んできた。俺何がなんだかわからなくなっていた。
 それもそうだ。
 入り込んできたものは魔力。強大で純粋な、魔法を使うための力だ。
 これが禁呪によって手に入るものだ。
 俺はそれを一瞬で理解した。理屈ではない。感覚で理解していた。儀式が終わろうとしていることもまた、知覚していた。
 儀式が終わり魔法陣の光が消えた瞬間、俺はその場に倒れ込んだ。膨大な魔力を受け入れ、それに伴って体力気力共にほとんど失ってしまったからだ。
 俺はそんな状態でもなお笑っていた。これで俺は、夢を実現できる。そんな気分だった。
 試しに力を使ってみよう。そう思って魔力を練ろうとした時だ。
「……あれ……?」
 まずは体力を回復する魔法を使った。しかし一向に体力は回復しない。
 他にも色々な魔法を使ってみた。だが何も起こらない。
起こる気配すらない。……いや、そもそも魔力の変換すら出来ていないのだ。
 それで俺は理解した。
「魔法を行使するための力を失った……?」
 若いなりに考えた結果だったが、それは的を射ていた。
 そしてもう一つ理解していたこともある。先程血を垂らすために傷つけたものが跡形もなく消えていたのだ。
 今まで色々な術を使って血を流していたが、そんなことは一度もなかった。
 俺は残った体力を使って体を傷つけてみた。するとみるみるうちに治っていく。どんなに大きな傷でも、少し時間が経てばすぐに修復されていた。
 そしてこれも理解した。
「俺は、死ぬことも出来なくなってしまったのか……?」
 だが、死ぬことだけではない。老いることも出来なくなっていたのだ。
 それが、この禁呪における代償だった。
 <最後の贈り物>。つまり、死という対価を元にして大きな力を得る。言わば、自分自身に掛ける呪いだった。
 俺がそこまで理解したのは、三年後の事だった。



 禁呪を行使してから三年後の誕生日。
 俺はこの日を境に成長を止めて研究に没頭すると家族に伝えた。理解のある人達ばかりだったため、得に咎められるような事はなく受け入れてくれた。
 そしてそれと同時に家を出た。流石に禁呪を行ってなにやらわけのわからないものを体の中に持ってしまった身だ。
 流石に家族に迷惑を掛けるわけにはいかない。そう思って家を出た。
 皆はいつでも帰って来いと言ってくれた。内緒にしてはいるがこんな俺をだ。一瞬泣きそうになってしまい堪えるのが大変だったのはよく覚えている。俺は皆の言葉を背に家を出た。
 その時には既に、実の両親に対する思いは失っていた。まるで自身の唯一の取り柄であった魔法を失ったように。
 そして独自の研究をして魔法陣を使っての魔術行使を編み出し、何年かけたか忘れたが世界放浪の旅に出たのだ。その過程でエリーと出会い、リッカとともに王立魔法学院への誘いを受け、今に至る。



   ◆   ◆   ◆



「……というわけだ」
 何時間経っただろうか。既に日は傾き、俺もカレンもカップの中身は空になり乾いてお茶のあとが残っていた。
 ……そういえばカレン、俺が最初に入れた分しか飲んでないような……。
 まあいい。
「……割と話折りましたね?」
「まあ、そりゃな。全部話したらホントに今日が終わっちまう」
 正直リッカとかエリーとかとの出会いなんてどうでもいいし……。そもそもカレンに話したくなかったのかもしれない。
 いや、今俺がカレンと付き合ってる時点での主観だけど。
「ですが、にわかに信じがたいんですよね……」
 だろうなぁ……。いや事実だけどさあ。中身がフィクションじみてるんだよな……。俺が言うのはあれだけどさ。
 仕方ない。
「そこまで言うなら証拠を見せてやろう」
 俺は着ていた制服を脱いだ。
「ちょっ、ユーリさん!?何やってるんですか!」
 頬を染めながら顔を隠すカレン。うむ、やはり可愛い。
「何言ってんだよ。上だけだよ」
 そう言った俺は上半身だけを裸にした。
「見ろ、これを」
 恐る恐るカレンは手を退けて俺の体を見た。
「……これは……?」
 カレンの目に入ったもの。それは―。
「魔法陣……ですか……?」
 ―背中に大きく鎮座する一つの魔法陣。そして全身のありとあらゆる場所に存在する小さな魔法陣。
 カレンはそれを大きく目を見開いて見ていた。
「そうだ。この背中のでかいのが大元で、俺の中にある魔力を変換して練り上げる役割を持っている。そんで、他の周りの奴が色々な魔法を使うための魔法陣だ。空間移動、物体浮遊他にも色々」
 俺は魔法陣を指差しながら説明した。
 まじまじと見つめるカレン。
「あの……これ……」
 カレンは指で魔法陣をなぞる。どうやらカレンは気づいたようだ。
「これ、ただの入れ墨じゃないですよね……。なんか、赤いっていうか、赤黒いっていうのか……」
 観察眼はいいらしい。ふむ、研究職に向いてるかもな。
 おっと、そんな話は今はしていない。
「そうだ。こいつは俺の血だ。俺の血を使って入れ墨してるんだ。……もっとも、入れ墨した奴はもう死んだけどな」
「血陣……ですか……。逆にこうしないと魔法が使えないんですか」
「正確には魔術だ。……まあ、大差はないか」
 魔法と魔術の違いは、そのプロセスにある。魔法はワンドや各マジックアイテムなどを使って魔力を練り上げて行使するものだ。対して魔術は魔力を練り上げること、それを使って魔法を行使することすべてに専用の魔法陣が必要となる。
 つまり、万人が使いやすいように簡略化された式を使うのが魔法で、魔力の扱いがつたなく簡略式がうまく使えない人が使うのが魔術と考えてもらっていい。
「だから<失った魔術師>……ですか」
「そうだ。膨大な魔力の代わりに魔法や色々な物をを<失った>元魔法使い。それが俺の二つ名の由来だ」