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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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 ……俺がカテゴリー5なのは、何も強力な魔術が行使できるだけではない。その元である膨大な魔力を完全に支配下に置き使役することが出来るところが、俺が俺たる所以である。またその魔力を行使するための魔法陣開発を独自で編み出したこともまた、カテゴリー5になったことに関係している……と思う。正直、禁呪によって手に入れた仮初の力でカテゴリー5に選定されるなんて皮肉な話である。
「なるほど……。てか、もういいです」
 カレンは俺に上着を渡してきた。流石にもう十月半ばとは言え夜だ。少し寒くなっていたところだった。
「すまんな」
 俺は渡された上着を素早く着て元の場所に座った。
「……まあ、なんとなくわかったか?」
「とりあえずは。ですが、一つ聞きたいことが」
「なんだ?」
「二百五十年も生きてて、辛くないですか……?」
 カレンは少し静かに言った。まるで弱者に慈悲を向けるような目で。母親が子供に向けるような優しい声で。
「……もう慣れたよ。俺の魔力は切れることがない。それが切れなければ死ぬことは出来ない。それが理解できた時点で、吹っ切れたよ」
 俺は内心を悟られないように冷静な声色で言った。しかし本当は―。
 ―誰かに看取られながら、自然に老いて死にたい。
 それが俺の今の夢だった。叶わぬ夢と知りつつも、諦めることはまだ叶わなかった。
「……そうですか」
 どうやらカレンは俺の心を読んだらしい。感覚で分かってしまった。だがカレンは、俺にその事実を伝えることはなかった。
「……それで、この魔導書やら禁呪に関する本達ってことですね」
「ああ。もともと俺のだし、あんま目は通してなかったがな」
「えっ、これが?」
 俺は静かに頷いた。
「俺の物とは言え禁呪に関する物ばかりだったから、流石に貸し出しだけかと思ったんだがなぁ……。まさかくれるとは思わなかったよ」
 この辺はエリーに感謝である。俺も信用されてるって事だよな。本人は今イギリスにいないからあとで謝礼でも送っておこう。
「女王様も太っ腹ですね」
「そうだな。……そうだ、見るか?」
 俺は一冊をカレンに手渡す。
「いいんですか?禁呪に関する本ですよね……これ?」
「これはただの魔導書だから大丈夫だ。まあ、俺の秘密の口封じということで」
「私は理解がある方ですからみだりに話したりしませんよ。ですが、これはありがたく」
 カレンは俺から本を受け取り読みはじめた。
「……なんですかこれ。読めるには読めますけど、書いてあることがちんぷんかんぷんで……」
 そりゃそうだろうな。中に書いてあるのは、俺の故郷で独自に開発された魔法術式。多分リッカやエリーでもそこそこしか理解できないだろう。
「……でも、面白いことが書いてありますね。今では失われているような技術、魔力の底上げに関する事などなど。今の魔法使いからしたら眉唾物ですよ」
「そこまで読み解けるのか。お前、意外と研究職とか向いてるんじゃね?」
「……嫌ですね……それ。実は、アルペジスタ家の書庫の中に魔導書とかそれの読み方の本などがあってそれをよく読ませてもらっていたので、ある程度は読めます」
 俺は舌を巻いた。拾われた身とは言え、扱いは実子並だな。普通はそんな物までは見せてもらえないと思うのだが。
「どうやら義兄(あに)達は魔力係数が弱く、私に期待がかけられているようなんですよ。いい迷惑ですけどね」
 そうは言いながらも嬉しそうだ。やはり実子と同じ様に愛されて嬉しいのだろう。
「まあ、こんなことで義兄達から嫌われたりするような事がなくてよかったですが」
 兄弟仲は良好か。いいことだ。
「なるほど。逆に期待がかけられてるってか」
「……はい」
 地雷だったかー。
「……まあ、その……なんだ。頑張れ」
「……はい」
 そうこうしているうちに既に夜七時。俺達は揃って食堂へと赴いた。
「あら、会長ではありませんか」
「今お前には会いたくなかったよ、巴」
 予科二年の生徒会役員の一人、五条院巴だ。大体彼女も晩飯を食べに来たのだろう。
 だがここでは会いたくなかったよ。
「それと、予科一年のカレンさんかな」
「はい。五条院さん」
「巴でいい」
「では私も呼び捨てになさってもらって大丈夫です、巴さん」
「そうか。ではカレン」
「なんですか?」
 巴はカレンをじっと見据える。その目は何かを計ろうと真剣な瞳をしていた。俺はその様子を見守る。カレンもみじろぎせず巴の目を見ていた。
「なぜ、会長と一緒にいるんだ?もしかしてデキたのか?」
「いや、俺とカレンはデキてなんか……」
「では、何かあったのか?」
 俺の反論を軽くいなし、巴はカレンに問い詰める。大丈夫か、カレン……。
 俺は少し心配になってきた。顔には出さないが内心焦っていた。……まあ、その焦りは無駄な物だって知ってるけど。
「……すみませんが」
 しかしカレンは俺の予想を軽く越え、心配などなかったことにしてくれた。
「すみませんが、守秘義務がありますので、詳しくはユーリさんに聞いてください」
 ……どうやらいらん心配だったようだ。だが、少し訂正もしてやらないとな。
「悪いな、カレン」
「はい?」
 カレンはかわいらしく首を傾げた。
「実はな、知ってるんだよ、巴も」
 カレンは目をぱちぱちさせて聞き返す。
「何をですか?」
「だから、俺の出生について」
「誰がですか?」
「巴が」
「……どれくらいですか?」
「今日お前に話したこと全部」
 刹那、カレンはがっくりと肩を落とす。
「だったら早く言ってくださいよ……」
「いや、巴が勝手に仕掛けたことだし」
「ですが、会長もノってましたよね」
「ちょっとしたアドリブだ」
 俺は目を反らして言った。
「まあいいです。それより、巴さんもご飯一緒にしませんか?」
「そうだな。少し会長とも個人的にあるし」
「個人的ってなんだ」
 とりあえず自分の分の食事を取り席に座った。
「ちなみに、どれくらいの人が知ってるんですか?」
「ああ、俺もそんなに話さないからな。長いし面倒だから」
「それでも、現生徒会役員と学園長が知っているくらいだ」
「じゃあ、あとはリッカさんとシャルルさん、それと学園長が知ってると?」
「おう」「ああ」
 俺と巴はそれぞれの言葉で肯定した。
「……二つ上に<失った魔術師>がいるってだけで驚きなのに、一つ上に<孤高のカトレア>までいるなんて……」
「まあ、気にしたら負けだ」
「そうだ。他にも君みたいに素性を隠して入学している奴だっている」
「あれ、そうなんですか?」
 おっと、口が滑った。俺は一つ咳ばらいをして告げる。
「……まあ、なんだ。ここだけの話だが、俺やリッカみたいにおおっぴらにカテゴリー5だって知られてるような奴もいれば、どっかの誰かみたいに意図して隠そうとしてる奴もいるってことだ。それくらいは察してやれ」
「そうですね。魔法使いなんてそんな人達で埋もれてますしね。本当におおっぴらに出来るのは会長やリッカみたいな有名人だけですから」
「はい」
 カレンは短く返事をすると俺に目配せをしてきた。おそらく、『私の事言わなくていいんですか?』とでも言いたげなのだろう。だから俺は『お前が秘密にしてるんだろ?