D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~
だったら話す理由はない。お前が俺の事黙っててくれてる限りはな』と、返してやる。
「……ありがとうございます」
小声で何か言った気がするがよく聞こえなかった。
「何か言ったか?」
とりあえず聞き返してみるが。
「なんでもないです」
なかったことにされた。よくわからん。
その後全く関係ない話をした後、俺達は食堂を後にした。
「……あの」
俺の部屋へと戻る道中の事だ。不意に、カレンが俺の服の裾を引っ張り、呼び掛けてきた。
「なんだ?」
俺は立ち止まって話を聞いた。
「えっと、私もあの魔導書、もう少し読み込んでみたいんです。なので、もう少しの間だけ、お邪魔させてもらってもいいでしょうか」
………………。
流石に、勉強したいといっている少女の頼みを無下に出来るわけがない。俺はそんな感情と、そしてもう一つ別の何かに突き動かされ……。
「ああ、いつでも来い。ダメな奴以外はいくらでも見せてやるよ」
思わずそう答えていた。カレンは一瞬意外そうな顔をし、すぐに笑顔になった。
「ありがとうございます!」
こうして、俺達の奇妙な関係はスタートした。……思えば、このとき既に彼女に惚れていたのだと思う。理解したのはまだ先だけど。
作品名:D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~ 作家名:無未河 大智/TTjr