二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

INDEX|25ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 

 ……一応、予想はしていた。今のイギリス……いや、全世界で魔法使い達は忌み嫌われている。ハンムラビ法典に、「目には目を、歯には歯を」という言葉があるように、"魔法使いには魔法使いを"が議会の考えなのだろう。だが魔法使いをそんな事で犠牲にしていいわけがない。
「……宮廷魔術士は何て言ってる」
「"女王にお任せします。私たちは貴女の命令にしたがいます"だそうよ」
「忠誠心は高そうだが……」
「どちらかというと貴方とリッカさんの方がたよりになるわ」
「……それお前が言っていいのかよ」
 ……ともかく。
「俺達は上の決定にしたがうまで、か」
 俺はシェルを取り出し、ある人物に連絡をとる。
「俺だ。……ああ、女王の勅命として、学園長室まで来てくれ。……あと、葵も一緒にな」
「もう、私の名前を勝手に使って」
「いいだろ。どうせこれは、"俺達"の領分だ」
 俺とエリーは不適に笑む。数分の後、彼は来た。
「スタヴフィード殿、ご機嫌麗しゅう。……そして、陛下」
 彼は深々と頭を下げる。
「あの、杉並さん、ここにいる人達ほとんどがへい……学園長さんの事を知らないのでは?」
「ふむ、それもそうか」
 ……この自由人めが。杉並は入ってくるなり早速やらかしおった。……まあいいが。
「あーっ、杉並!何しに来たのよ!」
 杉並を発見したリッカが大きな声をあげる。
「許せリッカ。エリーからの御達示にこいつが必要なんだ」
「……まさか、例の組織にでも協力してもらうつもり?」
 俺は静かに頷いた。
「……まあ、それくらいの事だものね」
 とりあえずリッカは落ち着いてくれたようだ。
「あれっ、葵ちゃん?どうして……」
「清隆さん!えっと、それはあとでユーリさんが話してくれますよ」
「どういうこと?」
 ……こちらはこちらで面倒臭そうだ。さて、出来ればカレンは関わらせたくはなかったが、やむを得ない。
「おーい、現役員諸君、聞いてくれ」
 俺は手を叩いて注目させる。もちろん予科一年である清隆とイアンも例外ではない。
「えーっとだ。とりあえず、聞いてほしい事がある。んじゃ、エリーよろしく」
「わかりました。では、大事な事なので聞いてください」
 エリーが事の顛末を話し出す。……まあ、あの事も話さないといけないわけで。
「でも、何で学園長が指揮をとるんですか?そんな大事なら、女王陛下が直接指揮を取られた方がいいのでは?」
 いい着眼点だ、清隆。だが、お前には一つピースが足りなかったな。俺、リッカ、シャルル、巴、杉並、葵は、互いに目を合わせる。
「……見方はいい感じだ清隆。でもな、女王はここにいるんだよ」
「えっ?」
「だから、ここにいるだろ?」
 俺はエリーを指差す。そのエリーはニコッと笑っている。そんな状況じゃないだろうが今は仕方ない。
「えっ、えええええええ!!!!」
 そして清隆は俺の思ったとおりの反応をしてくれた。……いや、それ以上か。ちなみに、他の役員達も言葉に出さずとも驚いていた。無論カレンも同様だ。
「まあ、驚くのも無理はないわ。彼女、これでも―」
「リッカさん!」
「むぐっ」
 ……公にしてはいけない事実をリッカが口にしようとしたため、エリーが物理的にその口を塞いだ。
「……まあ、だいたい言いたい事の予想は着くのでいいんですけどね……」
 清隆が呆れたような顔をする。
「……というわけだが、だいたい理解出来たか、清隆?」
「はい、とりあえずは。……まだ半分しか信じられてないですけどね」
「魔法ってのはそういうもんだ」
 俺は強引にまとめた。そして杉並が口を挟む。
「と、いうわけもあり、我々非公式新聞部もお呼びに預かったというわけだ」
「そういうことです!」
「……あれ、じゃあ、葵ちゃんがいつかに言ってた事って……」
「事実ですよ。ホントの事だって言ったのに、清隆さん信じてくれなかったじゃないですか」
 ……清隆がさっきと全く同じ反応をしたため、以下略。
 そんな事を尻目に俺はエリーに目配せをした。
「では、ここにいるみなさんには、非公式新聞部として私の下で行動してもらいます」
「待った!」
 エリーが話を進めていると、リッカが口を挟んだ。……あれっ、デジャブを感じるな。俺に関しては話を聞いただけだけど。
「私がいるのに"非公式"っていうのに納得行かないわ。どうせなら、そうね……」
 リッカは顎に手を当てて考える。
「公式新聞部なんてどうかしら!」
 ……全くもって既視感を感じる。まあ、これは仕方ないのかもな。
「まあ、名前なんてどうでもいいさ」
「どうでもよくないわよ!」
「はいはい」
「まあ、いいでしょう」
「エリザベスまで!」
 エリーが強引に捩曲げる。こういうときにリッカのストッパーになるエリーはたよりになる。
「というわけで、みなさんには公式新聞部としてこれからウィザリカの反乱まで活動してもらいます」
 その一声に、皆の異論はなかった。ただし、一人だけ顔を訝しめていたのを、俺は見過ごさなかった。



   ◆   ◆   ◆



 次の日。
 今日から春休みだ。だが、そうも言っていられない。俺は部屋を出て、風見鶏へと向かっていた。
「ユーリさん」
 いつの間にか、カレンが隣を歩いていた。
「大変ですよね。春休みだっていうのに」
「仕方ないさ、生徒会なんだから。特に、俺達高位の魔法使いはな」
「……そうですね」
 今は二人きりだ。こういう話が出来るのもそのおかげ。
 そして。
「あっ……」
 こうやって、手をつなげるのも二人きりのときだけ。ただ単に恥ずかしいだけというのもあるが。やっぱり、人に見られて気持ちのいいものではない。
「もう」
 口では怒りつつも顔は嬉しそうだった。
 ……だが、ワルプルギスの夜が過ぎ、五月祭のあとには忙しい日々が待っているだろう。今だけでも、こうして安らかに過ごしていよう。
 俺は、そう願っていた。