D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~
あまりの出来事に頭を抱える清隆と、怒りだすリッカ。まあ、これも予想通りか。
「まあ、あれだ。いつぞやにやられた仕返しだ」
大体、選挙演説の時とかのな。
「……仕返しする相手が間違ってるでしょ。……でも、ありがとう」
「なんだ?嫌がらせにお礼とは斬新だな」
「違うわよ!……ただ、私に清隆の本心を訊く機会をくれたことにたいするお礼よ」
「……そんなの、例なんていいんだが」
まあ、例を言われて気分を害するような人間ではないし。素直に受け取っておく事にするか。
「……なんか、拍子抜けですね」
「何がだ?」
ほんの少しだけ微笑んで顛末を見るカレンがつぶやいた言葉に俺は答える。
「いえ、<孤高のカトレア>も、あんな風に見れば、ただの少女なんだなぁと思って」
「あいつの場合、俺と違って心の成長まで止まっていたからな。あいつの本質は、十代の少女のそれとほとんど変わらんよ」
「そうみたいですね」
こうして、安らかな時間は過ぎて行く。だが俺は知覚していた。そんな時間など、すぐに打ち消されるということを。
作品名:D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~ 作家名:無未河 大智/TTjr