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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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 そうして俺は必要な事をまとめていく。俺はエリーの秘書も同時にこなしているので、こういう突拍子もないことにも逐次対応する必要があった。……元来エリーがこういう性格なのが災いの元なのだが。
「そうですね……。あっ、そうだ!日本なんてどうでしょうか」
「日本の何処だ?俺は止めないぞ」
「えっと……ハツネジマ?でしたっけ、リッカさんと清隆さんが住んでいるのは」
「ああ、初音島な。いいところらしいな」
 最近リッカが送ってきたポストカードに、二人の元気な姿とともに綺麗に咲き誇る桜が写っていた。
「そんじゃ、家とか面倒な手続きとかは任せて、お前は出る準備をしろ。俺は次の女王に仕える準備とかもあるし」
「えっ?何を言っているのですか?」
 エリーはなにか疑問を持ったかのように首を傾げる。
 ……あっ、やばい。これ絶対なにか考えてる顔だ。
「何故ユーリさんは行かないのですか?」
 ……だと思ったよこの野郎。
「俺は宮廷魔術師だぞ。仕事はサボれねぇよ」
 書類に目を通し、必要事項を書き込みながら俺は話す。
 ちなみに俺は今メガネをかけている。これはカレンの形見の品の一つであり、目が悪くなった俺にたまたま合っていたから、仕事の時だけ身につけている。
「ですが、お金はいっぱい持っているでしょう?」
「そこが理由か」
「いえ、私の分は有志の方々に寄って賄われる手筈になっています」
「知ってるよ。でもだからって俺を連れていく理由がないじゃないか」
「ありますよ」
 俺は手を止めた。なにか意味深な事を言うエリーが気になってしまったからだ。これでは仕事に手が着かない。
「貴方も私も、魔法使いの端くれ。そして初音島は、"魔法使いが集まる場所"として有名な島だそうです」
 確かにリッカがポストカードにそんなこと書いていたな。つまりそれを豪語できるほど魔法使いが沢山住んでいるということだ。
「流石に、公にはそんなこと秘密だそうですが」
 つまり、魔法使いの間では有名ということか。
「そんで、そこに俺を連れていきたい理由は?魔法使いがいっぱいいるからってだけじゃないだろう?」
 エリーは、一呼吸置いて俺に告げた。
「……実は初音島には、非公式新聞部でも調べられなかった禁呪に関する読本があるそうです」
「なんだって!?それは本当か!?」
 俺はらしくも無く身を乗り出した。それをエリーは優しく宥める。
「まあ、落ち着いてください。……そのことは、清隆君から私宛てに親展で届いた文書に書いてありました。どうやら、ユーリさんに直接届けたかったそうですが、一般の郵便システムを使うわけにはいかなかったようで……」
 なるほど。つまり、俺に届いたポストカードはカモフラージュということか。粋な事しやがる。
 ……ちょっと待て。
「お前、その手紙どうやって届いたんだよ」
「……うふふ」
「おいっ!」
 何度聞いても、はぐらかされるだけだった。





 というわけもあり、俺は数年前から初音島に住んでいた。……流石にエリーとは違う家に住んでいるが、すぐそばにその家はある。ちなみに、リッカ達も近くに住んでいる。
 この数年、俺は驚くことばかりだった。
 まず俺達が初音島に着いた時、リッカと清隆の間に子供が二人出来ていた。その時すでに十歳くらいだったはずだ。前に送ってきたポストカードにはそんなこと書いてなかったから、心底驚いたのを覚えている。
 そしてこの島には話通り魔法使いが多く住んでおり、結構認知度は高かったことも覚えている。つまり魔法が肯定的に扱われているということだ。流石におおっぴらに扱われる事はないが、魔法使いだとか魔力持ちだとかで差別される事はないようだ。
 ……元はここで生を受け、魔力持ちとして忌み嫌われていた清隆が言うには『俺もこんな時代に生まれていれば……』だそうだ。もっとも、そのあとでリッカから肘鉄を喰らっていたが。
 さらに、彼女たちの家の庭に植えてある"枯れない桜"。リッカと清隆が共同で作ったものらしい。どうやらリッカはジルちゃんの願いを叶えることが出来たらしい。詳しいメカニズムは知らないが、完成させたのは事実だ。それに関してはリッカも喜んでいた。
「ユーリ!今日は一緒にご飯食べる約束でしょ?」
 と、そんなことを思い出しているとリッカが俺の家まで押しかけていた。
 俺達は前からの付き合いもあって、月に何回か飯を一緒に食べることがある。今日がその日だった。
「おお、悪い。ちょっとこいつの解読が思ったより進んでな」
 俺はメガネを外して本を取り上げる。
「それって、清隆が前に渡した禁呪に関する本よね?私でも読めなかったんだけど……」
「確かに。ここに書いてあるのは大体ラテン語と英語と……っていうか、様々な言語と文法を駆使して書いてあるから、普通に読もうとすると違う意味にしか見えないんだ」
 数ある魔導書の中には、このように解読作業が必要な物もある。このように複数の言語が混ざっているだけならいいが、日記や料理のレシピに偽装してあるものはすごく読みにくい。これが比較的簡単な物で助かった。
「なるほど、それで……。って、ご飯出来てるわよ!」
「お前が話広げた癖に……。まあいいや」
 俺は自身の書斎を後にし、リッカの家へ向かう。その途中でエリーも出てくる。どうやらエリーも誘われていたようだ。
 今日も、いい晩餐になりそうだ。……なら、いいが。