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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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 気にもとめていないような顔で俺は言った。だが当の二人はそれどころではなさそうだ。
「そ、そうよ。もう三ヶ月くらいになるわね」
 少しは恥ずかしがってくれてもよかったのだが。リッカは少し顔を赤くして答えた。清隆については恥ずかしさからか頬をかいていた。
「で、実際はいつ頃からだ?」
 俺は気になって聞いた。教えてくれない可能性も無きにしもあらずだが、とりあえずだ。
「ク、クリスマスから……よ」
「この二人ったら、この前の一件以来すっごく仲良くなっちゃってぇ」
 リッカが恥ずかしがりながら答え、シャルルが茶化す。
「なるほどな。それでそんな状態か」
 さて問題です。今の清隆とリッカの状態とは!
 Answer-隣同士でピッタリくっついている。これが正解だ!
「あはは。まあ、ここまで仲良くなったのは一ヶ月ほど前なんですから、許してあげてください」
「ん?一ヶ月前になんかあったのか?」
 さっきからシャルルや巴が言っていたことが気になって、俺はリッカに問うた。
「ええ、ちょっとね……」
 それからリッカはゆっくりと話しはじめた。自身の親友、ジル・ハサウェイの残留思念とのこと。ロンドンに佇む霧の魔力に捕われたこと。そして清隆を通してジルと話が出来たことを。
「……なるほどな。ジルちゃんとそんな事があったのか」
 そのジルちゃんとは、俺も生前は仲が良かった。魔法使いではない奴と恋をして結婚をしたことについては驚きを隠せなかったが、当時はその旦那とも仲良くしていた。後でリッカから聞いた話ではあるが、ジルちゃんの最後についても知っている。
 ……というか、この話をシャルルと巴の前でしてもよかったのか?とりあえず気にしない事にする。リッカが構わないのならとやかく言う必要はない。
「ええ。……まあ清隆のおかげで、色々吹っ切れたしもう大丈夫」
 おいおい、ホントかよ。リッカ、お前の目に涙が浮かんでるぞ。おっ、清隆気付いてリッカにハンカチ出しやがった。なかなかいい奴だな、清隆は。……でも、それで小突くのは良くないぞリッカ。
「……生意気」
「えっ、なんか言いましたか?」
「なんでもないわよ、馬鹿」
 うん、清隆に任せて大丈夫か。
 その時だ。
「あっ、悪い俺だ」
 シェルの着信音が鳴り響いた。シェルというのは、小型のトランシーバーみたいなもので、音声で話せるだけではなくテキストも送れるという優れ物だ。ただ魔力の効果範囲内でならという条件があるが。
 ちなみに俺の持つ魔力的にそんなものは関係ない。こちらから掛けるときのみという条件はあるが。
「……はい」
 俺は通話ボタンを押して応答した。
「……なんだお前か…………おう……おう……分かった、すぐ行くよ」
 何回か言葉を交わしたと、俺は通話を切った。
「悪い。ちょっと用事が出来た。先に抜けるわ」
「彼女さん?」
「……あってる」
「それは仕方ないですね」
「じゃあ、お疲れ様でした、ユーリさん」
 三人の才媛は、それぞれ違う反応をした。それに俺は別れの言葉で応答した。
「じゃあ、近いうちに」
 手早く会計を済ませ、魔術を使ってその場から立ち去った。





「……行っちゃいましたね」
 ユーリさんは光を越えた速さでその場を立ち去った。そのスピードに関して俺は、唖然としていた。
 そういえばユーリさんが消える直前、足元に魔法陣のようなものが見えたような……。
「ああいう奴よ、ユーリって」
 リッカさんが答えた。おそらく、どんな人なんだろうという意図を汲み取って答えたのだろう。
「まあ、掴みづらい人ではあるよね」
「そんな元会長を手込めに出来る人間は、私の知るかぎりではあまりいないな」
 シャルルさんと巴さんも話に混ざる。
「というか、ユーリさんは恋人に会いに行ったんですよね。誰ですか、それって」
「あー、それね。アンタもよく知ってる娘よ」
「えっ?」
 その時の俺に、その意味は分からなかった。あとで聞いて知ったのだが。その人は、毎日一緒に仕事をしている予科二年の女生徒だった。
 ……ちなみに(誤解ではあるが)他の女子に興味を示したとしてムッとしていたリッカさんの期限を直すのに少々の時間を要してしまったのは別の話だ。





 午後九時半。
 俺は男子寮のある部屋の前にいた。無論それは俺の部屋だ。だが一つおかしいところがある。扉の装飾が少し派手になっているのは気にしないことにしよう。だがなぜ、中の明かりが付いている?……まあ、予想はついているのだがな。
 俺は扉のノブを握って回した。勿論鍵などかかっておらず、軽く回って扉が開いた。だがそれは予想の範囲内だ。中に誰かがいるのは、さっき連絡があった時から予想がついている。
「ただいま」
 開いた扉から俺は中に入った。
「お帰りなさい、ユーリさん」
 聞き覚えのある声が部屋から聞こえてくる。しかしここは男子寮の個室で、住人は俺以外にはいない。ましてや、中から女子の声が聞こえるはずも到底ない。
 しかし俺は知覚している。中にいるのが誰かというのを。
「……いつも言ってるだろ、入るときは許可を取れって」
 中に入ったとき、女性特有の甘い香りがし、綺麗な金色の髪が見えてきた。
「連絡した時に言ったじゃないですか。部屋にいますよって」
「事後承諾は出来るだけ止せ!」
 帰ってきた途端これかよ……。まあ、気持ちはわからんでもないが……。
「……まあ、あれだ」
 俺はコホンと咳ばらいをして告げた。
「ただいま、カレン」
 中にいた金髪の少女はカレン・アルペジスタ。王立ロンドン魔法学院予科二年B組。及び同校生徒会役員。そして、俺の恋人だ。
「……もうツッコミ疲れた」
「自覚してたんですか」
「そうじゃなきゃやってられねーよ馬ー鹿」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんですよ」
「んだとゴラァ」
 と、俺は気づいた。言い合っている間に俺とカレンの距離が縮まっていた。もちろん物理的な意味で。
「……むぅ」
 俺は自然と彼女を抱きしめていた。流石にこれ以上は可哀相だ。半年もほったらかしにしたんだから。
「……馬鹿」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんじゃないのか?」
「そうじゃなくて!!……なんで私の気持ちが分かっちゃうんですか……?」
 ……ああ、なるほど。つまり、この状況に関してどうしてこんな行動が取れたのか。それが聞きたいらしい。だがそんな事、聞かれる前に答えは決まっている。
「そんなの、俺がお前の恋人だからに決まっているじゃないか」
 それ以外に答えようがなかった。それが俺の答えだから。それが……隠しようのない、俺の本心だから。
「……ズルいです、ユーリさんは」
「昔っから言われるよ、そんなこと」
 カレンは頬を赤らめていた。どうやら照れているようだ。
 だが俺達は自然と微笑みあっていた。彼女に会ったことで、やっと「帰ってきた」という実感を得た。
「……全く、半年も私を一人にして……。淋しかったんですからね」
「それに関しては何も言えん」
「……だから」
 俺の胸に顔をうずめていたカレンは、顔をあげて泣き顔のまま微笑んだ。どうやら、嬉し泣きをしているらしかった。
「だから、今日は一緒にいてもいいですか?」