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たった一度だけ

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 上着を脱いだダオスの上半身があらわになる。女性のような顔立ちだが、身体は引き締まっており、やはり彼は男なのだと、ベッドに仰向けになっているウィノナはぼんやり思っていた。眼前のダオスのむきだしにされた上半身に、ウィノナは胸の高鳴りを禁じ得なかった。初めて見る、大人の男の――ダオスの上半身。
「ウィノナ。外しても、よいか……?」
 彼の最後の抵抗、ウィノナの服のボタンを示す。こくりとウィノナはうなずいた。そうして、ウィノナのブラウスが外され、胸元の下着が見え隠れする。彼の長い指がまっさらの素肌を這い、どきりとする。
 首筋に、ダオスの形のよいくちびるが被さった。鎖骨あたりを伝う甘い枝道に、そしてダオスの髪の毛が触れる感触に、思わずウィノナは吐息をもらす。顔を上げたダオスは、ややためらいがちにウィノナのくちびるにキスを落とす。まだ、自分の行動について悩んでいるかのような表情をダオスは浮かべていた。ウィノナは、ダオスのほほに手のひらを伸ばした。ダオスはいとおしげに手を握りしめ、手の甲にくちびるを添える。
「ウィノナ」
 あまりにもやさしい、慈愛に満ちあふれた声がした。ダオスは、ウィノナを見てほほえんでいる。やがてそれは深い愛を持ったくちづけに変わる。

 ダオスの触れるところ、すべてが熱い。羞恥に勝る喜びに身体が打ち震える。ダオスの髪の毛が触れるところですら、熱を帯びている。なめらかできれいな髪。金色の羽衣。この世のものではないような美しさ。
 神に近い存在なのではないかとすら思える美貌とその強く慈悲深い精神。そんな相手と今、自分は……。

 あたしはひとりじゃない……ダオスがいる。ダオスが、今、あたしと繋がっているんだ。ウィノナは必死にダオスの広い背に手を伸ばす。
「ダ……ダオスっ……すき、すきだよお、ダオス……ッ……」
「私も……好きだよ。ウィノナ……」
 くちびるに、ダオスのくちびる。苦しくて、嬉しくて、たまらなくて、ウィノナは涙を流す。そんなウィノナの涙を、ダオスはていねいに、繕うようにくちびるで舐め拭う。感極まりそうになる中、ウィノナはダオスの背に伸ばしている手を強く握りしめた。ずっとここにいてほしいと思わずにはいられなかったのだ。爪立てたダオスの背にじわりと紅い染みがつく。
「いなくならないでェっ……! おねがい、ここに、ここにいて……ェっ……!」
 衝撃と快楽にまかせ絶叫する。その言葉の意味を知るのは、ウィノナだけであった。悲愴な想い、むしろ懇願に近かった。
 時間が止まってしまえばいいと思った。
 そこで、ウィノナの意識はおぼろになる。全身が弛緩し、世界が遠くなる。急激な睡魔に、ウィノナは襲われた。
 ずっと、キミのそばにいてあげるから。意識が溶ける前に、そんな、言葉を聞いた気がした。

***

 朝のさえずりが聞こえる中、ウィノナはまどろみの中にいた。──あたたかい。
 低くて繊細な声と、絹糸のような感触がたゆたっていた。その安心感に身を任せ、ウィノナは再び眠りに落ちる。

 その日は、幸せな夢を、見た気がしていた。
 彼と自分がともに生きて、生活をして、子どもを育てる、あり得るはずもないような夢を。
(了)
作品名:たった一度だけ 作家名: