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妖アパ 千晶x夕士 『想』

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俺達の関係をどう表現したらいいのだろうか?



俺、稲葉夕士。職業は小説家

とある事件がきっかけで大学受験を逃し、同じアパートの住人である古本屋(本名不明)
と一緒に世界旅行へ旅立ってから10年

何だかんだで小説家の升席に座っている

世界旅行中の旅行記(ブログ)が3冊の本になり、
俺達の珍道中が出版され、シリーズ化し今年13冊目が発売される

仕事面では同じアパートの住人、詩人こと「一色黎明」先生のアドバイスを受け
漫画化、アニメ化、ハリウッドでの映画化などを得て、一見順風満帆な人生を送っている

毎日が充実しているハズなのに、夜一人になると心細くなる

そんな夜は会員制「クラブ・エヴァートン」へ向かう



クラブ・エヴァートンは会員制であり、来店確認の為黒服が入口でチェックを行う
夕士よりも若干若い黒服の彼は、愛想よく挨拶をした後、世間話をする

エヴァートンの黒服初めスタッフとは顔なじみであり、
特に『コア』と呼ばれる経営陣の一人である千晶直己とは
友人以上の付き合いをしていると夕士は思っている

次期運営メンバー候補として、オーナー・正宗さんに才能を買われた
高校の先輩で当時生徒会長であった神谷さん

その神谷さんをサポートする二人
小3からの幼馴染で、現在は起業し社長の長谷
高校の同級生で企業コンサルタントの田代


クラブ・エヴァートンに来る度に、胸が熱くなる
--- 大事な仲間であり、命に代えても守りたいと



会員制クラブということもあり、店内は落ち着いたムードで"大人"な雰囲気で
高級感も感じられる

店内は吹き抜けになっており、一階席と二階席がある
中央にはステージがあり、真ん中にグランドピアノが我が物顔で鎮座している

夕士は店内でも比較的目立たないカウンターの端に座る
実は夕士は"この場所"が気に入っている
目立たないのは勿論だが、何より---

「やあ。夕士くん。久しぶりだね」
「正宗さん。こんばんわ。相変わらずカッコいいッスね」
「ははは。嬉しいな。ゆっくりしていってくれ」

店内にはいくつかの監視カメラが設置されており、
モニターを見ているスタッフがオーナーである正宗さんに来店を告げる

特に夕士に対しては、『コア』メンバーが必ず挨拶をしに立ち寄ってくれくれるのだが
人気者の『コア』メンバーを独占するのは気が引ける

その為一般客から死角になる[STAFF ONLY]の扉に一番近いカウンターの席を陣取ることで
気兼ねなく話すことができる

正宗は夕士の肩を軽くポンポンと叩き、他のテーブル席へ移動した
そんな正宗の凛とした背中を見つめていると、「稲葉!」と声がかかる

「ああ、千晶。お疲れ」

「なにマサムネの姿見つめてるんだよ。俺というハニーがいるのに」
と口を尖らせるので、夕士は指でつまんでニヤリと笑う

「いつまでも子供じみたことしてんなよ。アラフォーだろ?」
「年齢は関係ない。俺の心はいつでもピュアなんだ」
「言ってろ!」

千晶は元教師。夕士のクラス担任だった。
しかし数年前交通事故に遭い、右腕を失い教職を辞して、現在はエヴァートンで歌手をしている
とは言っても、毎日歌うこともなく、気ままに好き勝手に過ごしているのだが---

相変わらず行動が子供じみてるな---夕士はやれやれと肩を竦めた

「今日、泊まっていくだろ?」
「……」
「どうした?何かあったのか?」

目を細め、心配そうな表情で顔を覗き込む千晶を、片手で抑え込み
そんな表情で今の俺を視るな--- 夕士は頭を軽く振りながら

「イヤ、何でもない。今日泊まる」と簡潔に答える

千晶はニコリと笑い、「よし。一曲歌ってくるかなー」と楽屋裏へと軽快に去って行った



千晶がステージに上がると、それまで大人しく呑んでいた客たちは一気に盛り上がりをみせた
アコースティックギターの演奏が始まり、千晶が歌いだす

Escape The Fateの楽曲『Harder Than You Know』

ここ数ヶ月、千晶が歌うバラード調の楽曲
夕士は静かに目を閉じ、千晶の歌声を聞く

学生の頃、英語クラブ在籍、その後世界旅行に行った夕士は英語は得意とする分野
甘く切ない声で歌う歌詞を、自然と和訳に置き換え、頭の中で反復する

   つらいのは最初だけだと
   お互いに支え合えば、何も焦ることはないと
   この世界がずっと続くんだと君は言うけど
   その言葉に僕は不安を抱くんだ

   いつか終わりが訪れるんじゃないかと?
   僕と同じように君が愛してくれているのか不安で仕方ない
   だって君を失うことに諦めがつかないから

--- 歌い手は感情移入して歌う、と聞いたことがある
こんなに切なく、でも強い思い…千晶は何を思って歌っているのだろうか ---

作品名:妖アパ 千晶x夕士 『想』 作家名:jyoshico