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桑野みどり
桑野みどり
novelistID. 52068
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Solid Air(前編)

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chapter.1


「ジェット・リンク、出頭致しました」
部屋に入り、敬礼の形を取る。向かいには横一直線の長い机。一段高くなっているそこから、いくつもの威圧的な冷たい視線がジェットを見据えていた。

「ジェット・リンク中尉。ここに呼ばれた理由は分かっているだろうね?」
「いいえ」
ジェットはきっぱりと答えた。
否定の返事が返ってくるとは思わなかったのだろう。査問官は少し面食らったようにぴくりと眉を上げた。

「自分が何をしたか分かっていないのかね?」
「少なくとも罪に問われるようなことをした覚えはありません」
「きみ、そういった態度は自分を不利にするばかりだぞ。もっと利口になりなさい」
別の査問官がなだめるように言った。ジェットは唇を引き結んだ。舌打ちしなかっただけ自制しているほうだ。

「リンク中尉。きみは今回の作戦で、敵の軍事拠点を発見していながら報告を怠ったそうだね?」
「あれは軍事拠点などではありませんでした」
「また、友軍の作戦行動を妨害しようとしたとか?」
「民間施設への誤爆を防ごうとしただけです」
「さらには、味方に向かって発砲したそうだな」
「…威嚇射撃でした」
「友軍を攻撃し、敵の兵士を援護するような行動をとったうえ、自身が搭乗していた偵察機を損傷、大破」
「だからそれは…!」

「仮に故意でなかったとしても、我が軍に重大な損害を与えたことは事実として受け止めてもらわねばなるまい。反逆罪で即刻処刑されてもおかしくないところだが、きみの『特殊な事情』をかんがみて、こうして査問会という形式で済ませることにしたのだよ。我々がここまで譲歩しているのに、肝心のきみがそのように非協力的な態度とは、困ったものだ」
それとも軍法会議をお望みかね?と軍服の群れは薄笑いを浮かべる。
ジェットは殺意を込めて査問官たちを睨み返した。

◆ ◆ ◆

その一件は明らかに軍のあやまちだった。功を焦った指揮官が無理やり攻撃を命じたのだ。ジェットを偵察に行かせたのも形ばかりのことで、報告を聞きもしなかった。それが本当に軍事基地かどうかなど、見極めるつもりは最初からなかったのだ。

あれは違う、攻撃するなと、ジェットは必死で止めようとした。しかし、なし崩し的に爆撃が始まると、ほとんど武装らしい武装をしていない小型偵察機にはなすすべがなかった。
それでも炎上する偵察機から身一つで抜け出し、体に埋め込まれた飛行機能をフルに使ってジェットは翔んだ。ひとりでも。一人でも多く助かってくれ。俺に助けさせてくれ。

悲惨な光景だった。かろうじて助けられたのはわずかな人数で。彼らは生き残った安堵よりも同胞がむごたらしく殺されたショックで泣き叫んでいた。

ジェットは己の無力さを呪った。
(俺の腕はなぜこんなにもひ弱なのか。もし005のようなおおきな手があれば、たくさんの人を守れただろうに)
(俺の目はなぜ003のように見えないのか。なぜ、004のように武器を内蔵していないのか)

ジェットは、泣き続ける人の輪を離れた。
(なぜここに007がいないのだろう。変身能力を持つあいつがいれば、助けた人々を安全な場所まで送り届けられるのに。目立ちすぎる俺と一緒にいては、また攻撃目標になってしまう)

土煙の薄く立ち込める空の向こうから爆音が近づいて来ていた。
(006がいたらいいのにな。トンネルを掘ってあの人たちを逃がせるだろうに)
(それとも超能力ベビーがいてくれりゃ大助かりなんだがな)
(俺に008のような冷静な頭があれば、もっとうまい方法を思い付くのかもしれねぇが…)

せめて時間を稼ぐため、ジェットはでたらめな方向へ空を翔けた。
(時間がないときに一番頼りになるのは、あいつだったよな…)


『リンク中尉、貴官は作戦行動を逸脱している。ただちに帰投せよ』
頭の中に直接通信が響いた。通信機器を落とす心配がないのがサイボーグのいいところだとジェットは思う。
追いつかれ、数機の軍用機に囲まれたが、小回りのきく機動性を生かして攻撃をかわし続ける。

『警告する。ジェット・リンク、投降せよ。これ以上の抵抗は反逆行為とみなす。繰り返す、…』
なおも通信を無視して飛び続けていると、それまでためらいがちに旋回していた軍用機が、スピードを上げて接近してきた。機銃掃射の体勢に入っている。さすがにやばいかな、とジェットは他人事のように思った。こちらの武器は手持ち式の銃が一丁だけ。残弾も心もとないが、最後の悪あがきをしてみようか。

銃把を握る手に力を込めたそのとき、通信回線から声が聞こえた。
『…ジェット、頼む。きみを死なせたくない』
呻くような、苦しげな。ジェットはその声の主を知っていた。
同じ部隊に所属する若いパイロットだ。ジェットのことを兄のように父親のように慕っていた。
(撃てるわけ、ねえよなぁ)
ジェットは苦笑した。手放した銃が後方に飛ばされていく。被弾した間接部がスパークした。バランスが崩れ、空中を落下していく。

(ジョー、みんな…どこにいるんだ…)

俺は、もう、飛び続けることができない。

作品名:Solid Air(前編) 作家名:桑野みどり