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リーコノSS集

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疑似家族




見上げるくらいの巨木の砦。
そこに身を寄せるようになって半年。
世界は穏やかに変化していき、自分の感情も緩やかに変わっていく。
あんなに憎悪していた存在の寂しさを知ったから。

「リークス!」
「・・・・・なんの用だ」
「そろそろ、本置いてこっちに来いよ!」
「何故だ」
「みんなで飯食うんだよ!」
「必要ない。私の分は此方に持って来い」

分厚い本から目を上げようともせずに言うリークスにコノエは痺れを切らす。
ずかずかと中に入っていくと、その本を取り上げ栞も挟まずに閉じてしまう。

「何をっ!」
「飯はみんなで食わなきゃ美味しくないだろ!折角、フィリが作ってくれたのに」
「そんなことは関係ない!」
「関係あるの!ほら、一緒に食べよう」

困ったように見つめてくるコノエにはリークスも弱い。
暫らくして、諦めたように溜息を吐いた。

「・・・・・分かった」
「本当か!なら、さっさと行こう」

本当の家族ではないけれど、家族みたいな関係で食卓を囲む。
それは今まで味わったことのない、温かな空間。

「あぁ、確かに旨いな・・・・・」

かつて冷酷と言われた魔術師の言葉は誰に聞かれることも無く、空へと消えた。


作品名:リーコノSS集 作家名:あきら