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リーコノSS集

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花は盛り





虚ろも消え、花がいたるところで綻んでいる。
それは砦の周辺も同じことで、少し道を外れると色取り取りの花。
その中の一部を摘みながら砦へと戻っていく。
気付けば両腕は花でいっぱいになっていた。

「そんなにいっぱいどうするんだよ」
「フィリっ!」

突然現れたフィリに驚いて、尻尾が膨らむ。
上を見上げれば呆れたようにこっちを見ているフィリの姿。

「綺麗だろ?」
「綺麗だけど、そんなにどうするんだよ」
「飾ればいいだろ」
「飾ればって・・・・・・・」
「それにこんなにたくさんの花をゆっくり見たことないからさ」

半分ほどの花をフィリに手渡す。

「これをどうしろって?」
「だから、飾れって」
「そっちは?」

コノエの腕の中に残ったままの花を指差し、フィリが問う。
その花を見てコノエが笑った。

「これはリークスのところに持って行こうかと思って・・・・」
「リークス様の?」
「そう、いっつも中にいて、外に出かけないから・・・・・多分邪魔だって言われるんだろうけどさ」

それでもいいからと、コノエが言うとフィリは何とも言えないような顔でコノエを見た。

「これ、適当に飾っておくから」
「あっ、うん!」

大事に花を抱えなおすフィリにコノエが笑う。

「リークス様のところに行くんならさっさと行きなよ」
「えっ?」
「早くしないと花が萎れるだろ!リークス様に萎れた花を見せるつもり?」

捲くし立てるフィリにコノエが慌てて、砦の中に入る。
何と言ったらいいのか分からないままに部屋の前まで来てしまう。
そっと扉を開ければいつものように机に向かうリークスの姿。
どうしようかな、と溜息を吐くとそれと同時に声を掛けられた。

「お前はそこで覗くのが趣味なのか?」
「え、あの・・・・」
「・・・・なんだ?」
「花飾ってもいい、か?」

腕の中にある花を見せて言う。
リークスはコノエを一瞥してまた本に視線を戻す。

「・・・・ここには必要ない」
「言うと思った。でも、リークスあんまり外に出ないから・・・・・」

花瓶なんてものないから、深めの容器に花を生けて窓辺に置く。
普段なら視線を逸らさなければ見えない場所に。

「ここなら、邪魔にはならないだろ・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「たまには外に出ろよ、綺麗だからさ」

そう言って、扉を閉めた。
その後、そっとその花にリークスが触れたことをコノエは知らぬままに。

作品名:リーコノSS集 作家名:あきら