雨と無能と鉢植えと~痴話喧嘩でバカップルな話~
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――朝からつまらないことで喧嘩して、霧雨の中傘も持たずに家出した――
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いつもの如く近所に住む弟の元を訪ねる。「また来たの」って顔をされたけど何も聞かずに家に入れてくれた。
風呂を借りて身体を暖めて出てきたら食事を用意してくれていて、一緒にブランチを取った頃にはすっかり気分はすっきりしていた。「ところで今回は何が原因で喧嘩したの」と聞かれて「何だったっけ?」と思うくらいに。そしてまた呆れられた。
弟が食べ終わった皿を片付けている間、ぼんやりと窓の外を眺める。霧状化した雨が外の空気を湿らせ続けている。
今日は丸一日休みだから、天気がよければ庭の土いじりをしようと思っていたのに。そろそろ株の植え替えをする時期のものが幾つかあるのだ。しかしこの分では無理そうだな。
――いやそもそも自分は家出中ではないか。
ため息をつきながらふと手前に視線を落とすと、窓辺に置いた鉢植えが目に入った。水分が充分に与えられているらしく瑞々しい葉をしゃんと張っているその鉢植えは、自分のお気に入りを株分けして根付かせお裾分けしたものだ。
そういえば今朝は家の中にある鉢植えに水をやらなかった。その前に家を出てきてしまったからだ。
急に心配になる。庭は外だから今日は水やりの必要はないだろう。だが家の中にある鉢には雨が降らない。一日くらいでどうということはないだろう。だが葉が萎れてしまってはいないだろうか。
がたっと音を立てて椅子から腰を上げると、急いたように玄関へ向かう。
「あれ、兄さん帰るの」
アルフォンスがキッチンから顔を出した。
「ああ。用事思い出した。急に悪かったな、アル」
「いいよ、今日は特に予定もなかったし。あ、帰りは傘差してってね」
「ん。さんきゅ」
アルフォンスから差し出された傘を受けとるとドアを開けた。
「ロイさんによろしく」
「ああ」
後から思い返すと、その時既にかなり上の空だった。じゃあという仕草で手を振ると、傘を開くのももどかしく駆けるようにして弟の家を飛び出した。
――朝からつまらないことで喧嘩して、霧雨の中傘も持たずに家出した――
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いつもの如く近所に住む弟の元を訪ねる。「また来たの」って顔をされたけど何も聞かずに家に入れてくれた。
風呂を借りて身体を暖めて出てきたら食事を用意してくれていて、一緒にブランチを取った頃にはすっかり気分はすっきりしていた。「ところで今回は何が原因で喧嘩したの」と聞かれて「何だったっけ?」と思うくらいに。そしてまた呆れられた。
弟が食べ終わった皿を片付けている間、ぼんやりと窓の外を眺める。霧状化した雨が外の空気を湿らせ続けている。
今日は丸一日休みだから、天気がよければ庭の土いじりをしようと思っていたのに。そろそろ株の植え替えをする時期のものが幾つかあるのだ。しかしこの分では無理そうだな。
――いやそもそも自分は家出中ではないか。
ため息をつきながらふと手前に視線を落とすと、窓辺に置いた鉢植えが目に入った。水分が充分に与えられているらしく瑞々しい葉をしゃんと張っているその鉢植えは、自分のお気に入りを株分けして根付かせお裾分けしたものだ。
そういえば今朝は家の中にある鉢植えに水をやらなかった。その前に家を出てきてしまったからだ。
急に心配になる。庭は外だから今日は水やりの必要はないだろう。だが家の中にある鉢には雨が降らない。一日くらいでどうということはないだろう。だが葉が萎れてしまってはいないだろうか。
がたっと音を立てて椅子から腰を上げると、急いたように玄関へ向かう。
「あれ、兄さん帰るの」
アルフォンスがキッチンから顔を出した。
「ああ。用事思い出した。急に悪かったな、アル」
「いいよ、今日は特に予定もなかったし。あ、帰りは傘差してってね」
「ん。さんきゅ」
アルフォンスから差し出された傘を受けとるとドアを開けた。
「ロイさんによろしく」
「ああ」
後から思い返すと、その時既にかなり上の空だった。じゃあという仕草で手を振ると、傘を開くのももどかしく駆けるようにして弟の家を飛び出した。
作品名:雨と無能と鉢植えと~痴話喧嘩でバカップルな話~ 作家名:はろ☆どき