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はろ☆どき
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novelistID. 27279
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雨と無能と鉢植えと~痴話喧嘩でバカップルな話~

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 家に帰り着くと真っ先にキッチンへと行く。そこにある小窓の脇に鉢植えを置いているのだ。
「ごめんな」
 詫びるように言って状態を確認すると、葉はぴんと瑞々しく張っており所々に水滴が付いてる。土もしっかり湿っていた。どうやら家主が水やりをしたらしい。日頃は頼んでおいても忘れるくせに。
 奥のリビングに向かうと、そこにはソファーで萎れている男がいた。
「キッチンのあれ、水やってくれたの」
 ただいまも言わずにいきなりそう尋ねると「君が大事にしているものだからな」と返ってくる。怒っているわけでも拗ねているわけでもなくしょんぼりした様子を見て、素直な言葉が口をついて出る。
「朝はごめん」
「いいんだ。こっちこそムキになり過ぎた。すまない」
 謝ってくる声もやっぱり萎れている。
「……鉢植えが」
「え?」
「あの鉢植え、あんたからもらったものだろ。だから大事にしてるんだ」
「私が君に?そうだったかな」
 男は考えるように首を傾げながら、今まで逸らしていた目線をこちらに向けた。
「前に露店で見てオレが気に入って。だけど旅暮らしだから買えないって言ったら、あんたが買ってくれたんだ。うちに置けばいいじゃないかって」
「そんなこともあったな」
「だから気に入ってるんだ……。だからあの鉢植えが萎れてないか気になって、急いで帰ってきたんだ」
 今言い切ってしまわなければ機会を逸する。
「だから……ありがとな」
 ―水をやってくれて。
 ―大事にしていると気づいていてくれて。
 ―オレをここに置いてくれて。
 ―オレを受け入れてくれて。
 いろんなありがとうを精一杯籠めて言う。どうか欠片でも想いが伝わりますように。
 すると男がこちらに手を差し延べてきたので、近づいて行ってその手に自分の手を乗せる。男はオレの右手を自分の両手でぎゅうと握り返してきて、そのまま引き寄せ額に充てた。
「君がいないと私は萎れてしまうんだ……」
「何大袈裟なこと言ってんだよ。こんなのいつものことじゃんか」
「大袈裟なんかじゃない……いつもこのまま二度と君が帰って来ないんじゃないかと不安で堪らないんだ」
「ロイ……」
「だから帰ってきてくれて……いつも傍にいてくれてありがとう、エドワード。君がいなければ私などただの枯木だよ」
 外では不遜な態度を崩さない男がこんな縋るような顔で情けない声出して、ずるいそんなの反則だ。
 だから。放っておくともっとしょぼくれたことを言い続けそうなその口を塞いでやった。唇で。