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はろ☆どき
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novelistID. 27279
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雨と無能と鉢植えと~痴話喧嘩でバカップルな話~

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「ところでオレらなんで喧嘩してたんだっけ?」
 立ち直ったらしく通常運転で新聞を読み始めた男の肩に、なんとなく頭を預けた体勢で寛ぎながら聞いてみた。
「さあ……なんだったかな。どうせ大したことじゃなかろう。忘れているくらいだ」
「だなー」
 それこそいつものことだった。
「今日はこれからどうする?」
「んー、天気良ければ庭の草の植え替えとかしようと思ってたんだけど」
「雨の中わざわざする必要もあるまい。来週晴れたらにしたらいい」
「そうだな。雨の日はあんた使えないし。家でごろごろしてっか」
「酷い言い様だな。しかし家でごろごろは賛成だ」
 最後の科白のところでがらっと声のトーンが変わったのが分かった。嫌な予感がして男の顔を振り仰ぐ。
 そこにはわるーい笑みを浮かべた男の顔があった。悪い大人の男の顔だ。
しまった、甘やかし過ぎたか。咄嗟に身体が逃げを打とうとしたが最早後の祭りだった。
「もう遅い」
 スイッチの入ってしまったらしい男が、立ち上がろうとしたオレの身体を容易く捕まえてそのままソファーに押し倒した。
 そしてその日はその後ずっと、文字通りごろごろして過ごす羽目となった。主にソファーとベッドの上で。



******



 キッチンで片付けものをしていると、テーブルの方からがたっと椅子が動く音がして、ばたばたとした足音が玄関へと向かうのが聞こえた。
「あれ、兄さん帰るの」
 キッチンから顔を出すと、兄が今にも飛び出して行ってしまいそうな様子で振り向いた。
「ああ。用事思い出した。急に悪かったな、アル」
「いいよ、今日は特に予定もなかったし。あ、帰りは傘差してってね」
「ん。さんきゅ」
 せっかく温めた身体をまた濡らして帰したりなどするわけにはいかない。特にあの人の元へなど。
 傘立てに幾つかあった中から一つ抜いて差し出すと、兄は受け取るや否やドアを開けた。
「ロイさんによろしく」
「ああ」
 そして傘を開く間も惜しむように玄関を飛び出し、足早に去って行ってしまった。一応傘を広げたから良しとしよう。
「帰るってのは否定しなかったしね」
 アルフォンスはぽそっと呟き、なら安心だ、と兄の後ろ姿が見えなくなるまで見届けるとドアを閉めた。
 彼らは度々、何が元だったか覚えてもいないようなしょうもないことで喧嘩をする。その度に兄はこうして自分のところへやって来るので、近くに住むことにしてよかったと思う。
 最初はそんなことでそんなに喧嘩してばかりで大丈夫なのだろうかと思っていた。けれど兄がうちからあの人の元へ帰った後、大抵彼らはいつも以上に仲良くなるのだ。端から見ていると胸焼けするほどに、それはもう憚らず仲良く。
 きっと「しょうもない喧嘩」は彼らの日常に必要なことなのだろう。互いの日々を潤す為に。鬱陶しいこの雨が、人や他の動植物にとって欠かせない命の源であるように。
 

 閉めたドアの鍵を掛けながら、アルフォンスはふんと息を吐いた。
「あーあ、僕も恋人欲しいなぁ」



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とある一日霧雨だった日に