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【カイハク】ファム・ファタール

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数日後、シャンピニオン伯爵が回復したとの小さな記事が、新聞に載る。伯爵は、襲ってきた相手に全く心当たりがないこと、自分より一回りは大きな男だったと警察に伝え、心労から体調を崩して入院した妻を気遣い、今度は自分が妻の献身に応える番だと、本紙記者に語ったという内容だった。
カイトから伝え聞いたライは、視線を知恵の輪からカイトへ移し、薄ら笑いを浮かべる。

「そりゃまた、けったいなことだ」
「伯爵は結局、妻を選んだということか」

カイトの言葉にライは肩を竦め、「最初からだろ」と呟いた。
ハクは、慣れない手つきでお茶を注ぎ、カイトとライの前にカップを置く。

「上手く淹れられたら、いいんですけど」
「夫人よりはましだろう」
「俺はいいよ」

カップを押しやったライは、カイトとハクの視線に気がつき、

「俺は猫舌なんだよ」

と顔をしかめる。

「冷ましてやろうか」
「余計なことすんな!」

伸ばされたカイトの手を払うライに、ハクは笑いを堪えながら、ライが口に出来る物は何だろうと考えていた。


終わり