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こらぼでほすと 二人2

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「俺と? 楽しいか? 」
「さあなあ。楽しいかどうかはわかんねぇーけど、たまには二人で飲んでみたいとは思ってる。」
 そう言って、実弟がにっと笑うので、ニールも笑ったふりはした。デートは別にいいのだが、食事は味がわからないのがバレそうで、ちょっとドキリとする。ニールにとっての料理は、特区のものだ。それ以前は、ほとんど食べていた記憶すら怪しい。最低限の栄養補給はしていたのだろうが、食事に対する楽しみは感じていなかった。組織にスカウトされて、刹那たちと食事していた時だけは、少し覚えているが、それだけだ。まあ、宇宙ではレトルトがほとんどだったし、地上の休暇の時に、その土地のものを食べていた程度だが。刹那たちには、そんな体験をさせてやりたいと思って試させていたが、当人は、それほど食事に想いはなかったのだ。
「とりあえず、クロワッサンと・・・あと、タバコ。」
 実弟のほうは、欲しいものをひょいひょいとカゴに投げ入れて、レジへと進んでいる。何にも覚えてないんだよなあ、と、内心で溜め息をつきながら、ニールも後を追う。自分が、どこか壊れていると自覚するのは、こういう時だ。
「こんなもんか? 」
 レジで実弟が振り返ったので頷いた。よくよく考えたら、強烈に食べたいものなんて思いつかない。日々、何かしらは作っているが、それは誰かが食べるからで、ニールが食べたいというものではない。


「帰ろう。」と、声をかけられて、コンビニを後にする。また、二人して夜道を歩く。
「俺とデートはイヤなの? 」
 となりから、ちょっと硬い実弟の声だ。
「そんなことないよ。」
「でも、一瞬、困った顔をしたぜ? あんた。」
「あ、ごめん。・・・なんか・・・おまえと二人で食事するなんて思いもしなかったから動揺した。」
「俺は、あんたのことを家族として愛してる。それは、変わらないことだ。・・・あんたが俺に、なんか引け目感じてんのはわかってるけど・・・そういうのいらないからな。」
「・・・うん・・・」
「そうは言っても、あんたは俺に遠慮すんだろうけどさ。」
「・・・うっうん・・・なかなか、それは・・・」
「昔みたいにってのは無理だけど・・・俺は兄さんが、この先もずっと義兄さんと幸せに暮らしてくれてればいい。あんたは生きてるのが、仕事だからな。」
「そうだな。みんなにも、そう言われてる。」
「デートしてくれるよな? 兄さん。」
「・・ああ・・・」
「たまには、俺がエスコートしてやるよ。美味いモンでも食って、ちょっと呑んで、昔の話でもしようよ。俺も話したいこともあるんだ。家のこととか、アニュのこととか。」
「家? 」
「あんたが、全部、俺の名義にしちまった、あの家のことだ。家自体はないが、補償金とかいろいろと貰ったんだよ。」
「おまえが使えばいいじゃないか。大した金じゃないんだろ? 」
「その時も手続きとか大変だったから、愚痴を聞け。」
「はいはい、聞くさ。全部、押し付けて悪かったな、ライル。」
 本当は、実兄がライルに全部を遺してくれたのだと理解している。ほとんど、ディランディ家の財産に手をつけず世界を敵に回した。それなのに、実兄は否定しない。ライルにも、ニールの壊れた部分はわかっているから、それを訂正はしない。
「そうさ、押し付けられたほうは迷惑だったんだ。・・・・でもまあ、あんたが、あの取り壊しを見なくてよかったかもしれない。取り壊して更地になったのを見た時は、かなり心が痛かった。」
「俺も更地になったのは見た。・・・確かに、痛かったな。」
 思い出の場所が、元から何もなかったかのようになくなっていた。自分自身すら否定されているような感覚に、ライルもニールも悲しくなった。そこにあった温かいものを、全て奪われてしまったからだ。
それは双子だけにある共通の想いだ。
「だから、あの家の話をしよう。な? 」
「ああ、俺たちしか知らないことだもんな。」
「そうそう、こればかりはダーリンでも無理だ。ダーリンは生まれてないからな。」
「あはははは・・・そうだな。・・・ああ、おまえ、明日、着替えをマンションに取りに行ってくれ。明日は、俺の服を着ればいいけど、おまえの趣味じゃないだろ? 」
「じゃあ、一緒に出かけて、ソーダパンとか羊の肉とか買出ししようぜ。あと、ギネス各種だな。」
「ソーダパンなんてあるのかなあ。」
「なかったら、そこは妥協する。いや、デートの時に食えばいいか。・・・なあ、あんた、スーツはあるんだろうな? 」
「仕事用のが、店にある。え? そんな堅苦しい食事なのか? 」
「メシはいいけど、酒は美味いのがいいだろ? 」
 それなりの酒を飲ませる場所となると、ドレスコードがある。さすがに、いつものジャージやらフリースでは入れない。ハイネに、どっかいいとこ教えてもらおう、と、ロックオンが言うと、あいつの言うところは高いぞ、と、実兄が文句を言う。庶民派貧乏性の実兄には、高級店は敷居が高いらしい。
「あんたさ・・・トダカさんが用意してる酒の値段知らないんだな? 知ったら、卒倒すんぞ。」
「高いのはわかってるさ。」
「俺は、あんまトダカさんチョイスのは飲ませてもらってないけど、ハイネに聞く限りは一桁違うぜ? 」
「そうなんだろうなあ。」
「つまり、あんたは普段から、そういう酒を呑んでるんだよ。だから、高級店でもないと美味くないわけ? わかってるか? 」
「どうだろ? 外で飲むことってないからさ。」
「くくくくく・・・じゃあ、ビビらせてやる。」
「いらねぇーよ。おまえが飲みたいなら付き合うけど、ビビらせるためなら行かないからな。」
「俺だって、美味しい酒が飲みたいんです。」
「刹那と行けばいいのに。」
「ダーリンは酔わないし、酒のウンチクなんかスルーだ。」
「あー、ごめん。そこいらの教育はしてやって? 」
「するけど無駄だと思う。水みたいに飲んじゃうんだ。美味しいとか、そういう感性は持ち合わせてないみたいだ。」
「いや、年齢的なもんもあるだろ? 酒って経験しないと覚えないからさ。まだ、刹那は若いんだ。たまに飲ませて経験させてやればいいんだと思う。」
「それはやらせてもらうけど。こっちに帰ったら、兄さんも経験させてやってくれ。」
「はいはい、やっておくよ。」
 ブラブラと会話していたら、また、あっという間に、寺の山門だ。大した距離ではないから、三十分とかからなかった。
作品名:こらぼでほすと 二人2 作家名:篠義