こらぼでほすと 二人2
「でも、寝かせてはくれないんですね? 」
「ぐっすり夢も見ない眠りには誘いますが? 」
「その前に、さらに疲れさせるんでしょ? そんなに僕の弱った顔はそそりますかね? いい加減、飽きませんか? 」
「飽きないんだよ、これが。そこから、欲情させるプロセスが、俺の趣味になってるらしい。」
「もうちょっと建設的な趣味を作ればいいのに。」
「まあまあ、それは諦めろ。明日のメシは俺がするからさ。たっぷり睡眠をとっていただけるように奉仕させていただくぜ? 」
「追加で洗濯もしてください。」
「はいはい、承りましょう。他には? 」
「風呂掃除、朝から風呂に浸かりたいです。」
「あははは・・・もちろん。」
ごくりとビールを飲んで、亭主は女房に返す。返して、軽く唇にキスはする。濃厚にではないが、触れ合う時間は長い。啄ばむように互いに、下唇を吸いついて合わせる。そんなやりとりを遊ぶ。扉の開く音で、どちらも離れる。
「・・・・おまえらな・・・」
離れる瞬間を見た鷹は、げんなりと注意はする。いつまでたってもいちゃこらとしている沙・猪家夫夫も、たいがいだとは思っている。
「すいませんねー、鷹さん。うちの亭主が、欲情しちゃったんですよ。」
「いや、俺はいいんだけどさ。青少年には刺激が強すぎるから、事務室ではボディタッチぐらいまでにしておいてくれ。」
「なんだよ、鷹さん。うちの女房の色気にやられたか? 」
「それはない、それは。俺の守備範囲は、青少年かマリューだ。八戒だと、年齢でひっかかる。・・・それより、軽食食いたいんたが・・・」
「ああ、すいません。悟空が全部食べちゃったんですよ。追加を用意してきますね。」
テーブルには、空っぽの皿しかない。悟空が、さっき食べてしまったらしい。何もなかったように八戒は立ち上がり、厨房に出向く。やれやれと、鷹のほうはソファに沈み込んだ。
「お盛んだねぇ、悟浄。」
「スキンシップじゃねぇーか。鷹さんよりは品行方正よ? 俺。」
「それはそうだけどさ。おまえさん、俺が来なかったら先に進む気満々だったろ? 」
「さすがに、先には進まないな。もったいないだろ? 」
「まあ、それはもったいないだろうな。八戒の欲情する様なんて、なかなかいい回春のクスリだ。」
「だろ? ああ、ビールでいいか? 」
事務室には、小振りの冷蔵庫がある。そちらにビール程度は冷やしている。それを取り出して、鷹に渡す。
「ロックオンが戻ってるのは聞いたか? 悟浄。」
「さっき、悟空から聞いた。まあ、うちには関係ないな。店で働かせるつもりなら、アスランのほうだ。」
「俺も、ロックオンには、あんまり用事はないな。せいぜい、ママの相手をしてもらうくらいだ。」
ラボのほうにデュナメスリペアを収納する仕事はあるが、それはすでに終わっている。後は、キラたちがデータを取る仕事があるぐらいで、直接、鷹が関わることでもない。今のところ、穏やかに連邦は創生されているので、組織のMSを使うことはないだろう。
食事が終わると、タバコが欲しくなる。胸ポケットからタバコを取り出したら、残りが一本だ。
「しまった。買い足しておくんだった。」
「三蔵さんのストックならあるぜ? 」
「義兄さんのはキツすぎてさ。」
「なら、その空き箱貸せ。コンビニまで、ひとっ走りしてくる。」
とりあえず、残りの一本に火をつけて、ぷかぁーっと紫煙を吐き出した。どうしても、食後に一服は欲しい。明日の朝の分がないので、タバコは欲しいが、実兄を一人で走らせるほどのことではない。ただ、ロックオンは、あまりここらの地理に詳しくないから、道案内は必要だ。
「なら、連れて行ってくれ。」
「疲れてるんだろ? 」
「疲れてるけど、あんたを一人で外に出すのは、なんかイヤ。」
「具合はいいんだ。ドクターからも散歩ぐらいならしてもいいって許可も貰ってる。」
「だから、一緒に行こう。」
「徒歩十分だぜ? 」
「だから、一緒に。なんか目ぼしいもんがあったら欲しいし。」
「そういうことなら。」
スパーッと紫煙を吐き出しているので、食器だけはシンクまで下げた。洗い物は後からでいい。どうせ、亭主も晩酌をする。往復しても三十分とかからないので、戸締りするほどのことはないから財布だけ持ったら、実弟が立ち上がってニールの財布を取上げてチェストに戻す。
「金ならあるよ。欲しいもんがあったら、あんたの分も買ってやる。」
「そうか? 」
「ああ、ほら行こう。」
吸い終ったタバコを消して、廊下にロックオンが出る。季節は初夏だ。寒いということもないから、そのまま玄関に歩き出す。玄関の扉だけ閉めると、二人して山門を潜った。
「具合いいのか? 」
「ああ、無茶しなきゃ、元気なもんだ。雨が降ると、ちょっとだるいけど、熱も出ないし動けるぐらいには回復した。」
「それならいいけど。ダーリンが心配してたぜ? あんた、大丈夫しか言わないってさ。」
「加減が、いまいちわからないんだ。どこぐらいからがオーバーワークになるのか、そこいらがな。」
ぶらぶらと夜道を二人して歩く。まだ、深夜枠ではないので、人通りもある。二人並んで、たわいもない話をしていれば、すぐにコンビニの看板が見えてくる。
「近いんだな。・・・ギネスないかな。」
「どうだろう。ここで酒を買うことはないからなあ。」
ブラリと二人してコンビニに入ったら、バイトの店員が驚いた顔をしている。それで、二人して顔を見合わせて笑った。そういえば、双子だ。同じ顔が二つ現れたら、びっくりするだろう。
「そっか、大人の双子って珍しいかもな。」
「そういや、そうだな。」
とりあえず、奥の冷蔵ケースへ足を進める。中にはアルコール関係もあるが、やはりギネスはない。その代わり、欧州のビールがあったので、ロックオンが取り出す。ニールがカゴを持って来て、それを入れてやる。
「なんかいらない? 」
「うーん、ポテチは? 」
「ああ、そういうのいいな。あと、チョコ? 」
「あ、カカオ70パーセントのやつないか? 三蔵さんが食べるんだけど、なかなか見つからなくてさ。」
「そんな特殊なもんはねぇーだろ。・・・あ、50はある。」
「じゃあ、それ買ってくれ。明日の朝、ヨーグルトとか欲しいなら、買え。あと、パンは食パンしかないから菓子パンが食べたいなら、それも。」
「クロワッサンとかある? 」
「ないよ。」
「ブリオッシュとかソーダパンは? 」
「ない。そういうもんは、うちにはない。明日、買出しに行こう。食べたいものがあるなら作るから。」
「請いしくならないの? 兄さん。」
実弟の質問に、ニールは苦笑した。食べたくなるのは味を覚えているからだ。ニールには、その請いしいという味の記憶がない。だから、故郷の味を食べたところで、おいしいとは思えても懐かしいと思うことはないのだ。
「・・・ならないんだ。あっちこっち、巡ってたし食べられれば十分だったから。」
「そうか・・・俺は、最近まで、あっちで暮らしてたから、たまに食べたくなるよ。」
「特区には、あっちの料理の店があるぜ? 食べに行けば? 」
「それなら、あんたが付き合えよ。そうだ、俺だけデートしてないんだ。身体の具合がいいなら、行けるよな。」
作品名:こらぼでほすと 二人2 作家名:篠義