流れ星 3
<旅立ち>
「形はどうであれ、ここは私たちにとってかけがえのない場所になると思います。
沖田艦長は喜ばないかもしれませんが一般市民の方々は沖田艦長やクルー
達を身近に感じてくれるかもしれません。身寄りのないクルーもいました。
そんなクルーもきっと居場所がある、って喜ぶと思うんです。」
ユキが何もない空き地の丘を見てつぶやくように言った。
「ひょっとしたら私のレリーフもあったかもしれないんです。みんなと一緒なら
心強いと思いますし。」
ユキの言葉にハッとする藤堂にユキは言葉を繋げる。
「一つの戦闘が終わると自分が息をしている事に気付くんです。そしてホッと
する事なく悲しい事実を確認しなくてはいけないんです。生活班はそういう
意味ではとてもつらかった。さっきまで笑ってた人の亡き殻をキレイにして
宇宙葬の準備をしなくてはいけないんですから…他の班の方も手伝うと言って
くれましたが任された仕事として…最後まで人として見送る為にできるだけの事を
しようとみんなで話し合い毎回送り出していました。
医務室に運ばれてきて治療中に亡くなる方もいらっしゃいました。
ケガをして地球に戻って来たけれど体の一部が欠損してしまった方も
いらっしゃいます。辛い戦いを潜り抜けて還って来た私達はここに眠るクルーを
忘れちゃいけないんです。」
ユキの瞳から涙が零れ落ちた。
「すみません、感情的になってしまいました。」
ユキが慌ててポケットからハンカチを出してそっと涙を拭いた。
「…ヤマトは本当は一度地球を飛び立ったら二度と地球へ戻って来ない艦として
造られた…地球最後の箱舟となるべき艦だった…。」
藤堂が突然ユキに話し始めた。ユキは驚いて藤堂の顔を見た。しかし藤堂は塩分のほとんどない復活したばかりの海を見ながら話している。
「優秀な頭脳を持つ一部の人間と艦を動かす優秀な人間だけを乗せて二度と
地球へ戻らない…新たな移住先を見つける箱舟として造られたのだ。その艦の
制作の責任者は真田くんだった。真田くんに箱舟を造るよう命令を下した時
無表情だった。そして一言“造るのは命令ですので造ります。しかし私は
乗りません”と断言したんだよ。当時私は長官職に就いておらずその計画には
全く関知していなかった。しかし極秘裏でこの事は遂行して軍の上層部の
一部しか知らされない超極秘任務だった。物資もままならない状態で造る艦…
地球を飛び立った後は軍は誰も何も責任を持たない無責任は計画だった。
それをイスカンダルの使者が全てを変えた。その通信カプセルを持ち帰った
のは古代と島だった。
沖田はその通信カプセルを見て私に“この艦をワシにくれ”と言った。通信内容を
聞いて自分が行く、と言い切った。その時すでに沖田は病に侵されていた。
しかし沖田はそれでも自分が行くと言い切った。私は大事な戦友を死地に
行かせたようなもんだ…。ここに沖田が還って来たら私を罵るだろうか?」
藤堂の視線は海から離れる事はなった。
「沖田艦長はよく長官との若い時の話をされました。」
ユキに言葉に藤堂の視線がユキに向いた。
「すみません、先に謝ります。沖田艦長がお話しされた言葉で私は話しますね。」
ユキが赤い目をしてにっこり笑う。
「<あいつとは…殴り合いのけんかをよくしたもんだ。でもそれ以上によく呑んだ。
あいつは表に立ってワシを守ってくれていた。あいつがいなかったらワシは
ここにいられんだろう。こうしてクルーに囲まれることもなかっただろう。
あいつは信用した人間だけはとことん護るいいやつだ。わしはあいつに出会え
て本当によかったと思っている。いいか?ユキ。絶対あいつに話すんじゃ
ないぞ?あいつはすぐにテングになる。ワシとあいつの違いは要領の良さだと
思っている。同じことしてるのにあいつよりワシの方がよく怒られたもんだ。
まぁ今はその分狸たちの中で立ち回ってるんだ大変だろうな。>って何度も
おっしゃっていました。そして長官の奥様がどれだけできた方か、とか
お子様が生まれた時の様子とか…。なんでもお子様が生まれた時ご一緒だった
そうですね。任務でトウキョウにいなかった、とか。学生時代はこんな腐れ縁
になるとは思っていなかったそうですよ。」
「形はどうであれ、ここは私たちにとってかけがえのない場所になると思います。
沖田艦長は喜ばないかもしれませんが一般市民の方々は沖田艦長やクルー
達を身近に感じてくれるかもしれません。身寄りのないクルーもいました。
そんなクルーもきっと居場所がある、って喜ぶと思うんです。」
ユキが何もない空き地の丘を見てつぶやくように言った。
「ひょっとしたら私のレリーフもあったかもしれないんです。みんなと一緒なら
心強いと思いますし。」
ユキの言葉にハッとする藤堂にユキは言葉を繋げる。
「一つの戦闘が終わると自分が息をしている事に気付くんです。そしてホッと
する事なく悲しい事実を確認しなくてはいけないんです。生活班はそういう
意味ではとてもつらかった。さっきまで笑ってた人の亡き殻をキレイにして
宇宙葬の準備をしなくてはいけないんですから…他の班の方も手伝うと言って
くれましたが任された仕事として…最後まで人として見送る為にできるだけの事を
しようとみんなで話し合い毎回送り出していました。
医務室に運ばれてきて治療中に亡くなる方もいらっしゃいました。
ケガをして地球に戻って来たけれど体の一部が欠損してしまった方も
いらっしゃいます。辛い戦いを潜り抜けて還って来た私達はここに眠るクルーを
忘れちゃいけないんです。」
ユキの瞳から涙が零れ落ちた。
「すみません、感情的になってしまいました。」
ユキが慌ててポケットからハンカチを出してそっと涙を拭いた。
「…ヤマトは本当は一度地球を飛び立ったら二度と地球へ戻って来ない艦として
造られた…地球最後の箱舟となるべき艦だった…。」
藤堂が突然ユキに話し始めた。ユキは驚いて藤堂の顔を見た。しかし藤堂は塩分のほとんどない復活したばかりの海を見ながら話している。
「優秀な頭脳を持つ一部の人間と艦を動かす優秀な人間だけを乗せて二度と
地球へ戻らない…新たな移住先を見つける箱舟として造られたのだ。その艦の
制作の責任者は真田くんだった。真田くんに箱舟を造るよう命令を下した時
無表情だった。そして一言“造るのは命令ですので造ります。しかし私は
乗りません”と断言したんだよ。当時私は長官職に就いておらずその計画には
全く関知していなかった。しかし極秘裏でこの事は遂行して軍の上層部の
一部しか知らされない超極秘任務だった。物資もままならない状態で造る艦…
地球を飛び立った後は軍は誰も何も責任を持たない無責任は計画だった。
それをイスカンダルの使者が全てを変えた。その通信カプセルを持ち帰った
のは古代と島だった。
沖田はその通信カプセルを見て私に“この艦をワシにくれ”と言った。通信内容を
聞いて自分が行く、と言い切った。その時すでに沖田は病に侵されていた。
しかし沖田はそれでも自分が行くと言い切った。私は大事な戦友を死地に
行かせたようなもんだ…。ここに沖田が還って来たら私を罵るだろうか?」
藤堂の視線は海から離れる事はなった。
「沖田艦長はよく長官との若い時の話をされました。」
ユキに言葉に藤堂の視線がユキに向いた。
「すみません、先に謝ります。沖田艦長がお話しされた言葉で私は話しますね。」
ユキが赤い目をしてにっこり笑う。
「<あいつとは…殴り合いのけんかをよくしたもんだ。でもそれ以上によく呑んだ。
あいつは表に立ってワシを守ってくれていた。あいつがいなかったらワシは
ここにいられんだろう。こうしてクルーに囲まれることもなかっただろう。
あいつは信用した人間だけはとことん護るいいやつだ。わしはあいつに出会え
て本当によかったと思っている。いいか?ユキ。絶対あいつに話すんじゃ
ないぞ?あいつはすぐにテングになる。ワシとあいつの違いは要領の良さだと
思っている。同じことしてるのにあいつよりワシの方がよく怒られたもんだ。
まぁ今はその分狸たちの中で立ち回ってるんだ大変だろうな。>って何度も
おっしゃっていました。そして長官の奥様がどれだけできた方か、とか
お子様が生まれた時の様子とか…。なんでもお子様が生まれた時ご一緒だった
そうですね。任務でトウキョウにいなかった、とか。学生時代はこんな腐れ縁
になるとは思っていなかったそうですよ。」