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流れ星 3

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  「ユキさんが仕事だと思ってしてた事かもしれませんが他の戦艦に乗ってた
   クルーは自分たちの様子をそこまでしっかり見てくれてる部署があること自体、
   驚いていましたよ。ま、基本自分の事は自分でやる、なんですがあれだけ
   長い航海ですからね…ユキさんたちがしてくれてた健康管理とか大事だったと
   思いますよ?それで救われた人もいるでしょうしね。」

実際、第一艦橋の仲間が一度はぐれかけた。元気のない相原に何度も声を掛けて佐渡に診せイメージルームで治療させたのもユキだった。常に聴覚を研ぎ澄ませる仕事をしている相原に神経を使わせすぎないよう気を配っていたが…

  「そう…かな?」

ユキは自分たちが陰で働いているのを見ていてくれたのかな?と思った。

  「まぁ誰もがそれが自分だけを見てる、って勘違いしてたみたいですけどね。」

南部が笑う。往路で告白したやつは見事に玉砕して行ったのだから…

  「いいんですよ、私はかなり初期段階でユキさんが古代と島にターゲット
   絞ったの気付いていましたから。」

南部の事はを聞いてユキは真っ赤になった。

  「世の中男と女しかいないんです。あの狭い空間であの限られた人数の中で
   運命の人と巡り合えたのは幸せだと思った方がいいですよ。あの絶望的な
   状況で人生を180度変える幸せな出逢いがあったんですから。」

確かにそうかも、とユキは思った。先日箱舟計画を藤堂から聞いたばかりだ。

  「そうね…でも私、古代くんと会えたのだけが幸せじゃないと思ってる。ヤマトの
   第一艦橋に勤められたからこうして南部くんとも知り合えたし太田くんも
   島くんも相原くんとも出逢えた。いろんなことがあったけど私、本当に
   幸せだな、って思うんだ。なにか決断しないといけない、って節目の時に
   いい方向へ向かわせてくれる運命を切り開いてくれる人が必ずいてくれるの。
   あ、南部くんに相談したかったのよ、結婚式に呼びたい人が数名いるんだけど
   いいかな?来てくれるかどうかわからないけどその人たちがいなかったら
   私はヤマトに乗れなかったかもしれない人ばっかりなんだ。」

ユキの脳裏に九州の国立小学校の校長と担任、塾の講師の浜崎、その友人の緒方の顔が浮かぶ。校長と担任は朝一番のバスで空港に向かう時、学校の前でユキを見送ってくれた姿を思い出す。

  「私、半分家出状態でトウキョウに出てきたの。すごい親不孝者なのよ?」

南部とユキはモールの中をゆっくり歩く。南部は何気なくユキの持っている荷物を持った。

  「大丈夫よ?」

ユキはそう言ったが

  「女性に荷物を持たせるような事させられません。」

ユキは南部の言葉に少し困ったように笑うと素直に買った荷物を南部の渡した。

  「私の母ね、普通が大好きなの。」

ユキが初めて自分の家族の話をした。

  「女の子なんだからお勉強ができたってしょうがない、って。でも私はドクター
   になりたかったから必死で勉強してた。飛び級の話がいつあってもいいように
   必死に勉強してた。だけど飛び級なんてそんなのしなくていいんです、って。
   私、そのままお母さんの思い通りに生きたくなくて飛び出しちゃったんだ。」

南部は静かに聞いていた。

  「塾も勝手にコースを変えてどんどん先に進んで…家で勉強すると集中できない
   からいつも塾で勉強してたし…。トウキョウきてからはその塾の先生の知り合いを
   紹介してもらって勉強してた。周りと同じ勉強してちゃ置いて行かれた時に
   付いていけないと思って必死だったな…。」

トウキョウシティに来てすぐ奨学金が入るわけじゃなかったからしばらくは自分でためた小遣いしかなくて交通費の捻出が大変だった事を思い出す。

  「そうそう、お金が無くって…気付いたらつんつるてんの服を着て大学通ってた。
   一年したら親が折れてお小遣いが少しずつマネーカードに入るようになって
   きて…奨学金も入って来てたからそれでやっと服を買ったのよね…。」

当時、ユキは成長期…もちろん思春期だからオシャレとかにも気になる年頃だったはず。

  「でも、何を買ったらいいか判らなくって…結局古着屋さんで買ってたかな。
   安かったし…すぐに着られなくなっちゃったしね。」

成長痛でヒザが痛かった~と笑う。

  「私ね、一度聞いたんですよ。あのテストの一位は誰か、って。」

南部が言っているのは小学校の時に行われた全国一斉テストの事だと思った。

  「実は私、ずっと2位だったんですよ。学校側には順位は知らされていない。
   私は訓練予備生になった後、いろんなところからそれを探って自分の順位を
   聞いたんです。」


作品名:流れ星 3 作家名:kei