流れ星 3
ユキはゆったりとしたワンピースを着ていた。足元はヒールのない丸っこいかわいい靴を履いていた。
「ユキさん、ってワンピースのイメージしかないんですが?」(南部)
「そうね、楽だからどうしても同じようなものになっちゃう。netで買うの。
サイズ余り関係ないし。」(ユキ)
「ワンピースは何枚持ってるんですか?」(南部)
「3枚…。」
ユキが恥ずかしそうに言った。
「そのほかには?」(南部)
「寝る時に着るTシャツはいっぱい持ってる。それに合わせたショートパンツも。
他は…。」(ユキ)
「まさかそれだけ?」(南部)
「そのまさか…かな。後はフォーマルで着れそうなツーピースぐらい。」
それは進が買ってくれたもの。
「あのね?ユキさん?」(南部)
「はい?」(ユキ)
「私達は多分、普通のサラリーマンの方よりいいお給料をもらっています。」
南部の言葉にユキが少し頷く
「なぜかと言えば、お給料には危険給が含まれているからです。」
もう一度ユキが頷く。
「そしてヤマトの一年の航海分のお給料が振り込まれましたね?」
ユキ、頷く。
「それはそれは一気に口座に入って来たから驚くべき数字だったでしょう?」
ユキ、大きくうなずく
「まさか全部使っちゃった、なんてことないですよね?」
ユキ、眼を見開いて大きく首を振る
「じゃ、心置きなく買い物しましょう。」
南部は笑顔でユキを伴って出かけた。
「へぇ…贅沢。」
綿素材の商品は値段も高い。南部が見ているのは足が長く見えるデニムのパンツ。
「ユキさん、これ、絶対いいですよ。」
普通のパンツだったら余裕で3本は買えてしまう値札が表示されている。
「南部くん、これ、高い…。」
ユキは値札を見ただけで触れない。
「なに言ってるんですか。いいですか?天然のコットン、いつになったら収穫
できると思ってるんですか。それに結婚したらこんな贅沢できないかも
しれませんよ?」
南部がなんとなくユキのサイズを想像してデニムのパンツを一本ユキに持たせてフィットルームを指さした。そしてスタッフに声を掛ける。
「履くだけよ?」
ユキはそう言ってフィットルームに消えた。
(う~ん、コットンってやっぱり肌心地いい…)
常に化繊にばかり包まれている体のせいか最初のコットンのひんやりした感じが不思議な感じだったが肌になじむような感じが気持ち良かった。
(はいちゃうと結構楽な感じなのね。)
よく考えたら大学に通っている時以来、履いてないような気がした。
(懐かしいな、贅沢しちゃおうか。)
鏡に後姿を映しチェックしていると声がかかった
「ユキさん、どうですか?」
南部の言葉にユキがカーテンを開ける。
「あ、いいじゃないですか。やっぱりお似合いですね。足が長いからこのまま
でも大丈夫っぽいですね。」
南部がユキの足元を見て言った。
「じゃ、これも履いてみてください。」
南部が渡したのはデニムのスカートだった。ちょっと短い気もしたが軍の制服の方が短いような気がしたのでそのまま受け取るとカーテンを閉めた。
(しっかし南部くん、私のサイズ、どうして知ってるの?)
ユキはふと不思議になってしまった。そして少し時間を置くとまた外から声を掛けられた。
「入ったけど…。」
制服以外で余りミニスカートを履かないのでちょっと心許なくて落ち着かない。
「見慣れてますけどきれいな脚、してますね。それは出さないともったいない
ですよ?じゃ、着替えて出てきてくださいね。」
南部がにっこり笑うとユキはそっとカーテンを閉めた。
「いいの?」
ユキが南部に聞いた。
「いいんですよ。いいじゃないですか、安く買えたんだから。」
寄ったお店は南部グループの店だった。つまり南部の顔で社割が効いてしまったのだ。
「でも…。」
ユキがまごついてると
「オヤジには報告済みですから。ここのモール、南部グループの開発なんです。
だから私もここで買い物する時は社割で買ってます。」(南部)
「なんだか南部くんのお父様にはお世話になってばっかりで申し訳ないんだ
けど…。」
ユキの体が小さくなる。
「いいじゃないですか?ヤマトに乗ってる時、私達がユキさんにお世話になって
たんだから。」(南部)
「そうかなぁ…特別何した、って覚えないんだけど…。」
ユキは生活班。艦の中では縁の下の力持ちだ。戦闘が始まればレーダー担当でいそがしいがそれ以外ではヤマト農園の管理をしたりクルーの健康管理も任されている。食事の様子を観察したりして食事を残していないか、とか顔色とかいろいろやる事があった。