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こらぼでほすと 二人3

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 ニールの過去は、かなりディープにアングラなわけで、そこいらのことは言いたくない。それで仕送りをしていたから、そんな金で、と、軽蔑されたくないし、人間として最低なことをしていたとも思っている。できれば、実弟には、そこいらのことは知られたくない。過去には戻れないが、そこいらはスルーしておいてもらいたいのだが、話の流れで、そんなことになるのが怖いから会話は緊張するのだ。実弟は、好きにさせてもらう、と、言うし、言いたくなければスルーしろ、ともおっしゃったが、それでも怖いものは怖い。
 クルマは空いた道を走っている。信号でクルマが停止すると、鷹は、くるりと横を向いた。そして、ぽふぽふとニールの頭を軽く叩いて撫でた。
「おまえさんにとっては、可愛い弟だろうけどさ。・・・あれも大人になってるからな。そういうことは考慮してると思うぞ? 」
「は? 」
「おまえさんの頭の中では、ロックオンは、十数年前の弟のままなんだろ? だから、そういうイメージで想像するから、軽蔑されるとか思ってるわけだ。そりゃ、子供なら軽蔑もするだろうさ。大人の事情ってやつだからさ。でも、あいつも、おまえと同じように大人にはなってるから、もう大人の事情ってのも理解してるだろう。ママニャンとは違うだろうが、世間の荒波には揉まれてるはずだ。そうじゃなかったら、こっちの世界に飛び込んでねぇーよ。おまえさんが、どうしてたかってのも、なんとなく想像はついてるんじゃないか? でも、軽蔑してる態度じゃないだろ? 」
「・・はい・・・」
 なんとなく想像はできてるから、と、実弟に言われたことはある。ぼんやりと想像しているんだろうとはニールも思っていたが、そうでもないのかもしれない。
「だからさ、逢いたくないなら、あいつのほうが降下しても寺に顔は出さないだろうし、降下も報せないでスルーすることだってできる。そうじゃないのは、あいつも、おまえさんと逢いたいからだ。それだけで十分だと、俺は思うけどね。」
 ぐりぐりと頭を撫でられていたが、信号が青に変わったので、鷹は前を向いてクルマをスタートさせた。信号を越えると、大きな建物が目に飛び込んでくる。駐車場に入って、車を停めた。
「まあ、そんなに構えてやるな。・・・おまえさんもだけど、あちらさんだって十年のブランクには戸惑ってる部分もあるだろう。・・・それは時間が解決するような問題だ。」
「・・・そういうものですか? 」
「そういうものですよ。俺の白猫ちゃんは臆病で人見知りさんだから、普通より時間がかかる。・・・まあ、そこが可愛いんだけどな。」
 はい、降りなさい、と、鷹が扉のロックを外して自身が先に出た。ニールも外へ出て、ホームセンターのエントランスへ一緒に歩く。
「鉢植えの花でも買ってやろう。カーネーションは切花だったからな。」
 今年も、母の日イベントは滞りなく行なわれた。日曜日だから、寺に年少組がやってきてカーネーション贈呈をやらかしてくれた。今年は、もう諦めたのか、沙・猪家夫夫も寺にやってきて一緒に八戒も贈呈されていた。あれが五月の中旬で、すでに、そのカーネーションは枯れてしまった。鷹はイベントには参加していなかったが、店で報告は受けていた。
「それなら、マリューさんに贈ればいいんじゃないですか? 」
「残念ながら、我が家には緑の手の持ち主はいない。確実に水不足で早々に枯れる。・・・毎日、水遣りできる人間しか育てられないもんなんだって、よくかわるよ。」
 鷹夫婦は、どちらも出張やら泊まりで、毎日、家に帰るような仕事形態ではないから、どうしても無理なことらしい。
「うちは家庭菜園があるからなあ。」
「そうそう、そういう日常の担当なんだから、花も咲かせてください。俺は、それで、とても和むんですよ? 白猫ちゃん。」
「滅多に寺には来ないくせに。」
「だから、俺が出向いたら咲いてるっていうシチュエーションがいいんだ。うん、ツボミのやつにしよう。」
「はいはい、それ、愛人宅にくるおっさんですけどね、鷹さん。」
「ははは・・・可愛い恋人の家を訪れるっていうのでも該当してるだろ? 」
「もうなんでもいいですよ。カートは、一番デカイやつ。あんた、荷物持ちですから、よろしく。」
 聞いてられない、と、結局、ニールはカートを自分で押して店に入る。それを背後から苦笑しつつ鷹も追い駆ける。ハイネからメールで、とりあえずママニャンのフォローしてくれ、という指示に出向いてきた。ロックオンに説明することもだが、ニール自身のフォローも必要だとハイネは知っていたからだ。亭主に愚痴は吐いているだろうが、軽くフォローするなら鷹あたりが適任だ。鷹も、ニールのことは気にかけているから、起きて、すぐに行動した。説教じみた小言でなくていい。ただ、大丈夫だと年上からアドバイスしてやるぐらいのことは、鷹なら朝飯前だ。

 眼の前の白猫は、さくさくと大物をカートに投げ込んでいる。寺は出入りが激しいので消耗品は大量に必要になる。値段を確認して下げ幅の大きい洗剤関係も容赦なく投げ込む。 しばらくかかりそうだから、鷹は園芸コーナーにいるぞ、と、声をかけて踵を返した。鉢植えの花なんて、鷹も買ったことはない。さて、どんなものがあるんだろう、と、物色して、いくつかを買った。



 スーパーで買出しもして戻ったが、実弟は、まだ寝ているようで居間に姿はない。クルマで移動しているから、いつもより早く戻った。
「よおう、三蔵さん、メシ食わせてもらうぜ。」
 どかどかと荷物を運び込んでいるのが、女房と女房の自称恋人だ。大型の消耗品があるから、ホームセンターにも出向いたようだ。
「昼は、親子丼のリクエストが入ったんですが、あんたは? 」
「同じもんでいい。・・・おい、その鉢植えは? 」
 居間に運び込まれた荷物には、三つの鉢植えもあった。寺では、あまりお目にかからない代物だ。
「俺からママニャンにプレゼント。こういうの和むだろ? 」
 小さな鉢植えは、ミニバラだ。残り二つはアジサイとスノウボールという小さな花が植え込まれたものだった。
「こっちは、本堂の辺りに配置して、これは、居間に飾ります。・・・ロックオンは、まだ寝てるんですか? 」
 チェストの上にミニバラを置いて、女房が尋ねる。あれから小一時間だが、まだ沈黙したままだ、と、返したら、「疲れてるんだなあ。」 と、女房は息を吐く。
「寝かせとけ。腹が減ったら起きるだろ。」
「そうですね。鷹さん、お茶ですか? ビールですか? 」
「お茶っていうか、アイスコーヒーとかないか? 」
「ありますよ。」
 アイスティーとアイスコーヒー、麦茶は常時、作り置きしているので、頼めば、すぐに出て来る。荷物を片付けると、昼の準備が始まる。コーヒーを飲み終えた鷹のほうは、鉢植えを本堂に運ぶことにした。
作品名:こらぼでほすと 二人3 作家名:篠義