こらぼでほすと 二人4
鷹のほうは鉢植えを本堂の脇に運び、受け皿も置いて配置した。アジサイは、まだツボミの状態で、これから開いていくところだ。花の色は青らしいが、まだ色はついていない。
配置が終わると、脇部屋の障子を開いた。まだ、ぐったりと寝ているロックオンがいる。そろそろ起こしてもいいだろう、と、足でケツあたりをちょいちょいと揺する。うーと唸るような声がして、うごうごと動き始めた。
「ロックオン、そろそろ昼だぞ? 」
鷹が何度か声をかけたら、ようやく起きる。天然パーマの髪は四方八方に寝癖で飛び出ている。
「あふーーーあれ? 」
「よおう、白猫君。」
「なんか緊急ですか? 」
鷹がいるので、何事か伝言か? と、のそのそと起き上がる。携帯端末で組織と直接にやりとりすることは可能だが、内容によっては『吉祥富貴』のサーバー宛に届いたりする。
「いや、ママニャンの取り扱い説明に参上した。・・・しばらく、寺に滞在するなら、散歩に同行してもらいたいっていうヌルイ伝言。」
ハイネは、仕事の都合で夜まで戻れない。一日目から無茶な散歩をすることはないだろうが、何をしでかすかわからないニールだから、ハイネも心配した。ただでさえ、手のかかる紫猫もどきが離れているから、ちょっと精神的にダウンしている。余計なことをしでかされたら目も当てられない。大概、そういうダウンは、ハイネが留守の時に起こるので用心のため、鷹に頼んだ。
「・・・・えーっと、ただいまおかしい? とか。」
「そこまでじゃないんだが、おまえさんのお兄様は、いろいろと複雑なんでな。ついでに、自分の体力を過信するから。」
「そういや、限界がわからないって、昨日言ってたっけ。」
手のかかる、と、文句を言いつつロックオンは、髪の毛を撫で上げる。
「いつもは、リジェネが管理してくれてるんだが、生憎とヴェーダに戻っててな。」
それも昨晩聞いた。ロックオンにしても、あのイノベイドとは、まだ顔を合わせたくないから、都合が良かった。完全に目が覚めたのを確認してから、鷹は取り扱い説明をしてくれる。
散歩は一日二回程度。
時間は一時間。
気温が高い時は、時間は短めに設定。
周囲二キロ圏内の移動限定。
ランニング不可。
てな話だ。大型犬の散歩のような内容だ。まあ、その程度なら付き合っても負担ではない。
「それ、二人で外出してもいいんだよな? 鷹さん。」
「散歩以外ってことか? 」
「兄さんと呑みに行きたいって思ってるんだが、そういうのもオッケー? 」
「別に構わんが、飲ますと寝るぞ? 薄い水割りとかカクテルぐらいで酔うからな。」
「外泊するさ。」
「実兄相手に、そういう作戦は、いかがなものかな? 白猫君。ご無体がすぎると、三蔵さんに凹だぞ。」
指摘されて、はたとロックオンも気付く。それは意中の女をゲットする時に使う安い方法だ。
「・・・・俺、実の兄相手に欲情しませんが? てか、ねぇーだろ? ニールを抱くとかねぇーからっっ。」
「そうなのか。俺は、てっきりやってみたいのか、と、感心したけどな。近親相姦っていうのも、そそるシチュエーションだ。」
「うわぁー退くわぁー。うちの兄さんはノンケだし、俺が、そんなことしてみろよ、絶対に、賭けてもいいけど世を儚むぞっっ。あの人、そういうことに関しては、至極真っ当な神経なんだよっっ。そういう世界を開かせたいなら、あんたがやればいいだろ? 自称恋人さんよっっ。」
「やってもいいのか? 」
そう簡単に尋ねられて、ロックオンは詰まる。別に、兄が新しい世界の扉を開くのは、どうでもいいのだが、日頃の様子からして、開いたら開いたで、ややこしいことになりそうな気がする。だいたい、兄がノンケだったから、刹那は子供として定着していたのだ。それが覆ると、刹那との夫夫関係が壊れそうな気がする。なんせ、刹那と兄は、ある意味ラブラブではあるのだ。刹那に、そのスキルがあって、兄が応えられるとなれば、確実に、ロックオンは棄てられる。そう考えると、ノンケのままのほうが安全だ。それを素早く計算して答えたら、返事が、さらに絶句するものだった。
「うちの兄さんが、乗り気ならな。」
「乗り気じゃなくても誘えば乗ると思うけど? 俺は拒否られるだろうが、間男あたりならオッケーする。」
「はあ? 」
「・・・あのな・・・おまえのお兄様は、究極に無頓着になってるの。知らなかったのか? させろって言えば、どうぞって返してくるわけ? 三蔵さんもノンケだから、ここんちは何もないだけだ。」
「ええっっ。」
「ママニャンにとって、自分自身なんて、どうでもいいんだよ。」
「それ、壊れてる部分ってことだよな? 鷹さん。」
「そう、壊れてるんだ。日常生活には支障はないけど、どこかおかしいんだ。その部分はフォローしてやってくれ。」
「何をすればいい? 」
「存分に世話させればいい。それだけが楽しみになってるから。」
「わかった。」
「外泊すんなら、三蔵さんに話は通せ。」
やはり、壊れてるんだな、と、ロックオンは自嘲する。どんなに自分が家族として愛してると叫んでも届かないのだ。どこかがおかしいから、『吉祥富貴』でもフォローしてくれているらしい。
「それから、リジェネは、ママニャンが壊れてることを理解して、ここに居候してくれている。それについては否定的な意見は言うなよ? ママニャンにとっては、精神安定剤みたいなものだからな。」
「もしかして、今回、俺の降下予定があったから引き上げたのか? 」
「いや、リジェネ自身のメンテナンスやらなんやらがあってヴェーダに戻った。ちょっと時間がかかってるのは、それもあってのことかもしれないな。」
まだ、鷹はリジェネの秘密計画を知らないので、そこいらまでは把握していない。実際は、イノベイドの新しい素体を作るために、時間がかかっている。なんせ、新しい遺伝子パターンを導入して、レイそっくり瓜二つの素体を作らなければならないからだ。予想していたより、時間がかかる作業だった。装置の微調整如何で、レイと似ていない顔になるのだ。
昼飯時に、義兄に、外泊してもいいか? と、尋ねたら、「朝の支度だけさせてからにしろ。」 と、返された。
「外泊? ただ、メシ食って酒呑むだけだろ? タクシーで帰ればいいじゃないか。」
「あんたがお陀仏しなければな。」
「おまえがキツイのを飲ませなけりゃ大丈夫。」
「だから、加減がわかんないから、最悪、そうなるって言ってんの。俺が仕切るんだから、黙ってエスコートされろっっ。」
「はいはい、わかったよ。それ、いつの話になるんだ? 店の出勤日はダメだぞ? できたら金曜日とかがいいな。平日は悟空の弁当したいんだ。」
「金曜でいいよ。スーツ、持って帰って来いよ。」
今日が水曜日だ。下調べして、準備するなら時間としては、ちょうどいい。
「鷹さん、お代わりは? 」
「もうちょっと盛ってくれ。あと、味噌汁も。」
「はいはい。」
亭主は、無言でドンブリを突き出しているので、それに盛り上げて返す。白メシを盛って、親子丼の具材をかけるだけだから素早い。午後から悟空のおやつになるので、大量に作ってある。
配置が終わると、脇部屋の障子を開いた。まだ、ぐったりと寝ているロックオンがいる。そろそろ起こしてもいいだろう、と、足でケツあたりをちょいちょいと揺する。うーと唸るような声がして、うごうごと動き始めた。
「ロックオン、そろそろ昼だぞ? 」
鷹が何度か声をかけたら、ようやく起きる。天然パーマの髪は四方八方に寝癖で飛び出ている。
「あふーーーあれ? 」
「よおう、白猫君。」
「なんか緊急ですか? 」
鷹がいるので、何事か伝言か? と、のそのそと起き上がる。携帯端末で組織と直接にやりとりすることは可能だが、内容によっては『吉祥富貴』のサーバー宛に届いたりする。
「いや、ママニャンの取り扱い説明に参上した。・・・しばらく、寺に滞在するなら、散歩に同行してもらいたいっていうヌルイ伝言。」
ハイネは、仕事の都合で夜まで戻れない。一日目から無茶な散歩をすることはないだろうが、何をしでかすかわからないニールだから、ハイネも心配した。ただでさえ、手のかかる紫猫もどきが離れているから、ちょっと精神的にダウンしている。余計なことをしでかされたら目も当てられない。大概、そういうダウンは、ハイネが留守の時に起こるので用心のため、鷹に頼んだ。
「・・・・えーっと、ただいまおかしい? とか。」
「そこまでじゃないんだが、おまえさんのお兄様は、いろいろと複雑なんでな。ついでに、自分の体力を過信するから。」
「そういや、限界がわからないって、昨日言ってたっけ。」
手のかかる、と、文句を言いつつロックオンは、髪の毛を撫で上げる。
「いつもは、リジェネが管理してくれてるんだが、生憎とヴェーダに戻っててな。」
それも昨晩聞いた。ロックオンにしても、あのイノベイドとは、まだ顔を合わせたくないから、都合が良かった。完全に目が覚めたのを確認してから、鷹は取り扱い説明をしてくれる。
散歩は一日二回程度。
時間は一時間。
気温が高い時は、時間は短めに設定。
周囲二キロ圏内の移動限定。
ランニング不可。
てな話だ。大型犬の散歩のような内容だ。まあ、その程度なら付き合っても負担ではない。
「それ、二人で外出してもいいんだよな? 鷹さん。」
「散歩以外ってことか? 」
「兄さんと呑みに行きたいって思ってるんだが、そういうのもオッケー? 」
「別に構わんが、飲ますと寝るぞ? 薄い水割りとかカクテルぐらいで酔うからな。」
「外泊するさ。」
「実兄相手に、そういう作戦は、いかがなものかな? 白猫君。ご無体がすぎると、三蔵さんに凹だぞ。」
指摘されて、はたとロックオンも気付く。それは意中の女をゲットする時に使う安い方法だ。
「・・・・俺、実の兄相手に欲情しませんが? てか、ねぇーだろ? ニールを抱くとかねぇーからっっ。」
「そうなのか。俺は、てっきりやってみたいのか、と、感心したけどな。近親相姦っていうのも、そそるシチュエーションだ。」
「うわぁー退くわぁー。うちの兄さんはノンケだし、俺が、そんなことしてみろよ、絶対に、賭けてもいいけど世を儚むぞっっ。あの人、そういうことに関しては、至極真っ当な神経なんだよっっ。そういう世界を開かせたいなら、あんたがやればいいだろ? 自称恋人さんよっっ。」
「やってもいいのか? 」
そう簡単に尋ねられて、ロックオンは詰まる。別に、兄が新しい世界の扉を開くのは、どうでもいいのだが、日頃の様子からして、開いたら開いたで、ややこしいことになりそうな気がする。だいたい、兄がノンケだったから、刹那は子供として定着していたのだ。それが覆ると、刹那との夫夫関係が壊れそうな気がする。なんせ、刹那と兄は、ある意味ラブラブではあるのだ。刹那に、そのスキルがあって、兄が応えられるとなれば、確実に、ロックオンは棄てられる。そう考えると、ノンケのままのほうが安全だ。それを素早く計算して答えたら、返事が、さらに絶句するものだった。
「うちの兄さんが、乗り気ならな。」
「乗り気じゃなくても誘えば乗ると思うけど? 俺は拒否られるだろうが、間男あたりならオッケーする。」
「はあ? 」
「・・・あのな・・・おまえのお兄様は、究極に無頓着になってるの。知らなかったのか? させろって言えば、どうぞって返してくるわけ? 三蔵さんもノンケだから、ここんちは何もないだけだ。」
「ええっっ。」
「ママニャンにとって、自分自身なんて、どうでもいいんだよ。」
「それ、壊れてる部分ってことだよな? 鷹さん。」
「そう、壊れてるんだ。日常生活には支障はないけど、どこかおかしいんだ。その部分はフォローしてやってくれ。」
「何をすればいい? 」
「存分に世話させればいい。それだけが楽しみになってるから。」
「わかった。」
「外泊すんなら、三蔵さんに話は通せ。」
やはり、壊れてるんだな、と、ロックオンは自嘲する。どんなに自分が家族として愛してると叫んでも届かないのだ。どこかがおかしいから、『吉祥富貴』でもフォローしてくれているらしい。
「それから、リジェネは、ママニャンが壊れてることを理解して、ここに居候してくれている。それについては否定的な意見は言うなよ? ママニャンにとっては、精神安定剤みたいなものだからな。」
「もしかして、今回、俺の降下予定があったから引き上げたのか? 」
「いや、リジェネ自身のメンテナンスやらなんやらがあってヴェーダに戻った。ちょっと時間がかかってるのは、それもあってのことかもしれないな。」
まだ、鷹はリジェネの秘密計画を知らないので、そこいらまでは把握していない。実際は、イノベイドの新しい素体を作るために、時間がかかっている。なんせ、新しい遺伝子パターンを導入して、レイそっくり瓜二つの素体を作らなければならないからだ。予想していたより、時間がかかる作業だった。装置の微調整如何で、レイと似ていない顔になるのだ。
昼飯時に、義兄に、外泊してもいいか? と、尋ねたら、「朝の支度だけさせてからにしろ。」 と、返された。
「外泊? ただ、メシ食って酒呑むだけだろ? タクシーで帰ればいいじゃないか。」
「あんたがお陀仏しなければな。」
「おまえがキツイのを飲ませなけりゃ大丈夫。」
「だから、加減がわかんないから、最悪、そうなるって言ってんの。俺が仕切るんだから、黙ってエスコートされろっっ。」
「はいはい、わかったよ。それ、いつの話になるんだ? 店の出勤日はダメだぞ? できたら金曜日とかがいいな。平日は悟空の弁当したいんだ。」
「金曜でいいよ。スーツ、持って帰って来いよ。」
今日が水曜日だ。下調べして、準備するなら時間としては、ちょうどいい。
「鷹さん、お代わりは? 」
「もうちょっと盛ってくれ。あと、味噌汁も。」
「はいはい。」
亭主は、無言でドンブリを突き出しているので、それに盛り上げて返す。白メシを盛って、親子丼の具材をかけるだけだから素早い。午後から悟空のおやつになるので、大量に作ってある。
作品名:こらぼでほすと 二人4 作家名:篠義