こらぼでほすと 二人5
散歩の最中は、割と世間話に終始する。昼でも夜でも、これといって難しいことは言わない。木曜は出勤だったので、ロックオンも店に顔を出したが、指名があるわけでもないから、カウンターで坊主と飲んでいただけで仕事はしていない。
待望の金曜日は、少し寒い感じの天気だった。夕方、いつものように全員が出勤すると、寺は静かになる。ハイネから、いくつかの店のデータが送られてきて、用心のためにホテルは予約したほうがいい、という忠告もついていた。呑んで帰るよりは、そのまま沈没させて翌日、帰ったほうが安全だ。坊主にも、そう告げたら、「それでいい。」 という返事だった。
実兄のほうは、翌朝の支度をして、居間に座っている。まだ日のある夕方で、出かけるとは思っていないらしい。
「そろそろ着替えろよ。」
「え? まだメシには早いだろ。」
「散歩すりゃいいじゃねぇーか。体力づくりするんだろ? 」
「お、おう? 」
食事するには、確かに時間が早い。とりあえず、ブラブラと歩くのもいいし、映画を観てもいい。そう提案したら、ブラブラと歩きたいという。それなら、それでいいだろう、と、ホテルの駐車場にクルマは停めた。チェックインだけ済ませて、街へと繰り出した。特区には、いくつかの繁華街があり、高級百貨店などが隣接する地域がある。ハイネの情報で、そういう場所の店を予約した。食事して、ブラブラして酒を呑むというなら、これぐらいの距離が楽だ。
「最近、みんなが心配するからショッピングモールとかも行ってないんだ。店以外は周囲二キロに存在しろって言われててさ。」
「あーあんた、どこかで倒れたりしたら問題だもんな。」
「もう大丈夫だと思うんだけど、こればかりはなあ。」
「雨でもダウンしなくなったのか? 」
「動けないほどじゃ、なくなった。多少、だるかったり頭痛はするけど、その程度になったぜ。・・・・どっか入るか? 」
「うーん、これといって欲しいもんはないんだけど・・・スニーカー買おうかな。あんたの靴だと、ちょっと窮屈だ。」
ランニングするのに、兄のスニーカーを借りたが、ちょっと小さかった。靴擦れするほどではないが、長時間だと爪先辺りが痛くなる。
「身長一緒なのに違うもんだな。」
「肉のつき具合じゃね? 俺は、そこそこ鍛えてますんでね。それより、もっとカジュアルなのなかったのか? 完全にサラリーマンだぜ? ニール。」
実兄が職場から借り出してきたのは、きっちりしたスーツだった。ホストの衣装の割りに、ごく普通のスーツで、見るからに接待に出て来たサラリーマンに見える。
「一番硬そうなのにしたんだけど、ダメか? 」
「いや、もっとカジュアルな感じだと思ってた。」
対して、ロックオンはスーツではあるが、カジュアルな感じの麻の上下だ。先日、外出した時に買い求めてきた。
「あんたのも一着選ぼうか? なんか仕事の接待みたいだ、それ。」
「いいよ、どうせ着ることもないから。別に、これでドレスコードはクリアーできるだろ。」
もちろん、上質なスーツなので、ドレスコードは難なくクリアーだが、これではどちらが本業ホストなのか、わからない。きちんとした服装をすれば、サラリーマンに見えるとは、ロックオンも思わなかった。普段、ジャージやらデニム姿しか見ていなかったから、兄が恰好良く見えてしまう。
「ハイネと呑みにでもいけばいいじゃないか。」
「家呑み大好きだぜ? ハイネ。それにドレスコードがある時は、店の服を借りればいいしさ。くだけたほうがいいなら着替えて来ようか? まだ時間もあるし。」
「そこまではいい。・・・・とりあえず、靴。」
「はいはい。」
手近の店で、靴を物色した。実兄は、ふらふらと革靴のほうを眺めている。買うものを決めて近寄ったら、「これ、刹那に似合いそうだ。」 と、革靴を指差した。
「この間、ロックオンのコーディネートを見て、もう、そういうのが似合う年なんだなって思ったんだ。」
「ああ、似合っただろ? そろそろスーツ着せても見られる感じになってきた。この間は、軽い感じにしたんだ。」
「センスいいよな? おまえさん。オシャレな刹那にびっくりした。」
「あんたはダーリンの好きな単色コーデをするからだろ? ダーリン、柄物もいいんだ。当人は、似合ってるかどうかわかんないって言ってたけどさ。」
「そこいらのことは頼むわ。あいつ、センスからっきしだからさ。」
「任せされますよ、俺のダーリンなんだから。・・・確かに、そういうローファは履き易いだろうな。」
「だろ? でも、サイズがなあ。あいつ、どんどん大きくなるから、当人を連れて来ないとな。」
「そうだな。まだ成長期だから。」
残念だが、そういうことだ。刹那は、まだ成長期で、半年逢わないとサイズが違ってくる。服なら多少、大きめでもいいが、靴となると、そうもいかない。次回、刹那が降りて来たら選ばせる、と、結論して店は出た。次に、ちょっとお高そうなセレクトショップのウィンドの前でロックオンが足を停める。
「ああいうの、兄さん、似合うぜ? これからサマーセーターとか必要だろ? 」
「俺はいいよ。なんだかんだとトダカさんやハイネが服をくれるから、あることはあるんだ。」
「あんた、ジャージとデニムしか見たことないぜ? 」
「家事するのに汚れるだろ? この間の旅行の時は着てた。その前にトダカさんが一式揃ったのをくれたし、ラクスも用意してくれたからさ。」
服装に無頓着なので、トダカや歌姫が、そこいらはフォローしている。せっかくの旅行に、ジャージで行かれては同行するほうが困るからだ。レイたちも用意したいのだが、高額商品なんて受け取らないと常々言われているから、そこいらは文句を言わせないトダカが用意している。
「散歩は着替えたら? 汚れないんだから。」
「え? ご近所探訪するぐらいで着替えるのは面倒だ。・・・俺に似合うなら、おまえにも似合うんだろ? 買ってやろうか? 」
「俺は、こういうんじゃなくて、もうちょっとくだけた感じが好きだな。ちょっと入ってもいい? 」
「ああ、入ろう。」
そう、双子なので背格好はマルッきり一緒だ。ロックオンが、ここに滞在中は着ればいいが、後は季節が変わるから、その後は兄がお下がりに着ればいいと思いついた。何を着せても文句は言わないだろうから、兄に似合いそうなところを選ぶことにする。
「こういうの、どう? 」
そろそろ夏物が主流だから、そこいらを流して歩く。兄が、いいんじゃね? と、返事するのは想定内だ。ぶらぶらして、刹那には似合いそう、とか、リジェネも、こういうの好きかな、とか言うので、それには適当な相槌を打っておく。気楽に着られるシャツやTシャツなんかをピックアップする。他には、普段使いのイージーパンツなんかだ。ウエストは違うから、ゴムが入った緩いものにする。顔映りが見たいから、と、兄に着替えさせて加減を見れば、きちんとオシャレになる。これぐらいの恰好していれば、イケメンで通るのにな、と内心でツッコミだ。大量に買い物して、荷物はクルマに運んだ。明日の着替えにもなるし、ちょうどいい。そろそろ、予約した時間だから、食事に出向くことにする。
待望の金曜日は、少し寒い感じの天気だった。夕方、いつものように全員が出勤すると、寺は静かになる。ハイネから、いくつかの店のデータが送られてきて、用心のためにホテルは予約したほうがいい、という忠告もついていた。呑んで帰るよりは、そのまま沈没させて翌日、帰ったほうが安全だ。坊主にも、そう告げたら、「それでいい。」 という返事だった。
実兄のほうは、翌朝の支度をして、居間に座っている。まだ日のある夕方で、出かけるとは思っていないらしい。
「そろそろ着替えろよ。」
「え? まだメシには早いだろ。」
「散歩すりゃいいじゃねぇーか。体力づくりするんだろ? 」
「お、おう? 」
食事するには、確かに時間が早い。とりあえず、ブラブラと歩くのもいいし、映画を観てもいい。そう提案したら、ブラブラと歩きたいという。それなら、それでいいだろう、と、ホテルの駐車場にクルマは停めた。チェックインだけ済ませて、街へと繰り出した。特区には、いくつかの繁華街があり、高級百貨店などが隣接する地域がある。ハイネの情報で、そういう場所の店を予約した。食事して、ブラブラして酒を呑むというなら、これぐらいの距離が楽だ。
「最近、みんなが心配するからショッピングモールとかも行ってないんだ。店以外は周囲二キロに存在しろって言われててさ。」
「あーあんた、どこかで倒れたりしたら問題だもんな。」
「もう大丈夫だと思うんだけど、こればかりはなあ。」
「雨でもダウンしなくなったのか? 」
「動けないほどじゃ、なくなった。多少、だるかったり頭痛はするけど、その程度になったぜ。・・・・どっか入るか? 」
「うーん、これといって欲しいもんはないんだけど・・・スニーカー買おうかな。あんたの靴だと、ちょっと窮屈だ。」
ランニングするのに、兄のスニーカーを借りたが、ちょっと小さかった。靴擦れするほどではないが、長時間だと爪先辺りが痛くなる。
「身長一緒なのに違うもんだな。」
「肉のつき具合じゃね? 俺は、そこそこ鍛えてますんでね。それより、もっとカジュアルなのなかったのか? 完全にサラリーマンだぜ? ニール。」
実兄が職場から借り出してきたのは、きっちりしたスーツだった。ホストの衣装の割りに、ごく普通のスーツで、見るからに接待に出て来たサラリーマンに見える。
「一番硬そうなのにしたんだけど、ダメか? 」
「いや、もっとカジュアルな感じだと思ってた。」
対して、ロックオンはスーツではあるが、カジュアルな感じの麻の上下だ。先日、外出した時に買い求めてきた。
「あんたのも一着選ぼうか? なんか仕事の接待みたいだ、それ。」
「いいよ、どうせ着ることもないから。別に、これでドレスコードはクリアーできるだろ。」
もちろん、上質なスーツなので、ドレスコードは難なくクリアーだが、これではどちらが本業ホストなのか、わからない。きちんとした服装をすれば、サラリーマンに見えるとは、ロックオンも思わなかった。普段、ジャージやらデニム姿しか見ていなかったから、兄が恰好良く見えてしまう。
「ハイネと呑みにでもいけばいいじゃないか。」
「家呑み大好きだぜ? ハイネ。それにドレスコードがある時は、店の服を借りればいいしさ。くだけたほうがいいなら着替えて来ようか? まだ時間もあるし。」
「そこまではいい。・・・・とりあえず、靴。」
「はいはい。」
手近の店で、靴を物色した。実兄は、ふらふらと革靴のほうを眺めている。買うものを決めて近寄ったら、「これ、刹那に似合いそうだ。」 と、革靴を指差した。
「この間、ロックオンのコーディネートを見て、もう、そういうのが似合う年なんだなって思ったんだ。」
「ああ、似合っただろ? そろそろスーツ着せても見られる感じになってきた。この間は、軽い感じにしたんだ。」
「センスいいよな? おまえさん。オシャレな刹那にびっくりした。」
「あんたはダーリンの好きな単色コーデをするからだろ? ダーリン、柄物もいいんだ。当人は、似合ってるかどうかわかんないって言ってたけどさ。」
「そこいらのことは頼むわ。あいつ、センスからっきしだからさ。」
「任せされますよ、俺のダーリンなんだから。・・・確かに、そういうローファは履き易いだろうな。」
「だろ? でも、サイズがなあ。あいつ、どんどん大きくなるから、当人を連れて来ないとな。」
「そうだな。まだ成長期だから。」
残念だが、そういうことだ。刹那は、まだ成長期で、半年逢わないとサイズが違ってくる。服なら多少、大きめでもいいが、靴となると、そうもいかない。次回、刹那が降りて来たら選ばせる、と、結論して店は出た。次に、ちょっとお高そうなセレクトショップのウィンドの前でロックオンが足を停める。
「ああいうの、兄さん、似合うぜ? これからサマーセーターとか必要だろ? 」
「俺はいいよ。なんだかんだとトダカさんやハイネが服をくれるから、あることはあるんだ。」
「あんた、ジャージとデニムしか見たことないぜ? 」
「家事するのに汚れるだろ? この間の旅行の時は着てた。その前にトダカさんが一式揃ったのをくれたし、ラクスも用意してくれたからさ。」
服装に無頓着なので、トダカや歌姫が、そこいらはフォローしている。せっかくの旅行に、ジャージで行かれては同行するほうが困るからだ。レイたちも用意したいのだが、高額商品なんて受け取らないと常々言われているから、そこいらは文句を言わせないトダカが用意している。
「散歩は着替えたら? 汚れないんだから。」
「え? ご近所探訪するぐらいで着替えるのは面倒だ。・・・俺に似合うなら、おまえにも似合うんだろ? 買ってやろうか? 」
「俺は、こういうんじゃなくて、もうちょっとくだけた感じが好きだな。ちょっと入ってもいい? 」
「ああ、入ろう。」
そう、双子なので背格好はマルッきり一緒だ。ロックオンが、ここに滞在中は着ればいいが、後は季節が変わるから、その後は兄がお下がりに着ればいいと思いついた。何を着せても文句は言わないだろうから、兄に似合いそうなところを選ぶことにする。
「こういうの、どう? 」
そろそろ夏物が主流だから、そこいらを流して歩く。兄が、いいんじゃね? と、返事するのは想定内だ。ぶらぶらして、刹那には似合いそう、とか、リジェネも、こういうの好きかな、とか言うので、それには適当な相槌を打っておく。気楽に着られるシャツやTシャツなんかをピックアップする。他には、普段使いのイージーパンツなんかだ。ウエストは違うから、ゴムが入った緩いものにする。顔映りが見たいから、と、兄に着替えさせて加減を見れば、きちんとオシャレになる。これぐらいの恰好していれば、イケメンで通るのにな、と内心でツッコミだ。大量に買い物して、荷物はクルマに運んだ。明日の着替えにもなるし、ちょうどいい。そろそろ、予約した時間だから、食事に出向くことにする。
作品名:こらぼでほすと 二人5 作家名:篠義