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こらぼでほすと 二人6

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店を出たら、百貨店なんかの大きな商業施設は閉店している時間になっていた。ショウウインドウの明かりはあるから、ブラブラと散歩するには、ちょうどいい。
「ちょっと歩かないと腹がこなれないだろ? 」
「そうだな。まあ、ブラブラと戻れば、いい感じじゃね? 特区は、ほんと不夜城だよな。」
 二十四時間、繁華街は灯りが消えることはない。ロックオンが暮らしていた街は、この時間なら人通りもまばらだったし、何より店なんか開いているのは、コンビニぐらいだったが、まだまだ小さな店は開いている。
「裏通りに、歓楽街があるからだろ。俺は、あんまり来たことがないけど、うちの店も深夜まで開いてるからな。」
「あーそういうことか。・・・なるほど。」
「店の傍のショッピングモールは零時まで開いてるし、特区は夜も賑やかだ。」
「大都市ってわけだ。」
「そういうことなんだろうな。寺の周辺は、九時を過ぎたら人通りはなくなるから、一般人は、どこでも同じなんだろうけどさ。」
「てか、あそこ、あんまり歩きたくないと思うぜ。墓と寺だもんな。雰囲気ありすぎる。」
「そうかな。火葬だから、何にも残ってないぞ。俺、まだ寺で幽霊にお目にかかってないし。」
「・・・義兄さんがいたら、出れねぇーよ。マグナムで撃たれるんだからさ。」
 確かに、亭主の前には出て来られないだろう。いきなり、死んだヤツが動くな、とか言いながら、容赦なくマグナムを撃ちこむか、独特のお経で撃退するに違いない。想像すると、おかしくて笑ってしまった。
「あはははは・・・確かに。あの人の射撃の腕は超一級品だ。幽霊でも撃てるだろうな。」
「ニールもだろ? あんたの成績は異常だぞ? 」
 まだ、その成績を越えられないロックオンは、そうツッコミをする。的中率九十パーセント超えなんて、どうしたって出せないのだ。
「まあ、そりゃ・・・・仕事だったからな。でも、今は動かない的にも当たらない体たらくだ。」
「・・・・訓練してるのか? 」
「いや、単なる暇つぶし。亭主が気晴らしに撃つ時に、反動の少ないコルトで遊んでるだけだ。筋肉がないから反動が流せないんだ。いつも亭主が、大笑いしてるよ。」
 三蔵は、腕が鈍らないように適度に訓練はしている。たまに、寺の夫夫ふたりで本堂の地下で遊んでいたりするのだ。超一級スナイパーだったニールは、テクニックはあるが、それを使いこなす筋肉も体力もないから、ひどい成績だ。
「そういう物騒なことはするなっっ。あんた、もう撃つことはないんだからなっっ。」
「今のところはないけど、いずれ自分を守るぐらいのことは出来るようになりたいとは思ってる。亭主に守ってもらってばかりっていうのは、なんか面白くないし、俺も亭主のサポートぐらいはやりたいんでな。」
「義兄さんの仕事で、そういうのもあるのか? 」
「こっちではないみたいだけど、以前は俺より殺してたらしいよ。・・・・だから、いずれってだけ。」
「聖職者だよな? 」
「三蔵さんの上司がおっしゃるには、戒律に縛られない破戒僧ってヤツで、そういう世界にいたらしい。」
 以前、遊びにいらっしゃった坊主の上司ご一行様も、二人は武人で剣の腕は相当なものだった。悟空と互角に戦えるのだから、『吉祥富貴』の人間では敵わない。別荘で、年少組が遊びで対戦したらしいが、全戦全敗だったとニールも聞いている。
「こえぇぇぇーーー俺らより性質が悪そーだ。」
「はははは・・・・MS使わない対人だけらしいけどな。だから、死人の数は、俺のほうが多いだろうとは言ってた。」
「そんなこと話してんの? 」
「うん、結構、あの人には喋ってるよ。あの人も話すし・・・まあ、あんまり他人に話せることじゃないからさ。」
 どっちも、そういう世界の住人だったから、理解できている。だから、たまに、その話はしている。おそらく、トダカより亭主のほうがニールの過去に詳しくなっているだろう。
「俺には話せない? 」
 唐突に、ロックオンが、そう切り出したら、ニールの足が止まる。確かに、他人である三蔵には話している。他人じゃないロックオンが、そう言うのは無理なことではない。
「・・・えーっと・・・組織に入ってからのことなら・・・」
「それは、ハロに録画されてたから知ってる。」
「消してくれよ。・・・・とんでもないことになってるだろ? 」
 ニールがデュナメスを操縦するフォローをしていたオレンジのハロは、あの時のことを記録していたはずだ。それ以外は、ニールが後で確認して保存の許可をしたものしか残っていない。あれ以外は、たわいもない映像が残っていたはずだ。あれだけは、ハロをデュナメスと一緒に脱出させたからできなかった。それに、そんなこと、どうでもよかった。あの時は、もう、どこにも帰ることはないと感じていたからだ。
「ハレルヤが見ておけって言うから見たよ。・・・・あんたが生きてるって解った時に、あれは消した。・・・強烈だったな? ニール。」
 ロックオンは、それほど実兄の過去を知りたいとは思っていなかった。だから、ハロの録画された映像も、全部を網羅したわけではない。ただ、ハレルヤが、これだけは、おまえが見るべきだと、あの記録を引き摺りだして見せたのだ。これが、先代ロックオンの本音だから、と、言われた。本気で殺気を漲らせた先代ロックオンの戦いは強烈だった。不利な状態で、よく、五分まで持ち込めたな、と、感心したのだ。まあ、あの時の先代ロックオンは帰還のことも組織のことも全部、棄てて私怨だけで殺し合いをしていたのだが。当代ロックオンとして、組織の人間としては、愚かな行為だったが、双子としての感想は違うものだった。
「・・・あー・・うん・・・ごめん・・・」
「・・いや・・・あの・・・ありがと・・・」
 もちろん、ロックオンも足を止めた。人通りはあるが、混んでいるわけではない。立ち止っても、邪魔にならない。通行人は、二人をかわして通り過ぎていく。
「え? 」
 あの映像を見て、ロックオンも考えた。どれだけ憎んでいたのか、どれだけ家族を失ったことが悲しかったのか、それが、よく理解できたからだ。ロックオンには、そこまでの想いはなかった。それほど、ニールは家族を失ったことが辛かったのだと理解した。
「・・・なんかわかんないけど・・・家族の一人として感謝はしたいと思った。あんたが家族を好きだったことが・・・よくわかったから・・・」
「・・うん・・そうなんだろうな・・・」
「・・・あんたはやれるだけのことはやったし・・・後は俺が片付けた。これで、みんなもゆっくり眠れるはずだ。」
「そうだといいな。」
「てか、エイミーなんか、さっさと輪廻の輪に乗って、新しく生まれ変わってるんじゃないか? 今度は、きっと耄碌するまで生きるだろうぜ? うるせーババアになるぜ? あいつは。」
 まっすぐにロックオンはニールを見ている。ニールも、その視線に、自分の視線を合わせる。そう、ケルトの教えでは、輪廻の輪に乗り転生する。もう、苦しんではいないはずだ。二人で敵は撃ったのだ。そう思うと、ニールも、穏やかな微笑を浮かべて頷いた。
「・・・いいな・・・」
「ああ、そういうことさ。・・・ほら、歩けよ、ニール。」
作品名:こらぼでほすと 二人6 作家名:篠義