こらぼでほすと 二人10
とことこと全員が戻って来た。ニールの手には、コンビニの袋があるし、シンと悟空は、アイスバーを、はもはも食べながら居間にやってきた。
「まだ、あると思ったんだけど・・・切れてましたか? 」
「ビールは見つけたが、この後の分を作れ。おまえ、俺の世話は完璧にしろっっ。」
「すいません。メロン? 梅干? 」
「あるならメロン。」
「了解。とりあえず、サキイカ? 」
「おう。」
これだけで、きゅうりの浮かんだサワーとサキイカが出て来る。それで用事は終わったとばかりに、「風呂に入れ。」 と、続く。
「でも、トダカさんたちに先に入ってもらったほうが・・・」
「いや、私は寝る前に入るから、先にお入り。酔っ払いそうなシンも入ったほうがいいな。」
「俺が最後に〆るよ、ママ。どうせ、戸締りするのも俺だし。」
「俺は一緒に寝るから入りますよ。」
「いや、俺、明日の朝でもいいから、とりあえず、ねーさんとレイが入れ。」
やいのやいのと言われると、ニールはレイと風呂に消える。ハイネの言葉を聴いてから見ていると、なるほど、と、ロックオンも納得する。ああやって動かせばいいらしい。
日曜は、ホームセンターに出かけて、野菜の苗を仕入れてきた。それを午後から植えたり、近所の散歩したり、と、のんびりと過ごした。さすがに、きゅうりもナスも時期が遅くて、あったのはとうもろこしと枝豆の苗だった。年少組が適当に纏わりついているから、ロックオンとしてはやることは、何もないと、ごろごろしていたら、コロッケ製作に借り出された。シンとレイもいるので二百個のコロッケが製作されて、その夜の食卓に上った。確かに、これはシェーバーズパイがパン粉に包まれたものだ。ロックオンの担当は、タマゴに絡められたタネにパン粉をつける係で、せっせと二百個を仕上げた。その夜だけで百個が全員の腹に消えたので、驚いた。
日曜の夜にシンとレイも帰ってしまうと、途端に静かになる。
「明日、弁当は? 」
「いる。」
「いつも通りの時間でいいんだな? 」
「おう、それでいい。」
翌日の確認が終わると、下ごしらえをして、寺の女房の本日業務も終わる。なんだかんだで動いているが、きっちり一時間で、休憩は入っている。レイや悟空は、きちんと一時間ごとに休憩をさせるからだ。明日は、坊主たちは店に出勤だが、ニールはロックオンが滞在しているので休みになっている。
「義兄さん、明日、夜は外食してもいいですか? 」
「おう、俺らが帰る前に戻れるならいいぞ。」
「ということで、兄さん。明日は、ローストビーフだ。」
「はいはい。・・・・ハイネは戻って来るのかな。」
「おまえがいないんなら店に出るんじゃねぇーか? 」
「じゃあ、メールしておきます。」
ハイネが、寺に居候しているのでラボから戻って来る場合がある。誰もいないなんてことになると、可哀想だから、ニールがメールをする。すると、玄関から足音だ。
「明日、晩飯はねぇーのか? ママニャン。」
「いや、欲しいなら用意しておくけど? なんなら、一緒に外食するか? ハイネ。」
店の閉店まで働いていたハイネが戻って来た。坊主たちは、指名がなければ、割と早い時間に戻ってくるから時差がある。
「外食か・・・じゃあ、俺、ラボでメシ食って店に出るから、帰りは三蔵さんたちと戻るよ。」
「わかった。」
ロックオンが予想していた通り、ハイネは時間を変えてくれた。たまには、双子で時間を持て、ということらしい。
翌日、坊主とサルを送り出して、この前と同じように出かける。ロックオンが運転して、レストラン近くのコインパーキングに停めた。時間はあるので、少し周辺をブラブラと散歩する。今日は、ドレスコードがないからカジュアルな衣装だ。ニールのほうも、スーツではなく、カジュアルなジャケットにカラーシャツにデニムという出で立ちだ。これが、トダカたちが用意している衣装らしい。
「あるなら着ればいいのに。」
「家事をするには不向きだ。・・・明日のパンだけ確保するか? 」
「いや、白飯でいい。どうせ、この後、本場のパンは食えるからな。・・・明日ぐらい、ラボに行って来るよ。そろそろ打ち合わせとかしないとマズイ。」
「じゃあ、おまえも弁当持ってくか? ハイネもラボだろうから。」
「てか、そんな早く行かないぜ? ブランチしてから出かける。キラたちだって午後からだろ? 」
「さあ? キラたちは、夜のうちに移動してる場合もあるからわかんねぇーな。メール入れてみれば? 」
「そうする。」
街路樹の下で立ち止り、ロックオンはメールをうつ。そろそろ約束の一週間だから、ラボに出向いてデュナメスのチェックをしなければならない。それが終わったら、欧州に移動する。今回は、いろいろと悪い噂のある企業体の内定の仕事もあるので、二ヶ月ばかり、地上で情報収集の予定だ。
キラからの返信は、すぐには来ない。たぶん、店が始まっているから仕事の最中なのだろう。明日にでも連絡が入れば、それから動けばいい。
「これでオッケー。さて、今日は、どこいらをブラブラする? 」
「俺は、これといって目的はないんだが。」
「俺も、これといってはないんだよなあ。でも、腹は減ってないしなあ。」
まだ、夕方の時間だ。日も暮れていない。この間、必要な服は用意したので、これといって欲しいものもない。男二人だと、こういう場合、時間を持て余す。
「とりあえず、三十分、この通りを歩いて戻って来ると予約時間だ。なんか目に入ったら、そこに入る? 」
この長い通りを行けるところまで行って戻って来るなら、いいウォーキングではある。
「ああ、それでいいぜ。ショーウィンドーのディスプレイを見物するだけでも、いい暇つぶしにはなるだろう。・・・・なあ、ライル。あっちに戻るなら墓参りしてくれるか? 」
ブラブラと歩き出すと、ニールが、この後の予定を尋ねてくる。一応、アイルランドにも立ち寄る予定だから、行けることは行けるだろう、と、返事すると、「頼むわ。」 という実兄の返事だ。
「今年も、行けなかったから・・・」
「そうだな。・・・まあ、しょうがないさ。時間がある時に、俺が行っておく。あんたの体力が回復したら、一緒に行こうぜ? 随分、様変わりしてるから、びっくりするんじゃないか? 」
「そうだろうなあ。最後に行ったのは、もう六年ぐらい前だもんな・・・随分、変わってるんだろうな。」
「六年前、俺、あんたと逢ってるぜ? 」
「え? 」
ニールが墓参りしたのは、本格的な武力介入が始まった時が最後だ。もう来ることはないだろうと覚悟して、別れを告げに行った。そこには誰も居なかったのに、実弟が爆弾発言だ。
「あんたがハイクロスの前で佇んでるのを遠目に眺めてた。・・・もしかしてって思ったから、少し待ってたんだ。木陰に隠れてたから、あんたは知らないだろうけどさ。」
どちらも互いに縁を切られたと思っていたから、接触しなかった。ただ、実兄の姿には、少し安堵した。生きているのだと判明したからだ。白い花束をハイクロスに捧げて、実兄は、長いこと、その前に立っていた。その時は、わからなかったが、あれは決別していたのだと、今は理解している。
「まだ、あると思ったんだけど・・・切れてましたか? 」
「ビールは見つけたが、この後の分を作れ。おまえ、俺の世話は完璧にしろっっ。」
「すいません。メロン? 梅干? 」
「あるならメロン。」
「了解。とりあえず、サキイカ? 」
「おう。」
これだけで、きゅうりの浮かんだサワーとサキイカが出て来る。それで用事は終わったとばかりに、「風呂に入れ。」 と、続く。
「でも、トダカさんたちに先に入ってもらったほうが・・・」
「いや、私は寝る前に入るから、先にお入り。酔っ払いそうなシンも入ったほうがいいな。」
「俺が最後に〆るよ、ママ。どうせ、戸締りするのも俺だし。」
「俺は一緒に寝るから入りますよ。」
「いや、俺、明日の朝でもいいから、とりあえず、ねーさんとレイが入れ。」
やいのやいのと言われると、ニールはレイと風呂に消える。ハイネの言葉を聴いてから見ていると、なるほど、と、ロックオンも納得する。ああやって動かせばいいらしい。
日曜は、ホームセンターに出かけて、野菜の苗を仕入れてきた。それを午後から植えたり、近所の散歩したり、と、のんびりと過ごした。さすがに、きゅうりもナスも時期が遅くて、あったのはとうもろこしと枝豆の苗だった。年少組が適当に纏わりついているから、ロックオンとしてはやることは、何もないと、ごろごろしていたら、コロッケ製作に借り出された。シンとレイもいるので二百個のコロッケが製作されて、その夜の食卓に上った。確かに、これはシェーバーズパイがパン粉に包まれたものだ。ロックオンの担当は、タマゴに絡められたタネにパン粉をつける係で、せっせと二百個を仕上げた。その夜だけで百個が全員の腹に消えたので、驚いた。
日曜の夜にシンとレイも帰ってしまうと、途端に静かになる。
「明日、弁当は? 」
「いる。」
「いつも通りの時間でいいんだな? 」
「おう、それでいい。」
翌日の確認が終わると、下ごしらえをして、寺の女房の本日業務も終わる。なんだかんだで動いているが、きっちり一時間で、休憩は入っている。レイや悟空は、きちんと一時間ごとに休憩をさせるからだ。明日は、坊主たちは店に出勤だが、ニールはロックオンが滞在しているので休みになっている。
「義兄さん、明日、夜は外食してもいいですか? 」
「おう、俺らが帰る前に戻れるならいいぞ。」
「ということで、兄さん。明日は、ローストビーフだ。」
「はいはい。・・・・ハイネは戻って来るのかな。」
「おまえがいないんなら店に出るんじゃねぇーか? 」
「じゃあ、メールしておきます。」
ハイネが、寺に居候しているのでラボから戻って来る場合がある。誰もいないなんてことになると、可哀想だから、ニールがメールをする。すると、玄関から足音だ。
「明日、晩飯はねぇーのか? ママニャン。」
「いや、欲しいなら用意しておくけど? なんなら、一緒に外食するか? ハイネ。」
店の閉店まで働いていたハイネが戻って来た。坊主たちは、指名がなければ、割と早い時間に戻ってくるから時差がある。
「外食か・・・じゃあ、俺、ラボでメシ食って店に出るから、帰りは三蔵さんたちと戻るよ。」
「わかった。」
ロックオンが予想していた通り、ハイネは時間を変えてくれた。たまには、双子で時間を持て、ということらしい。
翌日、坊主とサルを送り出して、この前と同じように出かける。ロックオンが運転して、レストラン近くのコインパーキングに停めた。時間はあるので、少し周辺をブラブラと散歩する。今日は、ドレスコードがないからカジュアルな衣装だ。ニールのほうも、スーツではなく、カジュアルなジャケットにカラーシャツにデニムという出で立ちだ。これが、トダカたちが用意している衣装らしい。
「あるなら着ればいいのに。」
「家事をするには不向きだ。・・・明日のパンだけ確保するか? 」
「いや、白飯でいい。どうせ、この後、本場のパンは食えるからな。・・・明日ぐらい、ラボに行って来るよ。そろそろ打ち合わせとかしないとマズイ。」
「じゃあ、おまえも弁当持ってくか? ハイネもラボだろうから。」
「てか、そんな早く行かないぜ? ブランチしてから出かける。キラたちだって午後からだろ? 」
「さあ? キラたちは、夜のうちに移動してる場合もあるからわかんねぇーな。メール入れてみれば? 」
「そうする。」
街路樹の下で立ち止り、ロックオンはメールをうつ。そろそろ約束の一週間だから、ラボに出向いてデュナメスのチェックをしなければならない。それが終わったら、欧州に移動する。今回は、いろいろと悪い噂のある企業体の内定の仕事もあるので、二ヶ月ばかり、地上で情報収集の予定だ。
キラからの返信は、すぐには来ない。たぶん、店が始まっているから仕事の最中なのだろう。明日にでも連絡が入れば、それから動けばいい。
「これでオッケー。さて、今日は、どこいらをブラブラする? 」
「俺は、これといって目的はないんだが。」
「俺も、これといってはないんだよなあ。でも、腹は減ってないしなあ。」
まだ、夕方の時間だ。日も暮れていない。この間、必要な服は用意したので、これといって欲しいものもない。男二人だと、こういう場合、時間を持て余す。
「とりあえず、三十分、この通りを歩いて戻って来ると予約時間だ。なんか目に入ったら、そこに入る? 」
この長い通りを行けるところまで行って戻って来るなら、いいウォーキングではある。
「ああ、それでいいぜ。ショーウィンドーのディスプレイを見物するだけでも、いい暇つぶしにはなるだろう。・・・・なあ、ライル。あっちに戻るなら墓参りしてくれるか? 」
ブラブラと歩き出すと、ニールが、この後の予定を尋ねてくる。一応、アイルランドにも立ち寄る予定だから、行けることは行けるだろう、と、返事すると、「頼むわ。」 という実兄の返事だ。
「今年も、行けなかったから・・・」
「そうだな。・・・まあ、しょうがないさ。時間がある時に、俺が行っておく。あんたの体力が回復したら、一緒に行こうぜ? 随分、様変わりしてるから、びっくりするんじゃないか? 」
「そうだろうなあ。最後に行ったのは、もう六年ぐらい前だもんな・・・随分、変わってるんだろうな。」
「六年前、俺、あんたと逢ってるぜ? 」
「え? 」
ニールが墓参りしたのは、本格的な武力介入が始まった時が最後だ。もう来ることはないだろうと覚悟して、別れを告げに行った。そこには誰も居なかったのに、実弟が爆弾発言だ。
「あんたがハイクロスの前で佇んでるのを遠目に眺めてた。・・・もしかしてって思ったから、少し待ってたんだ。木陰に隠れてたから、あんたは知らないだろうけどさ。」
どちらも互いに縁を切られたと思っていたから、接触しなかった。ただ、実兄の姿には、少し安堵した。生きているのだと判明したからだ。白い花束をハイクロスに捧げて、実兄は、長いこと、その前に立っていた。その時は、わからなかったが、あれは決別していたのだと、今は理解している。
作品名:こらぼでほすと 二人10 作家名:篠義