二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

こらぼでほすと 二人10

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

「・・・・全然、気付かなかった・・・」
「気が抜けてたんじゃないか? 」
「いや、なんも考えてなかったんだろうな。・・・たまたま、あっちに降りてたから命日に行けたんだ。あの後は、本格的に動き出して、忙しくなっちまったから・・・あれきりだ。」
「つまり、あの後の白い花束は、刹那かティエリアだったわけだ。」
「うん、何度か頼んだ。刹那は、おまえの確認のために、何度か出向いてたからさ。」
「俺も、思い出したさ。ダーリン、パブでミルク飲んでたんだ。・・あれが最初だったんだろ? 」
「どうだろう? 俺は、そこまで詳細に聞いてない。まあ、対象者のチェックだから酒は呑まなかったんだろう。どう見ても未成年だったろうし。」
 最初に出向いたのは冬だったはずだ。それから、何度かロックオンの身辺をチェックしていた。ロックオンが、いつ気付いたのかまではニールにもわからない。
「そういや、刹那が俺に土産を買って来てくれたんだけど、それがユニオンのお菓子だったことがある。・・・あっちの百貨店で一番賑わってた菓子だったんだってさ。」
 それを聞いて、ロックオンは吹き出した。いかにも、刹那がやりそうなことだ。
「はははは・・・わかるわかる。ダーリンって、お菓子のブランドなんて興味もないもんなあ。判断するなら、そこだろうな。」
「甘いものは好きなんだけど、これっていうのがないんだよなあ。」
「そりゃ、あんたが戻ってくる度に、作ってるんだろ? ダーリンには、それで十分なのさ。・・・差し入れのお菓子は美味そうに食ってるぜ。」
「もうちょっと、そういうことにも興味が出て来るといいんだけど・・・おまえ、そういうの教えてやってくれよ? 」
「うーん、まあ買って帰るけどさ。たぶん、適当に食って終わりだろうな。これはどこそこの、とか説明してもスルーだと思う。」
「そうなるんだろうけど、まあ、繰り返し与えてれば、なんか好きなものも見つかるだろう。」
「それさ、たぶん、兄さんの作るお菓子のどれかだと思う。ダーリンにとっちゃ、兄さんの作るものが一番美味しいんだってさ。」
「俺の? それこそ、簡単なものばっかなんだけど? 」
「でも、ダーリンにとっちゃ、あんたが作るものが家庭の味だからな。」
 なんせ、組織に拾われて、そこで育った刹那にとっては、家庭の味に該当するものは実兄が寺で食べさせているものだ。どんなに高級品の菓子を与えても食べ慣れたものに軍配は上がるだろう。
「じゃあ、おまえの一番好きなお菓子って、なに? ライル。」
「俺? 別に、これといっては・・・ああ、あんたが作るやっすーいプリンは好きだ。あれは、ここでしか食えないから。」
「母さんの手作りもあるだろ? 」
「だから、そんな古いのは忘れてるって・・・あんたが覚えてないって嘆くけど、俺も、ほとんど覚えてないよ。あれから十年以上経ってんだぜ? 記憶はあっても味までは覚えてない。」
 多少、嘘は入っている。母親が作っていたケーキや菓子の味は、なんとなく覚えてはいるが、今は言わないほうがいいものだから強引に、そう言い切った。すると、実兄は、頬を緩めた。ほっとしたらしい。
「・・・・そういうもんなのかな。」
「そういうもんだ。だいたい、新しいことが上塗りされていくんだ。一々、過去の味まで記憶してるわけない。」
「それ、亭主も言ってた。」
「義兄さんは、そういうのないの? 」
「ないんだって。あの人も孤児だったから、家庭の味なんてものはないんだってさ。だから、俺が寂しいって言うのもわからないって言われた。」
「へぇー、義兄さんも孤児なんだ。うちのダーリンと一緒か。」
「そういうことだな。詳しくは聞いてないけど、あの人も旅をしていたから決まった料理っていうのは食べてないんだ。だから、あの人にとっても、俺の料理が一番長く食べてるものになってるそーだ。」
 そう考えると、ニールにしても三蔵にしても、長く落ち着いているのは、特区に来てからということになる。そういう意味では、寺の料理は、二人の好みが近付いた結果であるらしい。

 のんびりと喋りながら歩いていたら、結構な距離になっていた。かなりの区画を進んでいる。そろそろ引き返そうと、くるりとロックオンが踵を返した。時間は軽く二十分というところだ。
「全然、ディスプレイとか見てなかった。ここからは、流行についてチェックするからな。」
「はいはい。」
「そろそろ夏物だよな。でも、あと一週間ぐらいだから、それほど必要じゃないしなあ・・・・てか、世界レベルで流行って同じものなのかな。」
「どうなんだろ? そういうのはラクスに聞くとわかると思うけど。あいつは世界中を飛び回ってるし、専属のスタイリストがついてるからさ。」
「いや、それ、女物だから。」
「あとはハイネかな。あいつも、バイトで、あっちこっち出かけてるから詳しいんじゃないか? 」
「洒落モノってこと? 」
「ああ、おしゃれさんだぜ。店の衣装も自前だし、きちんとした恰好してる。」
「あんたの基準だろ? どうも、今ひとつ信憑性に欠けるな。」
 結局、だらだらとくだらない話をしていたら、元の場所まで戻って来た。そろそろ、宵闇が深くなってくる。いい頃合だと、予約したレストランに足を向けた。



 ローストビーフは、店でも食べている代物で、ニールにしては珍しいものではない。ロックオンのほうは、あまり口にしないと言う。
「ここんところ、気取った店で食事するってこともなかったし。食べる相手が、ダーリンだとカロリー重視だからさ。こういうコースっぽいのは食べないんだな、これが。」
「まあ、仕事中はなあ。」
「あと、上にいることが多かっただろ? そうなると、レトルトのチンだしさ。・・・・あーやっぱ、生々しい肉っていいなあ。」
「そういや、この間も肉って叫んでたな? 明日は焼肉かすき焼きでもしようか? 」
「すき焼きって、どんな? 」
「こっちの甘辛い出汁で肉を煮て、生卵をつけて食べる料理。」
 ニールの前には、スタッフドポークがあるが、手はつけていない。もぐもぐと食べている実弟を観察して楽しんでいる。
「生卵? それ、大丈夫なのか? 」
「こっちのタマゴは問題ない。生でも食べられる新鮮なやつだ。どうせ、熱い肉をつけるから半熟状態になっちまうよ。」
「なら試してみようかな。・・・ほら、味見しなよ? 」
 食べないので、ローストビーフを切り分けて、実兄の口元に運ぶ。いちゃこらの実体というのは、こういうものだ。自分からは食べないから口に投げ込むしかない。
 もぐもぐと実兄は口を動かしているので、ロックオンのほうは合いの手にビールを飲む。ついでに、実兄の皿を引き寄せて食べ易いように切り分けて三分の一ほどは自分の皿に取る。豚肉にタマネギとジャガイモの炒めたものを巻いて焼いたものが、スタッフドポークだ。アップルソースをたっぷりとつけて口に入れると口の中にローズマリーの香りが広がる。
「肉だな。」
「当たり前だ。肉、もうちょっと食う? 」
「もういい。付け合せの野菜も食えよ? 」
「それは後。うーん、これだけだと物足りないな。やっぱり、ギネスパイも食おうかな。」
「俺は付き合わないぞ? 」
作品名:こらぼでほすと 二人10 作家名:篠義