こらぼでほすと 二人10
「まあ、味見はしろよ。栄養のあるものを食え。あんた、野菜ばっかじゃないか。」
「胃がもたれるんだよ。察してくれ。」
「ちょっとずつ慣らせ。ベジタリアンになる年じゃねぇーだろ? 体力戻したいんなら、そこからだ。」
「それはわかってんだけど。量が入らなくてさ。」
「それも胃袋を大きくするしかないな。筋肉つけたいなら、たんぱく質。」
「大きくねぇー。」
すっかり民間人なニールには、ロックオンが食べる程の量は入らない。眼の前のスタッフドポークを片付けるだけで精一杯らしい。対してロックオンのほうは、そこそこ食べる。年齢的には、まだまだ体力もあるし、運動量も段違いだから食べなきゃやってられない。
「ローストビーフとか作らないの? 」
「人が集まってたら作ることもあるよ。まあ、牛じゃなくて豚か鳥が多い。これ、いい肉じゃないとパサパサになるだろ? 人が多いと材料費が怖い値段になるからさ。もともと、悟空が、何キロも食べるから、いい肉なんて出してられない。」
「ん? 生活費が不足してんの? 」
「そんなことはないけど、だいたい一ヶ月の食費は、これぐらいって目処はつけてるからさ。その範囲に収まるようにはしたいんだよ。・・・菓子パンだって見たろ? 一度でなくなったじゃないか。」
「あー確かに。エンゲル係数は高いな。」
「俺のバイト代っていうか、年少組の食費も店から貰ってるから、それと亭主から貰う生活費と合わせて一か月分って感じだな。」
度々、年少組がおやつを食べに来るので、店で軽食として提供しているものとして、その分はニールに支払われている。だいたいが、おやつを食べて店に出勤するからだ。あとは、適当に各人が材料を運んでくれたりするので、それほど怖ろしい金額にはなっていない。
「最初の頃はびっくりしたよ、俺も。あっという間に冷蔵庫が空っぽになるんだからさ。」
「そうだよなあ。レイ、シン、俺たち、キラ、アスランと悟空で、十人近い食べ盛りがいるもんな。」
「そうそう、まあ、作るのは楽しいからいいんだ。何作っても、おいそうに食べてくれるしさ。刹那やティエリアも好物ができたし・・・いろいろと経験しないとわかんないもんな。」
「ダーリンの好きなもの? どんなもん? 」
「ホワイトソースのかかったオムライス。最初の頃に、ものすごく気に入ったけど、今は、それほどじゃないよ。でも、作るとおいしそうに食べてる。 あとは、ガーリエマーヒーとか。」
「なんじゃそれは? 」
「中東の魚のスープなんだけど、まあ、カレーみたいなもんだな。・・・それから、豚のしょうが焼きに目玉焼きのっけたのとか、カレイの唐揚げとか。」
「やっぱ、がっつり系だな。」
「そりゃそうだろう。食べ盛りだから。おまえさんは、やっぱりローストビーフなのか? 」
「うーん、まあ、これも好きだけど、ステーキもいいな。B級ならフッイシュ&チップスがダントツ。」
「そろそろ野菜も食えよ? 三十路なんだから。」
「うっせぇー。ジャガイモは野菜だ。」
「野菜ねぇー。確かに野菜だけど、緑色のものが不足してると思うぞ。そろそろ、そういうのも摂らないと。」
「じゃあ、滞在中に食わせろ。」
「まあ、うちの料理は野菜が多いからな。」
「でも、肉も食う。」
「すき焼きも、野菜がたっぷり入るから一緒に食え。・・・上にいる時は、サプリメントで摂取するしかないけど、地上に居るなら、そこいらも考えたほうがいい。刹那も、一人だとジャンクフードばっかだから、おまえが野菜を食わせてくれ。」
「へーへー一緒なら、野菜も食わせます。ところで、マッシュルームのフリッターって野菜? 」
「それはノーカウント。緑のものって言ったろ? 」
「食生活なんて適当だったから、よくわかんねぇーな。俺、料理しないし。」
「サラリーマンの時って外食ばっかだったのか? 」
「まあ、適当にデリ買って食うってのもあったけど、ほとんど、夜はパブで軽く食ってビールだったな。あんたは、どうだったのさ? 」
「似た様な事だったけど、地上施設だと店がないところもあるから、自炊もしてた。アレルヤたちにパンケーキ食べさせたり、刹那にパスタ食わせたりはしてたからな。・・・ほんと、どいつもこいつも食事に意識が向かないから苦労した。カレーを作らせたら、ティエリアはレシピ通りに、きっちり計量して作るしさ。適当って言ったら怒られるし。刹那にいたっては、なんでも投げ入れればいいってカレーに牛乳投入しやがって慌てたぜ。」
「あはははは・・・・目に浮かぶな? 」
組織に入ってからのことなら、ニールも簡単に口にする。まあ、今より協調性も信頼もなかったマイスター組を纏めるのは大変だったろうと、ロックオンも同情する。今でこそ、みんな、それぞれ、信頼しているから、言い争いはしていても、ちゃんと最終的に纏まるが、それがなかったのだから、纏めるのも一苦労だったはずだ。
「苦労が偲ばれるぜ、兄さん。」
「あはははは・・・今、思えば、いい思い出だ。こうやって、おまえに笑い話として話せるんだから。」
「はははは・・・そういうことだよな。」
気取らない食事だから、どちらも笑っている。実兄は、ある程度、会話は考えているのだろうが、古い話でなければ緊張しない。何気なく話しているので、ロックオンも自然と笑えてくる。
「これからもさ、こうやってデートしような? 兄さん。」
「ああ、いいよ。飲みには付き合えないけど、食事なら大歓迎だ。」
「刹那と一緒に三人とかもいいな。」
「そうだな。刹那に、ちゃんとしたアイルランド料理を食べさせたいな。俺が作るんじゃ、特区風になってるから。」
「まあ、これも特区風ではあるけどな。・・・・いつかでいいから、三人で本場で食えたらいいな。」
「三年ぐらい待ってくれれば、なんとかなるだろう。」
「了解。三年ぐらい、あっという間だ。楽しみだ。」
「俺も。」
クスッと二人して微笑んで食事を続けた。結局、その約束が叶うのは、随分と時間が必要になるのだが、それは、今のところ、誰も予想していなかった。
作品名:こらぼでほすと 二人10 作家名:篠義