こらぼでほすと 二人11
「あんまり肉って用意しないから食べたくなるらしい。・・・たまには、こういうのも用意したほうがいいのかな。」
「いや、贅沢させなくていい。食いたいなら、肉は自己調達させればいいさ。」
「どっちかっていうと、焼肉のほうが喜ぶよな。それに、すき焼きすると東西論争になるしさ。トダカさんとこなんか魚ですき焼きバージョンもあるぐらいだし。」
トダカ家は、親衛隊メンバーが各地から軍隊に集っている加減で、中身がバラバラなことになっている。作る担当者によって、中身が違うので、魚がメインのものもある。
「あれも美味いっちゃー美味いんだけど、インパクトに欠ける。それに新鮮でないと匂いがきついから好き嫌いが分かれるしな。」
「魚を煮るのか? それをタマゴつけて食べるって、想像がつかないな。」
「似た様なものなんだけど。俺は好きだけど、シンは物足りないって言うよ。たぶん、三蔵さんも物足りないって言いそうだから、うちではやらない。」
「てか、悟空が満腹するには、デカイ魚一匹とか必要になるぞ、それ。」
「あははは・・・そうだった。副食になっちまうな。・・・ロックオン、もうシラタキも染みてるぞ。」
くつくつと底のほうで、いい色合いになったシラタキを実弟の器にニールが入れてやる。ひとつの鍋で分け合う食べ方というのは、アジア圏のほうが多いから、実弟は取るのに困るだろうと、遠慮なく投げ入れる。
「これは、なんなの? ビニールみたいだけど。」
「うーん、こんにゃくの一種ってもわからないな? 」
「こんにゃく? おでんに入ってるやつだよな? でも、あれは・・・灰色だったろ? 」
「あれの一種。」
「ふーん。食感は悪くねぇーな。」
「俺もさ、最初にこんにゃく見た時は、なんじゃ? って首傾げた。プラントにはないんだ。」
「うちにもないな。」
「でも、食べ慣れると悪くないんだ。うちは合成加工が多いから、自然のものってのも珍しかった。・・・なんだか味見してるうちに、特区のいろんな地域のものを食ったよ。さすがに、アイルランドは遠征したことないんだけどさ。」
「うちも、味付けは、割と薄いと思うぜ。元が農業国だから、野菜とか多いし、メインはジャガイモだ。」
「らしいな。・・・・てか、おまえ、人がちょっと目を離した隙に放棄するな。もうちょい食え、ママニャン。」
ロックオンとハイネが食べ物談義をしていると、ニールは涼しい顔でお茶を飲んでいる。すでに食べ終えた感を出しているので、ハイネが叱る。煮えている肉をニールの器に投げ入れる。
「もう満腹。」
「それ食ったら、野菜だけでもいいから。・・・・こっから、ごぼうが美味くなんだろうがっっ。あと、すき焼き麩も食え。よく味が染みて美味いから。」
鍋奉行が厳しいので、渋々、ニールも箸を動かす。霜降り肉は、かなり胃にくるので、ニールは二枚も食べれば満腹してしまう。そこいらは、ハイネも解っているから、野菜を勧めている。
「おまえは野菜を食え、ロックオン。肉ばっかじゃ飽きるだろ。」
「いや、まだまだいけるな。・・・兄さん、卵追加。」
「はいはい。気に入ったんだな? 」
「ああ、これは美味いよ。あと、ビール。それで、あんたも食え。」
「俺も、ビールくれ。」
ビールの缶も、あっという間に消費されていく。まあ、こういう料理にはヒールが合う。グビグビと呑んでいたら、ロックオンは途中で沈没した。疲れていることを、うっかり失念していて呑みすぎた。
作品名:こらぼでほすと 二人11 作家名:篠義