恋ひつつあらずは
しかも、新と千早はA級で、自分はいまだにB級だ。
今日の吉野会大会も自分は3回戦で負けてしまったので、
結局A級にはあがれなかった。
新と千早、そして自分。
埋められない二人との差を思い知らされ、
太一は思わず口にした。
「オレはお前や千早と違って才能が無いから…。」
「…。」
新が黙ってしまった。
卑屈な発言をしてしまった自分が情けなくなって、太一はますますうつむいた。
少しの沈黙のあと、新がゆっくりと言った。
「千早は関係ないだろ。」
「え…?」
「オレは太一のことを話してるんや。」
「オレ?」
「うん。」
新はまっすぐに太一を見て言葉を継いだ。
「お前がいたから、オレはここにいる。
お前もそうだと、オレは思ってる。」
「え?それってどういう…。」
太一は呆然と新を見返した。
「こういうこと。」
言いながら、新が太一のTシャツを袖を引っ張って、顔を寄せてくる。
新の唇が太一のそれに重なった。