恋ひつつあらずは
「話戻るけど、」
ゆっくりと息を吸い、新が言葉を続けた。
「太一だってオレがメールしたのに返事くれへんかった。」
「は?」
「メールの返事、オレによこさなかったやろ。」
「…。」
新が何を言っているのか太一にはよくわからなかった。
「オレはお前に会いに来たんだ、太一。」
「は?」
新の意外な言葉に、太一は目を大きくして新を見返した。
新の言っている意味がわからず、呆然としている太一を前に新は続けた。
「お前が埼玉県大会のB級で準優勝の名簿に載ってるのを見た。
だから、オレは西日本名人戦に出る決心がついたんや。
まあ、オレはお前がA級に出てると思ってたけど。」
A級という言葉には、太一はすぐに反応した。
「悪かったな。新は当然A級だろうけど。」
新が当たり前のように答えた。
「当然や。千早もA級だろ?」
「…うん、そうだよ。」
太一はうなずき、そしてうつむいた。
新の口から「千早」という名前が出ると、胸がずきりと痛む。