こらぼでほすと 二人12
・・・・だから、これでよかったんだ。兄さんは、こういうのが相応しいんだろうさ・・・・
立場を逆転させて、ロックオンは宇宙に、ニールは地上で暮らしていく。たまに帰って、愛してる、と、囁けば、いつか実兄の心にも届くかもしれない。生まれ育った土地ではないが、ニールが居るところが、ロックオンにとってもホームではあるのだ。
見送りをするという実兄と一緒に空港まで出て来た。もちろん、運転手に間男がついているが、クルマを駐車場に入れてくる、と、別れたので、今は二人だ。チェックインカウンターで手続きをすれば、後はファイナルコールまでは少し時間がある。
「兄さん、次もデートしような? 」
「ああ、待ってるよ。」
「次は中東料理に挑戦しようぜ? うちのダーリンの生国のも体験しとかないとさ。」
「中東料理? あるのかなあ。」
「なんちゃってとか中東風はあるんじゃね? それに、あんた、たまには、そういう恰好もしろよ? そうやってれば、それなりに見えるぜ? 」
「そうか? てか、悪いな、おまえの服、全部もらって。」
ニールが、今、着ているのは先日、ロックオンが買った服だ。これから、季節が違う国に移動するから使えない、ということで、実兄に押し付けた。これからの季節に合う服だから、ちょうど着られる。
「いいってことよ。世話してもらったお礼だ。弟の愛を受け取れ。」
「ありがとさん、ライル。・・・・気をつけてな? 」
「危ないことはしないから心配すんな。どうせ、打ち合わせだ。あんたこそ、ダウンするようなことすんなよ? うちのダーリンが心配するからな。」
「まあ、体調はいいさ。・・・これからの季節は、ぼちぼち過ごすようにする。」
出発ロービーのベンチで、話していたが、ハイネは最後まで現れなかった。気を利かせてくれたのだろう。そろそろ、ファイナルコールの時間だから、と、アライバルゲートへ向かう。実兄は、手を振って見送ってくれた。背後から、ハイネと少し小さいのが近付いていた。あれが、リジェネだと思われた。
ファイナルコールの少し前に、ロックオンはアライバルゲートへ入った。その姿が見えなくなるまで見送っていたら、背後から、「ただいまぁ。」 と、抱きつかれる。
「おかえり、リジェネ。・・・・ごめんな? ロックオンが居たから戻れなかったんだな? 」
声で、イノベーターだと判ったから謝った。実弟がイノベーターと会いたくないと言っていたから、リジェネは帰れなかったのだろう。
「たまには兄弟で過ごしたいでしょ? 僕のほうもティエリアと逢ってたんだ。」
「・・・そっか・・・」
「うん。ロックオンが逢いたくないのも解るしね。・・・・僕らの仲間が、ロックオンに酷いことしたから。」
「でも、あいつの以前の恋人はイノベーターなんだろ? 」
「・・・え・・・ママ? 」
誰も、その話はしていないはずだ。だのに、ニールは知っていた。さすがに、リジェネも言葉に詰まる。
「ロックオンから聞いた。愛した女が、たまたまイノベーターだったって。今は、うちの墓のとなりにいるんだってさ。」
「・・うん・・・」
「たぶん、今度からは逢っても嫌がらないと思う。」
「・・うん・・・」
「リジェネ、どっかで、おやつを買おうか? 」
「うん、ちょっとお腹空いてるんだ。・・・・何か食べたい。」
そうか、と、ニールが振り向いてリジェネの身体を、ぎゅっと抱き締めて、ハイネに声をかける。そういうことなら、どこかに立ち寄って帰ろうと、言い出した。ニールの態度に、ハイネも、ちょっと驚く。いつもなら、飛行機が離陸するのを見送るまでは空港から離れないからだ。
「もう、いいのか? 」
「ああ、リジェネに何か食わせて帰ろう。」
「僕、サンドイッチとかハンバーガーとかがいい。」
「なら、どこでもいいな。ついでに、悟空のおやつにしよう。ハイネ、帰り道に、そういう店はあるか? 」
「いいのか? 最後まで見送らなくて? 」
「いいんだ。ロックオンは、そういうのは嫌がるだろうからな。俺が見てるとわかったら、抗議のメールが来るぜ? あいつ、目はいいからな。」
というか、なんとなく気配は感じる。それは、ニールにもある感覚で、双子が近くに居ると、なんとなく気配は感じるのだ。きっと実弟は、うぜぇ、と、言うだろうからニールも空港は離れることにした。気をつけて、と、内心でエールを送り、踵を返す。そういうことなら、と、ハイネも歩き出した。
作品名:こらぼでほすと 二人12 作家名:篠義